大原洋人インタビュー「僕がシーズン開幕のオーストラリアン・レッグで勝ち続けた理由」

クオーターファイナルへ勝ち上がった大原洋人 WSL/Bennett
大原洋人@ブーメラン・ビーチ WSL/Bennett

 

今シーズン開幕からUSオープン以来2年ぶりの勝利を手にした大原洋人。この2年間は彼にとって決して楽な道程ではなかった。

 

 USオープンで優勝という偉業を達成した2015年は、その後の後半戦で結果を出せずに最終ランキング34位。翌年の2016年は期待されながらも78位と思い通りの結果を得ることはできなかった。

 

しかし今シーズンは、一皮向けたパフォーマンスでエクセレントのスコアを量産。自らクオリファイへの流れを引き寄せている。今シーズンは始まったばかりだが、未だかつてない素晴らしいシーズンを開始した大原洋人に今シーズンの意気込みと、その活躍の秘密について聞いてみた。

 

大原洋人 photo:s.yamamoto
大原洋人 photo:s.yamamoto

 

優勝はUSオープン以来じゃない? 過去最高の素晴らしいシーズンのスタートになったね。今シーズンはいつものシーズン・スタートと動きを変えてみようと思ったの?

 

そうですね。いつもはもっとハワイにいて、ボルコム・パイプとかにも出ていたんですが、今年はCTにクオリファイすることに、もっとフォーカスしたいと思って、自分のスケジュールを変えてみたんです。

 

大原洋人 © WSL / Ethan Smith
大原洋人@アボカ、セントラル・コースト © WSL / Ethan Smith

 

3000のボルコムパイプに出るのも大切かなとも思ったんですけど、オーストラリアで行われる2つの6000の大会に標準を合わせるために、ハワイを早く切り上げる決断をしたんです。

 

2ヶ月も試合に出ていないと感覚も鈍ってくるんですよね。そんな状況でオーストラリアン・オープンとかに、いきなり出場するのはどうかなと思うんです。1月の終わり頃からオーストラリアに入って、2つの6000の前に3つの1,000の試合があったので、ウォーミングアップも兼ねて出てみようと思ったんです。

 

1000のバーレーヘッズの試合からスタートだったよね。

 

ウォーミングアップっていうと試合ですから変ですけど、そこで優勝することを目標にするというよりは、そこで試合の感覚を戻して、6,000のときに全てが準備万端になっていれば良いなって思っていました。

 

そうですね。今回コーチの存在が大きかったと思います。

 

アボカの優勝もすごく勢いがあったけど、マンリーでの快進撃もすごかったね。

 

そうですね。でもアボカもマンリーも自分のやりたいことが出来たっていうヒートは少なかったんです。そんな中でもヒートを勝ち上がるだけの点を出せて良かったと思います。

 

印象に残っているヒートはある?

 

マンリーのラウンド5で、ブラジルのリューイル・フェリペ(一昨年の湘南オープンの優勝者)とのマンオンマンですかね。あのヒートは2本しか波に乗らずに勝てたんです。(9.83と7.50の2本)

 

今回のオーストラリアは、バーレーヘッズのときから、オーストラリアのコーチをお願いしていて、試合の仕方や試合運びとか、もちろんサーフィンの技術とかも見てもらっていたんです。

 

そのコーチは『QS1000で優勝は望んでいない。QS6000ぐらいで、それがわかってくれば良いんじゃないか』って言ってくれて。『6000で優勝とかも思ってないし、CTに入るまでに、それが出来るようになれば良い話だから』っていう感じのコーチなんです。そのヒートがコーチの教えを一番実践できたヒートだったかなって思うんです。

 

今回の勝因というか。そのコーチの力が大きかったということ?

 

かなり大きかったと思いますね。初めて受けた新しいコーチでもあったし、良いか悪いか試してみないと分からないと思いましたけど。彼が言っていることも凄く理解できたし、それなら勝てるなって思えることを言ってくれていたので、余計試す気にもなって。それが自分的にもやり易かったんです。。。。そうですね。今回コーチの存在が大きかったと思います。

 

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全豪オープンの行われたマンリービーチ

 

コーチはどんな人なの?

 

マーティン・ダンというオーストラリアのナショナルコーチをやっていた人で、いまはコナー・オリアリーとかのコーチをしている人なんです。

 

ちょうどコナーがCTに入ったタイミングで、コナーのお母さんの柄沢明美さんが「ヒロト、本当にCT入りたいなら、オーストラリアに来た時に紹介してあげるよ。」って言ってくれて。

 

自分的にも実際コーチを探していて、その人の他にも元CTサーファーのジェイ・トンプソンにやってもらったりもしました。

 

 

今回のオーストラリアは柄沢明美さんのところにステイしていたの?

 

いいえ、今回の2ヶ月ぐらいのオーストラリアは試合ごとに場所が変わっていたので。明美さんは日本の女子プロたちのケアをしていたので、マンリーやニューカッスルで会った時は話したり食事に行ったりしました。

 

今回は両親が一緒だったらしいけど?

 

最後のアボカの前に父親が来て、その前までは母親と一緒でした。母親は去年もずっと一緒でしたし、今年も一緒に回る予定です。母とツアーを回ることは、いろいろな部分で凄くメリットが大きくて感謝しています。

 

大原洋人@マンリー_owenphoto
大原洋人_owenphoto

 

お父さんの前で優勝できて嬉しかった?

 

終わってみたら優勝できて良かったなって感じでしたけど、父親が来ているからというのは、あまり意識していなかったですね。

 

オーストラリア最後の試合だったし、そろそろ疲れて休みたいなって気持ちもあったんですけど。グレードは1000の試合でも、波は物凄く良くって、こんな波で試合ができて最高だなって思っていて、試合を楽しめていたかなっていうのはありますね。

 

全豪オープン3位に続き、快調にラウンドアップする大原洋人 : © WSL / Ethan Smith
大原洋人@アボカ、セントラル・コースト© WSL / Ethan Smith

 

トレーニングや教えてもらったことが身になったという手応えがあります。

 

今回のオーストラリアはエクセレントとかも凄く出てたじゃない? 今シーズンは始まったばかりだけど、ランキング4位だけど手応えとかある?

 

手応えは凄くありますね。コーチングもそうですけど、トレーナーも凄く考えてくれて、どうやったら勝てるようになるかとか、色々なサーファーを分析して、それをトレーニングに取り込んで1年やってきました。

 

でも去年は結果が出なかったので、今年トレーニングの部分でも変えたんです。コーチにもトレーニングを見てもらったんです。そうしたら今回いきなり結果が出たから、やってきたことが繋がったと思いましたね。自分のサーフィンが良くなってるという手応えより、トレーニングや教えてもらったことが身になったという手応えがあります。

 

大原洋人 photo:s.yamamoto
大原洋人 photo:s.yamamoto

 

トレーニングとかはどんな風に変えたの?

 

トレーニングの量とかは変わらないんですけど、去年の12月ぐらいから食事とかも変えて、試合中はもちろんですけど、試合の前から食べるものとか、自分の取れるカロリーや食事制限をして絞ってますね。その分、体のキレとかも凄く良くなったんです。

 

去年の志田の試合の時とかも、1ヶ月前から日本にいて、その間みっちりトレーニングして、体も凄く仕上がった状況で試合に挑んだんです。でも、その時のサーフィンを今見ると凄く鈍いなって思うんです。だからトレーニング方法とかを変えて良かったなって思いますね。

 

 

前半でクオリファイ出来たなって思えるぐらいのポイントを取りたい。

 

まだ先は長いし、何があるかわからないとは思うけど、CTクオリファイも確実に見えてきたんじゃない。5月の一宮の6000、バリート10000、USオープン10000と前半にハイグレードの試合があるけど、トップ10はキープしたいね。

 

今年は、それが最終目標かなって思っています。何位で入るにせよ、入れたらいいなって思います。いま3,000ポイントがあるじゃないですか。これは今年最後まで残ると思うんですね。欲を言えば、前半のその3つの試合で、クオリファイ出来たなって思えるぐらいのポイントを取れたらいいなって思います。

 

いまのモチベーションを年末のハワイまで持ち続けるのは相当きついと思うんです。途中で崩れた時に立ち直せるのかも不安ですし、自分の気持ちが乗っている時にポイントを稼げたらいいのかなって思います。

 

大原洋人 photo:s.yamamoto
大原洋人 photo:s.yamamoto

 

集中力を高めて、パフォーマンスを最大限に引き出す助けになっている

 

いつも試合の前とかサングラスをかけているじゃない? あれには理由があるって聞いたんだけど。

 

選手にとって、サングラスは、まぶしさから眼を守るだけでないアイテムなんですよね。自分は目が弱くって、医者に行ったりするほどで必要に迫られた感じはあるんですけど。

 

よく自分はサングラスをかけているのに、サングラスを探していることがあるんです。それは掛けていることを忘れてしまうほど、違和感のない掛け心地と歪みのない視界があるからなんですよね。

 

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試合の時とかは、人と目を合わさないで済むというのも自分的には利点ですね。サングラスかけて音楽聞いて、集中力を高めて、パフォーマンスを最大限に引き出す助けになっていると思います。

 

サングラスってカッコつけて掛ける人とかもいると思うんですけど、目を守ることが大切だと思うんですよね。自分はスポンサーになってもらう前からオークリーが一番いいと思っていて。アマチュア時代から普通にお店で買っていたんです。だから、そのサングラスを使える環境にあって最高だなって思います。今となっては必要不可欠な存在です。

 

そんなにたくさんの想いを持って叶えられるCTじゃない。

 

ハワイを拠点にしているじゃない? 選手によってはサーフィンの聖地としてパイプラインとかで結果を残したいとかいう人もいるよね。ハワイに対する思いってある?

 

なくはないですけど、いまハワイがそこまで必要かなという感じはありますね。もちろんCTにクオリファイすれば最後にパイプラインはあるし、乗れなきゃいけないと思いますけど。日本人は冬はハワイで修行みたいな感じがあるじゃないですか。トリプルクラウンが終わって1〜2ヶ月とかハワイにいますよね。

 

でも海外とか回るようになって、他の国の選手とか見ると、試合終わって速攻で家に帰ってリラックスして家族との時間を過ごすんですよね。それから少しづつ来年のオーストラリアの準備をしていく感じなんです。え〜!俺がそれやっちゃダメなのかなって思って。確かにハワイも大切ですけど、トリプルクラウンの時はハワイに1ヶ月ぐらいいるし、その期間の試合のない時は自分の好きな場所でサーフィン出来るわけですよ。

 

だから、あまりそれに取り憑かれてしまうとCTにクオリファイしたいという目標があったとしても、ハワイもやんなきゃいけない、何もやんなきゃいけないという感じで迷いが出ちゃうと思うんです。

 

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自分はビッグウェイバーには、全くなりたいと思わないから。

 

そんなにたくさんの想いを持って叶えられるCTじゃないから。1年間に10人しか入れないわけじゃないですか。そんな簡単にはその10人には入れないかなって思うんですよね。だから今年CTに入れなくても、そうやって続けていくと思います。

 

1位で勝ち上がった大原洋人 © Owenphoto
大原洋人 @マンリー、シドニー© Owenphoto

 

ガブリエル・メディーナとか見ていても、初めてのパイプラインのときは凄く怖がっていた。だけど、そこからどんどん慣れていっていたし。先ずCTに入ること考えたほうがいいのかなって思いますね。先のことを考えるより。

 

3〜5年とかQS回って駄目だったらビッグウェイバーになりたいと言う奴もいますけど、自分はビッグウェイバーには、全くなりたいと思わないから。もちろんパイプラインとか滑れたら、めちゃくちゃカッコイイけど。

 

自分の目標がCTなので、結局は通る道なので出来るようになるかなって。特別できなくてもイイかなっていう思いもあるし。フィジーやタヒチとかもあるし、その準備も必要ですよね。

 

今シーズンはビッグウェイブもそうだけど、怪我に用心しないとね。

 

そうですね。トレーニングしている中で怪我をしないような体にもしてもらっているんです。

 

最後に今年の目標は?

 

細かく言えば色々あって、今年もハーレーのトライアルに出て、もう一度ハーレープロに出れたらいいなとかあるんですけど、最後はやっぱりクオリファイすることですね。