3月18日から20日の3日間、千葉県鴨川にてNSA、JPSA、WSL JAPAN合同「国内強化合宿」が 開催された。これは2月9日に発表された「2017サーフィン強化指定選手」向けに行われたもの。 今回は選考された81名のうち、海外遠征で欠席を除く61名の選手が参加した。
撮影、取材:山本貞彦
講習の内容は第1日、第2日は鴨川マルキポイントで、ヒート形式の実践トレーニング。メンズオー プン、ウィメンズオープン、U-18ジュニア、U-18ガールズと4つのクラスに分けて行い、それ以 外にジャッジトレーニング、ビデオチェック、面接をヒートがない時間に順番に行なった。
ジャッジトレーニングは、選手自身がジャッジになって、ヒートを採点する。どんな演技に高得点 がつくのか、実際に自分がジャッジすることで覚える。また、ジャッジはそのヒートの中での比較 で点がつくことを理解し、演技を組み立てていくことを訓練した。
ビデオチェックは自分の演技の評価だけでなく、ヒートの進行の仕方。特に4マンプライオリティー ルールについて、ヒートを見ながら解説。どのようにして優位にヒートを進めるか。ヒート内の順 位によって、戦い方、波の取り方、戦略を前コスタリカのコーチだった南アフリカ出身のウェイ ド・シャープが日本の専任コーチとしてアドバイス。
面接は各選手の今後のスケジュール、考え方、趣味嗜好などプライベートなことなども確認。特に 5月にフランスで行われる「ISA世界サーフィン選手権」と千葉で開催される「WSL 一宮千葉オー プン」の日程が重なるため、選考材料の一つとして確認が行われた。
さて、2017年強化指定選手の選抜基準は昨年の結果を元に、オープンメン、ウィメン枠 について は、NSAメンクラス・ウィメンクラスランキング上位4名・WSLワールドランキング上位8名(男 女)・JPSA日本ランキング上位8名(男女)・JPSAルーキーオブザイヤー2名(男女)を選抜。
ジュニア枠(U18・U18G・U16・U16G・U14)は、NSAランキングを元に、代表候補4名と補欠 4名の計8名を選抜。その他追加枠としてU18対象選手・ISA世界大会参加選手はナショナルチー ム育成期間として参加年より2年間を強化指定選手として更新するとなっている。
なので、今回は大原洋人、新井洋人、大橋海人、稲葉玲王らに加え、女子は大村奈央、田代凪沙、 橋本恋など海外転戦組に加え、善家尚史、西修司、堀越力、庵原美穂、高橋みなと、黒川日菜子 など多くのプロにトップアマも参加する華々しい合宿となった。多くの報道陣も集まり、選手も 個別に取材に対応。オリンピック種目となったサーフィンの注目の高さを感じた。
第3日目はアンチドーピング講習会、SNSメディアトレーニングと初の試み。これもオリンピック に正式参加種目となったことで必要不可欠となる。特に普通に飲んでしまう風邪薬などは、漢方 系のものに禁止されている成分が含まれていることもあり十分注意が必要とのこと。常備薬等も 事前に調べておくことが望ましいし、わからなければNSAに相談、JADA(日本アンチ・ドーピ ング機構)をチエックすることを勧める。
そして、今は切っても切れないSNSについて。特に18歳以下の選手は友達と会話するがごとく使っ ているが、それもすべての人に見られてるという意識が低いように思う。この講義では意図しない ことでも炎上が起こるネットの危険性を説くとともに、それをどうやって使いこなすか。自分を アピールする方法をレクチャーしてもらった。
この合宿は今までにない試みであり、人数が多かったことで多少のタイムラグが出たりしたもの の素晴らしい内容であった。次回開催はまだ未定ということだが、国内で行われる「ISA世界ジュ ニアサーフィン選手権大会」の前にジュニア中心に開催したい意向だ。
今回の強化合宿はオリンピックが決まって初めて行われたもの。サーフィン界にとって、これがきっ かけとなって、初めて実質的に国内のサーフィン団体であるNSA(日本サーフィン連盟)、JPSA (日本プロサーフィン連盟)、WSL JAPAN(ワールドサーフリーグ日本支局)の3つの協会が繋 がった。
今までも各協会は大会を同時に行ったりして友好関係はあったものの、本当の意味での協力体制 は薄かった。あくまでも協会自体の運営在りきであったのも事実だ。しかし、このオリンピック のおかげで「選手ファースト」の精神が高まり、選手のために手を結んだと言える。
これで本当に選手強化ができる土台が整った。さらに世界で活躍できる日本人選手が出ることに なれば、今日の日が日本のサーフィン界でのエポックメイキングとなったと言えるだろう。カルチャ ーであった「サーフィン」がスポーツの一面をアピールできる良い機会となる同時に、プロサーファー からプロアスリートへ。これも大きな一歩と言えるだろう。Go!Naminori Japan!
撮影、取材:山本貞彦
協力:NSA(日本サーフィン連盟)、JPSA (日本プロサーフィン連盟)、WSL JAPAN(ワールドサーフリーグ日本支局)