多くのプロサーファーたちは、キャリアの中で作り上げた栄光を諸紋の様に握り、その庭に花 を咲かせる努力をする。が、2000年にパイプマスターズに輝いたジェイミー・オブライエン は小さな庭に拘らずに、どんどん枠を広げる。波乗りの道具に、ショートボードだけでなく、 ボディボード、ロングボード、ソフトトップ、フラミンゴの浮き輪、そしてソファーを選び、究極の波、パイプラインで巧みに操ることに成功。
そして、その姿を、立ち上げた自らのプロダクションで動画を作り、YouTube の世界に突入。現在、彼のチャンネルの登録者は54万人を超えた。今や彼個人というだけでなく、サーフィンの世界が彼の背に乗り、 YouTubeという大海の中で、暴れ始めている様にも見える。可能性の枠を広げる秘訣は何か? カリフォルニアのトリップを終え、自粛生活をしているその彼に、尋ねてみることにした。
interview : Emiko Cohen
Q1:サーフィンの世界でYouTuberとした初めての人だと多くの人が認識してるけど、 YouTuberになってから、人生変わった?
サーフィンの世界にいた時は、コンテストを追ったり、スポンサーのイベントがあったり、誰かが決めたスケジュールで行動することが多かったけど、今は、いつ、どこで、何をするかの全てを、自分で全部決めるようになった。全て自分次第。そこが大きく違うところかな。
Q2:YouTubeチャンネルを立ち上げた切っ掛けは?
7年間、レッドブルのWHO IS JOB をやってきたから。やっているうちに、これなら自分でできると思って、自分で作ってみたいって思う様になったんだ。幸い、レッドブルの人たちも、 その案を認めてくれて、今でもサポートし続けてくれてる。
なぜ、自分で作りたいかと思ったかというと、ビューワーからの「もっと頻繁に観たい」という声がたくさんあって、自分で撮って、自分で編集すれば、もっと頻繁に提供できると思ったから作り出したんだ。実際、喜んで貰えたけど、200本作った今でも、もっと観たいと言う声が絶えないのは嬉しいことだよ。
本当の俺の仕事は、プロサーファーだから、あくまでもYouTubeは趣味の延長
Q3: まさかでも、YouTubeで生計が成り立つとは思ってもみなかったでしょ?
うん、もちろんYouTubeを作り始めた時には、これで生活できるとは思ってもみなかったよ。 ただの楽しみ、趣味の一貫で作り始めたら、稼ごうという意識もなかった。逆に、カメラマン や、キャストたちに払うと赤字になっちゃうくらいだったんだ。それが今ではみんなにしっか り月給を払える様になったし、プラス、撮影旅行のお金も稼ぎ出せる様になったし、機材も買えるなった。
でも、本当の俺の仕事は、プロのサーファーだから、意識としては、あくまでも YouTubeは趣味の延長だと思ってる。だから、楽しくできるうちは続けるけど、重荷になった ら、止めることもあると思う。今のところ、その気配は全くないけどね。
Q4:それにしても面白いよね。アイデアが豊富。撮影のアイデアはどうやって浮かぶの? リクエストとかもあるのかな?
自分がすぐに飽きるたちで、同じことをやってたら面白くないからね、その日、その日で、楽しくできる様に、工夫してるんだ。サーフボードだけではなく、時にはソフトトップを使ってみたり、フィンを変えたり、ボディボードにしてみたり、ソファーにしてみたり、浮き輪にしてみたり。自分のクリエイティビティーを最大限に活用して作ってる。時にはチームメンバーのアイデアの時もあるし。それがウケたら嬉しいけど、ウケない結果もありかなと思って気軽に作ってるんだ。
成功しているYouTuberと一緒に撮影すると、学ぶところがたくさんある。
Q5:最近、人気のYouTuberたちとコラボレーションしてるよね。やっぱり絡むと刺激になるのかな?
他の人のチャンネル観てて、あー会ってみたいなと言う衝撃に駆られ、連絡してみたりするっ て事は、最近初めた事なんだ。実際に、成功しているYouTuberと一緒に撮影すると、学ぶところがたくさんある。もちろんどうやって撮ってるのか、組み立て方はどうしてるのか、カメラワークは、などの技術的な面もそうだけど、彼らの意気込みに感心したよ。
数人名前をあげると、友達にもなったんだけど、ヤッピートントンなんかは、70万人のチャンネル 登録があったのに、ハッキングされ、全部ビデオを消されちゃったんだぜ。それでも、また新たに立ち上げて、ゼロから頑張ってる。
他には、YouTuber の巨匠的な存在のケーシー・ネイスタット(チャンネル登録者1,200万人)だな。この前、カリフォルニアのウエイブプールの 撮影でコラボしたんだけど、一から、あそこまで成り上がったっんだぜ。実際にあってみて、 その意味がわかった様な気がする。
やっぱり一緒に撮影してみて、わかることってたくさんあるから、これからもいろんなYouTuberとコラボして行きたいと思ってる。でも、一方通行ではないと思う。きっと向こうも俺たちから刺激を受けていると思うし。まだまだこれから。始まったば かりだ。
CaseyNeistatチャンネルのジェイミーとのコラボ
ジェイミーのチャンネル側のケーシーとのコラボ
ハッキングされ1からまた立ち上げたヤッピーのチャンネル
Q6: 最初のブログと比べると、何が変わった?
全然、よくなってると思う。ストーリーを作り上げるのも、楽になってきてる。特に、前のと比べて、よりクリーンでポジティブなイメージになってると思うんだ。「おはよう!今日は、こんなことをするよ」から始まって、視聴者と繋がるコツを掴める様になった。
意表をついた異質な波の波乗り動画は好まれてる感じがするんだ。
Q7:今まで作った中で、バイラルになった動画をいくつか教えて。
ワイメアリバーがバイラルになる可能性が一番高い様な気がする。ワイメアのせき止められてる川が一杯になった時に、誰かから連絡もらって、ワイメアまで車を走らせ、砂をローカルの子供たちと彫って、川がようやく海と繋がる。小さかった川がどんどん大きくなって、波ができて、サーフィンをする。そんな風に、ドキュメンタリー的な見せ方ができているからウケているんだと思うんだ。
あとはワイパフの急なストームドレインを滑り降りるやつは何度もバイラル動画になった(笑)。数本パイプの動画も数が出たけど、この前のウエッジとかブラジルの様に、意表をついた異質な波の波乗り動画は好まれてる感じがするんだ。
(SNS上やネット、口コミなどで広く拡散される動画のことを「バイラル動画」と呼ばれる)
ワイメアリバー
ストームドレイン
ウェッジ
Q8:チームのメンバーを紹介してくれる?
現在のカメラと編集を担当しているのは、ジャックソン(Jackson Lebsack)とショーン(Justin Graham)。他には、(ジェイミーが子供の頃からずっと撮っている)フィルマーのティム。 友達のショーンは水中で撮ってくれてる。 もちろんティナ(ティナ・コーヘン)もね。 少人数で回ってるチャンネルなんだよね。 そうそう、サリー(サリー・コーヘン)も忘れちゃいけないな(笑)
Q9: チームに加わりたい人ってたくさんいると思うけど、オーディションとかはあるの?
どうやってキャストを探すか、、、ソーシャルメディアで自然に繋がった人もいるけど、基本、友達とか家族とかの集まり。スタッフが足りなくなったら、信頼できる友人に相談したりしたりもするけど。いろんな人がいるからね。頼んだ後に、腕が悪かったりすることもあるだろうけど、今まで良い人ばかりに恵まれているのはすごくラッキーだと思ってる。
俺たちが作るのは友達と楽しく遊ぶアイデアを提供している様な動画だから。

Q10:ジェイミーのチャンネルは、子供たちにすごく受けてるよね。特に小学生の。なんでなんだろうね。
ほら、俺たちは、世界一のサーファーとかじゃないだろ。そこが馴染みやすいんじゃないかな。ベストではないサーファーたちが、楽しんで波乗りしてるだけ。そういうところが、子供たちを惹きつけてるんだと思んだ。ほら、「やろうと思えば僕にも出来るかも」って思うんじゃないかな。俺たちが作るのは友達と楽しく遊ぶアイデアを提供している様な動画だから。(笑)
「サーフィンが好きな友達と楽しい時間を共有する」ってのを見せてるだけ
Q11:子供たちにも自分が歩んできた道を勧めたい?
うーん、子供たちに勧めたい道は、俺の様になるじゃなくって、自分のなりたい様になって欲しい。子供たちが俺たちに憧れてくれて、俺たちの様になりたいっていうんだったら、それはそれで嬉しいけどね。俺たちは、悪い言葉は使わないし、良いお手本だと思うよ。子供たちにとって。でも、基本、俺たちは「サーフィンが好きな友達と楽しい時間を共有する」ってのを魅せてるだけだから、それぞれの友達と一緒に楽しくやってくれたら、嬉しいよ。
Q12:そうそうティナのことは? ティナが関わる様になって何か変わった?
ティナと出会ってから、少しずつ動画に出る様になって、今は、欠かせないキャストになってる。動画をアップする前の最終審査はティナがやってるし。会う前は、俺たち、汚い言葉を使うこともあったけど、今は、ティナのお陰でその癖は直ったし(笑)。ただもう少し、ティナが「ステイサイク(STAY PSYCHED! )」の言葉を出してくれるといいんだけどね(横でティナが「絶対それはない」)(笑)
目標はチャンネル登録者数を百万人にすること! 届く範囲だとも思ってるんだ。
Q13:これからの目標は?
人生は一度きりだから、生きてるうちに十分に楽しもうぜってことかな。大事な家族と友達と自然な形で楽しんでいる姿を収録して、世界の人に見てもらうことができたら最高だよ。当面の目標は、チャンネル登録者数を百万人にすること! 今、半分のところに来ている。まだまだだけど、届く範囲だとも思ってるんだ。そこにたどり着いたら、そこからまた新たな章を始めるって感じ。とりあえず楽しむってことが最大のポイントだよ。
世界の人に「自分の個性」をみせる、自分にしか出来ない動画を作ること。
Q14:最後にYoutubeチャンネルを始めたばかりの人へのアドバイスをお願い。
世界の人に「自分の個性」をみせる動画を作ることだと思うよ。俺の真似をするんではなく、他の人の真似をするんでもなく、自分にしか出来ない自分の動画を作ること。自分が変な奴だったら変を強調しちゃえばいい。他の人と俺は違うんだっていうところを動画にして、世間に見せるってだけでも、貴重な動画になるんだ。
俺だって、最初は、まさか多くの人に受け入れられるとは、ちっとも思ってみなかったよ。ゼロから始めて2年半後には、50万を超える人がチャンネル登録してくれた。予想なんてしなかったことだ。現在、数々出てるサーフィンの世界でのビデオブログに俺たちの右に出るものはない。
みんなが観たいと思ってるのは、サーファーがサーフィンをするってだけじゃなく、サーフィンもできるキャストたちが普段どんな生活をしているのか、人間性というか、性格の部分まで見えてくるような動画を求めているんだよ。それを提供できているっていうところが多くの人に認められてる理由だと思う。運とか人とか、本当に、いろいろなことに感謝してるよ。
ティナ・コーヘンとの出会い
ティナ・コーヘンとの出会いはジェイミーにとって重要だった。ティナはジェイミーのガールフレンドであり、ビジネスパートナーとしても、公私ともに彼を支える大きな存在。最近ではVLOGの登場回数も増えて、キャストとしても紅一点として華を添えている。そんなティナへの質問
1) 普通の生活にいたティナが今はジェイミーと一緒にいて、腕の立つ人たちに囲まれてるで しょ。そういう得意技を持っている人たちって、普通の人たちと何が違うんだと思う?
うん、そうね。すごい技を持ってる個性的な面白い人間に出会う機会が増えた。そういう人た ちの共通点に一つ気がついたことがあるんだ。サーフィンでもスケートボードで、YouTubeの 世界でも、飛び抜けてる人って、やっぱり、人一倍、努力してるんだよね。120%の力を自分の何かに注いでいる。向かう道が見えてる人たちと一緒にいると、わたしも影響される。最大限に生きたいって思う様になってる。
ティナと妹のサリーをフィーチャーした映像。
2) ジェイミーに出会ってからの自分はどう変わった?
ジェイミーと付き合う様になって、数ヶ月の間に人生がガラッと変わった。ちょうど出会った頃、私、大学で学位を取得して、卒業したところだったの。だから、時間がようやくたっぷり できた時。タイミングが良かったんだよね。ベッドルームで外にも出ないで勉強していた直後に、世界中を旅してまわれる様になったんだから! もし出会ったのが大学在学中だったら、旅に出ることもできなかったし、ジェイミーのブログにも出ることができなかった。全てがうまく運んだのは、出会ったタイミングが良かったからだと思う。
で、大学では、マネージメントとビジネスの学位をとったんだけど、それがそのままジェイミーの仕事を手伝う事に役立っているの。今は彼のビジネスを任されていて、自分が学んできたことをフルに活用できている。とても楽しいわ。
と言っても、これで終了したわけじゃない。日々、この仕事をこなしな がら、まだまだ学び続けている。それと一つ、とても嬉しい事があるの。妹のサリーがバイ トしてくれることになったこと。サリーは妹だけど親友でもあるから、毎日、顔を見れるっていうのは、本当に嬉しいんだ。そうね。YouTubeに出れる様になって、モデル業の方も、より充実してきたし。本当に、ジェイミーのチームの一員になれてることを、心から嬉しく思ってるわ。
STAY PSYCHED MERCHANDISE: https://www.jamieobrienshop.com