写真、リポート:永島未知子 アングレット、フランス
WSLヨーロピアン・サマー・レッグ第3戦、QS1500「Pro Anglet」の大会3日目。ファーストコールは朝8時30分、メンズのラウンド5から行われた。
会場となるフランスのアングレット、シャンブルダムールの満潮時刻は毎日約1時間後ろにずれていく。大会2日目の前日は21時に迎える日没あたりまで試合が行われていたこともあり、ファーストコールが少しでも後ろにずれるのは喜ばしい。
それでも「7時過ぎには到着してフリーサーフィンをした」というのがラウンド5、3ヒート目が出番の田中大貴。朝一よりも潮が引き、サイズはセット胸くらいなものの、キレイに割れるようになったというコンディションの中でヒートスタート。
田中大貴は序盤から積極的に波に乗り、点数を重ねていく。残り5分を切ったところ、バックサイドで3発技を入れるとそれに6.2ポイントが出され1位に躍り出ることに。安堵から「6.2ポイントが出て肩もヒザも震えた」という田中大貴。ラウンド5をトップ通過でラウンド6へ。
2日目の時点では本日3日目でファイナルまで終えてしまうという情報がもたらされていたが、結局クォーターファイナルまでと判断された。しかしサイズダウンする波を懸念するのは変わりなく、初日、2日目同様に途中から2バンクでの開催が実施された。堤防を挟んだ北側ではメンズ、南側ではレディスのラウンド2がスタート。
そのレディスのラウンド2、ヒート7に野呂玲花が登場。時刻も12時を過ぎ、陽射しがようやく雲を抜けると気温は一気に上昇。どんよりしていた数十分前とうって変わって夏模様になった。波のサイズは下がったが会場のムードは上がった。
ヒートが始まると序盤で野呂玲花がバックサイドの波に乗ると2発技を入れる。「波のサイズの割に思ったより点数が出た」と本人も言ったがその1本に6点が出る。その流れのままいき、バックアップとなるもう1本を出してほしい。しかしその後、波選びが難しいのかその1本が出ない。そしてそのままタイムアウト。点数が出ている1本を持っているだけにより悔しい敗退となった。
野呂玲花「なかなか波がこなく、最後はインターフェアも取られてしまった。相手は1位につけている選手で、乗らないように思えたけど・・・。でも一番大事なのは次の試合(スペインのQS6000)なので、気持ちを切り替えます。落ち込んでも試合は続くので、とりあえず同じ過ちをしないように気をつけて、臨みたいです。スペインのQS6000では以前9位になったことがある。それがQS6000での最高位。それ以来そのレベルでその順位になれてないけど(苦笑)、好きな場所でもあるので、焦らずに落ち着いてサーフィンをしたいです」
「焦らずに落ち着いてサーフィンをする」のは前日のラウンド1での試合運びがそんな様子でした。それをいうと「昨日のあんなんいつも寝てる時間(笑)。待って、待って。さすがに夜ご飯を少し食べてから出ました。何を食べたか? 沖縄そばみたいなのとクロワッサンです」
カリフォルニアに拠点を移して3年経つというが、世界各地を転戦しているためカリフォルニアにも、それ以上に日本にもいない日々を送っているという玲花ちゃん。試合漬け、移動ばかりでさぞ大変と思うも、話を聞いているとサーフィンをするのが楽しくて、本当にサーフィン好きなのがわかる。コンペティターである限り勝つことは前提だが、その前にサーフィンが好きという気持ちがある。そういう人の話を聞くのは楽しいことでもありますね。次のスペイン戦はより楽しんで、勝ちにいってください。
さて今回のQS1500「Pro Anglet」で一番の活躍をみせているのが田中大貴。このラウンド6を通過すると次はマンオンマンのクォーターファイナル。人でにぎわう夏のシャンブルダムールでマンオンマンでサーフィンを披露するという希望を胸に挑んだラウンド6の2ヒート目。
これまでの戦い方と同じように、ヒートが始まると積極的に乗る。1本目のバックサイドでさっそく3発。ポイントは5.33。ラウンド6までくると、対戦相手も知られた人が揃ってくる。その中においても点数は出ている、遜色ない。
続く2本目はサイズのあるフロントサイド。キレのよいファーストターンからまたもや得点が期待される。しかしターンから降りたところに運悪く他の選手の姿が。それもどんぴしゃライン上にいたため、なくなくその1本はそこで諦めたことに…。
「ジャッジにアピールしたけど何もなかった。すぐ気持ちを切り替えて、他で取り返すしかないと思った」
田中大貴本人は「最後まで勝つことしか考えていなかった。ラウンドアップに必要な点数が5点台から終了間際で7点台に広がっても、それでもマイナス思考になることはなかった」と終了後に言ったが、その2本目のアクシデントで流れが変わったようにみえた。
序盤で田中大貴はリードしていたものの、中盤から他の選手がポイントを伸ばし、次々にと抜かれる形で最終的にはラウンドアップを果たせずに終了した。
田中大貴「スペインのQS6000の直前の試合だからか、QS1500の割に出場選手の層が厚い。そのなかで思っていたより大差はいなと。逆に勝てるヒートだったからこそ悔しい。でも昨日のラウンド4、今朝のラウンド5を1位で抜けられたことは大きい。自分の壁をこえることができました。次はマンオンマンのステージまでいくこと。それがこれから乗り越えていく壁です」
この田中大貴が戦ったラウンド6ヒート2で上がった2人のうちの1人がJorgann Couzinet(フランス・レユニオン)。彼はその後のクォーターファイナルで9点台のスコアとともに制し、最終日セミファイナルまで駒を進めた。このJorgannという名前、この大会中WSL関係者の口から何度か名前を聞いた。ヨーロッパのQSランキングで2位と、注目されている選手である。そんな彼に田中大貴と同じヒートを戦い、勝ち上がった側としての意見を聞いてみた。
Jorgann「波がキレイに割れて、太陽が出て。気持ちのよいコンディションの中試合ができたよ。明日はサーフィンできるぐらいの波が残っているといいけど(笑)。試合における戦略? それはスポットを見る。どんなうねりが入ってくるのか見る。波は右にいくか、左にいくか、どんな動きをするかとにかくよく見ること。ラウンド6で日本人と戦った? あぁ、彼は前半よかったね。僕が勝ち上がったのは運がよかったからかな(笑)」
2年前のこの大会で初めてJorgannくんを見たときに比べると、印象が全然違う。以前は細身だったが、今ががっしり筋肉がついている。そして金髪になっていた(笑)。すぐに自分だと分かってもらえるのがよいらしい。
その人の性格、そのときの調子などによることは大きいと思うが、それでもJorgannくんのコメントから見えている景色が違うと感じた。
話を田中大貴に戻すと、戦績の波はあるだろうが、この1年で全体を勝てることが多くなったはずだ。戦績のボトムアップが計られているはず。同じ敗退でもラウンド3までの去年の今大会と、ラウンド6まで上がってきた今年ではみえる世界が違うのだろう。この調子のままいけばそう遠くないうちにマンオンマンの景色もみえるだろう。
ヨーロッパレッグが続く選手は引き続いて、ここで日本に戻る選手もみなさんそれぞれ頑張ってください。活躍を期待しています。
オフィシャルサイト:
http://www.worldsurfleague.com/events/2017/mqs/1925/pro-anglet