Rob Machado Interview/ロブ・マチャドが語る、今思うことのすべて。
コンペティション・シーンの最前線から退いて久しいが、それでもなおサーフシーンで圧倒的な存在感を発揮し輝きを放っているロブ・マチャド。去る6月中旬。そのロブが来日した。実に3年ぶりの日本である。
わずか3泊4日と滞在期間は短かったが、予定されたスケジュールをすべてこなし、日本のサーファーたちにグッド・バイブをシェアしてくれた。そんな多忙な中、ロブはサーフメディアのインタビューに快く応えてくれた。
今回のインタビューでは、ロブ・マチャド・ファウンデーションを立ち上げた思い、教育プログラム、環境のこと、自身のシェイピングとサーフボード・デザイン、旅先での素晴らしい人との出会いや文化的な交流、そしてこれから彼がすべきことまで…、話題は多岐に及んだ。
影響力を持つサーファーとしての社会貢献に向き合う姿勢など、その言葉と行動からはロブのエシカルなマインドが垣間見える。ロブが今、考えていること、してること、楽しんでいること、そのすべてを語ってくれた。
interview by Takashi Tomita
photo by Yasuma Miura
およそ3年ぶりの来日だけど、今回の主な目的は?
僕のスポンサーのREEFが、新たに日本で新生REEFとしてスタートするので、今回はそのプロモーションが主な目的。それと、ベドウィン&ザ・ハートブレイカーズのデザイナー渡辺真史氏がディレクションを務めたREEFとのコラボレーション”M.W FOR REEF”のローンチ・パーティーや、新しいREEFのムービー“EXIT”のプレミア上映もある。滞在日程は短いけど、日本を楽しんでいるよ。
日本のディストリビューターが新しくH.L.N.Aになったわけだけど、彼らの印象は?
H.L.N.Aは、アクションスポーツやライフスタイルにコアに関わっている会社。そういうカルチャーをきちんと理解している仲間たちと繋がることはREEFにとっても良いこと。H.L.N.Aと仕事ができる機会を得られて嬉しいよ。
最新作のムービー“EXIT”について教えて。
“EXIT”は、オーストラリア、メキシコ、バルバドスなど世界中で撮影されたREEFの新作ムービー。REEFのアンバサダーたち、ミッチ、ルーク、ミック、テイラー、ティア、シェーン、ビリー、みんなが世界中を旅して波に乗っている姿をとらえ制作されたサーフィンアクションたっぷりの作品なんだ。REEFでは以前からムービーは作っていたし、どれも多くの人たちに気に入ってもらっているんだ。新作の“EXIT”は、いまのREEFのブランドコンセプトであるJust Passing Throughを映像で表現しているもの。
ロブはこのムービーにどんなふうに関わっているの?
僕はサーファーとしてバルバドスを旅し、その映像が収められている感じ。実は15年ぶりのバルバドスだったんだけど、旅はとても楽しかった。また行けて最高。滞在中は楽しめる波もあったし、撮影クルーはよく知っている顔ぶれだったし、そんな環境で制作のプロセスに関われるのは、いつだって楽しいものだよ。
僕らはいつもサーフィンをドキュメントしているんだけど、つねに何か新しい方法にトライしている。サーフィンするだけでなく、バルバドス中を旅しながら地元の人たちとも触れあった。結果的にアンバサダーたちみんなが各地でプロセスに参加し、みんながお互いに交流しあいながらフィルムを作った感じかな。
ムービーの見どころは?
ティア・ブロンコがチョープーの巨大なバレルに入ったところだろうね。すごい映像。彼女はまだ18歳なんだ。あとは僕の親友でもあるシェーン・ドリアンがすごく危険な波でサーフィンしているシーン。彼のことは大好きだけど、、、あの波はヤバい。クレイジーだね(笑)。
ロブのパートの見どころは?
僕はほんの何本か乗ってるくらいだよ。
謙虚だね。
ははは、ありがとう(笑)。
ところでREEFがスポンサーになって何年くらい?
いい質問だ。たしか1996年からだと思うから、あ~、もう20年近くになる、長いね。僕も歳をとったよ(笑)。まだ年寄りじゃないけどね。
REEFにはロブ・マチャド・シグネチャー・シリーズがあるけれど、商品開発にはどのように関わっているの?
具体的にはアイデアをだしたり、アドバイスしたりして、クリエイティブなREEFのチームと協力して作っている。彼らとの仕事は楽しいんだ。なにしろREEFのヘッドクォーターは僕の家から近いところにあるから、作業を進めるのがとても楽。これって仕事するには最高だよね(笑)。何か考えが浮かんだら、すぐに会いにいってみんなにそのアイデアをシェアできる。彼らは僕のアイデアをさらに引き出してくれて、プロダクトの要素として取り入れ、プロトタイプができたら僕に見せてくれる。そういうやりとりを何回も繰り返して、最終的な製品になるんだ。
reef japan launch eventムービー
シグネチャー・プロダクトの特徴や気に入っているところは?
マテリアルやデザイン面は、僕の好みに仕上がっている。見た目が気に入っているものや視覚的に僕の好きなものをREEFのチームに伝えると、彼らがそれをプロダクトやパッケージのデザインにかっこよく取り入れてくれるからね。デザインの一部はバリから着想を得ていて、鼻緒の裏側にはバリっぽいプリントのファブリックが使われている。あと僕は地形図が好きなんだけど、等高線を表したようなデザインも一部で取り入れているんだ。
今後もシーズンごとにも新作や改良を加えていくの?
もちろん、マーケットはつねに変化しているからね。ずっと同じであり続けるものなんてないよ。つねに進化し続け、最新のものであり続けるようにしていきたい。
http://www.reef.com/rob-machado-signature-series
ここ何年か、ロブは自らの名を冠した非営利団体ロブ・マチャド・ファウンデーションの活動にフォーカスしている。それはサーフィンという枠にとらわれず、自身の倫理観や道徳心に従ったプロジェクト。環境教育や社会貢献活動の推進など、ロブが今、使命感を持ってやろうとしていることのすべてが、この活動には込められている。
最近の活動について聞きたいんだけど、いまロブ・マチャド・ファウンデーション(RMF)に力を注いでいるよね。RMFではどんな活動をしているの?
いまRMFがフォーカスしている主な目的は、子供たちに環境教育を行うことなんだ。もちろん必要とあらば大人にもね(笑)。これは、学校で僕たちの提案するプログラムを実施してもらうことで、子供たちが若いうちから環境問題に意識を向けることができるようにするもの。
きっかけは、カリフォルニアのとある小学校に行ったときに、リサイクリングというシンプルなことすらしていないことに気づいたから。そこで、学校にリサイクリングのプログラムを実施してもらうように働きかけ、子供たちに使い捨てのペットボトルを使わないように促したり、社会貢献活動への参加意識を促すよう活動を始めたんだ。
子供たちにもっと環境に対する意識をもってほしいって思った。すべてはそこから始まった。
リサイクリングのプログラムとは具体的にはどんなもの?
キャンパスの持続可能性(=使い捨てペットボトルを排除する)を推進しながら地球規模の水の問題を解決するために努力している高校を厳選し、RMFはその学校にウォーターボトルを原価で提供して、リフィル・ステーション(水をリフィルするサーバー)を設置するんだ。生徒たちには、ペットボトルの水を買って飲むのではなく、自分のウォーターボトルに水をリフィルして飲むことを習慣づけるように啓蒙している。
今年は多くの学校にリフィル・ステーションを設置するよ。実際にカリフォルニアの高校では、ペットボトルの水を売っているところが多いんだ。時代が違うかもしれないけど、僕が子供のころはペットボトルの水があったかどうかも覚えていない。水道の蛇口やホースから水を飲んだものさ(笑)。体にはよくないのかもしれないけど、そういう時代だった。でも僕はまだ生きているよ(笑)。
とにかく、今僕たちがフォーカスしているのはウォーター。多くの学校にリフィル・ステーションを設置し、ウォーター・ボトルを浸透させること。そういうプログラムなんだ。
社会貢献活動への参加意識も促すと言ってたけど、それは別の活動?
いや、それもこのウォーター・プログラムの一環。僕らが原価で提供するボトルは、有志の生徒たちが主催するウォータークラブによって校内で生徒たちに売ることができるんだ。クラブの生徒たちはボトルを販売して資金を稼いで、その資金でWaves For Water(水の汚い国に濾過装置を提供しているって団体)のためにウォーターフィルターを買ってどこかの国へ届け、地球規模で起きている水の問題の解決に貢献する。
これはひとつの大きな円になるプロジェクト。ウォーターボトルを使う意識づけ、リフィル・ステーション、そしてウォーターボトルを売った資金でフィルターを買い、旅に行く。環境意識を向上させ社会貢献活動を促す、一巡するプロジェクトになっているんだ。2013年には僕の母校の生徒たちが、このプログラムでニカラグアにフィルターを持っていって配ったんだ。彼らにとってとても意義のある活動と体験になったと思う。
なぜこのようなRMFの活動を始めようと思ったの?
自分の子供が就学したときに思いついた。僕には13歳の長女と10歳の次女、1歳半の息子がいるんだけど、長女がまだ小さかったころ、彼女が通っていた学校に行ったときに、このニーズに気づいた。つまり、学校にはこのシンプルなリサイクリングプログラムを行なうための資金も要員もいないことに気づいたんだ。そして何よりも自分の子も含め、子供たちにもっと環境に対する意識をもってほしいって思った。すべてはそこから始まった。
ロブ・マチャド・ファウンデーションでは、ウォーター・リリーフ・プロジェクトに参加する生徒たちの資金集めをサポートし、学校にウォータボトルのリフィル・ステーションを提供する。それ以外にも、生徒たちの活動内容や旅の経験をドキュメントし、地元のコミュニティやソーシャルメディアにシェアしている。
これまでに、ロブの母校San Dieguito Academyがニカラグアにフィルターを届けた他、Canyon Crest Academy、Laguna Beach High School、Coroda Del Mar High Schoolなどいくつもの高校がRMFのウォータープロジェクトに参加し、それぞれの掲げる目標を達成している。ソーシャルメディアを活用したプロモーションには、可能であればロブが参加することもある。
ロブ・マチャド・ファウンディーション
http://robmachadofoundation.org/
RMFでは、ファウンデーションの活動資金集めのためにアートショーなども開催しているね。
そう。今年は1月にロサンゼルスでアーティストのセージ・ボーンと一緒にアートショーをやったよ。セージは仲がいい友だち。彼とつるむようになり、一緒に協力して何かクールなことをする方法はないかと話すようになった。で、僕らはアートショーをやることにした。僕が削った10本のサーフボードにセージがアートを描いたり、僕の写真を大きくプリントして彼がその上に絵を描いたり。彼とのコラボはとても楽しかったし、いい体験だった。彼はすべての時間を捧げてくれたし。僕は彼のアートと人柄が大好きだし、尊敬しているんだ。おかげでショーは大成功だった。
ロブがRMFのためのアートショーでコラボしようと声をかけたのは、ロサンゼルスのアーティスト、セージ・ボーンだった。彼もまたサーファー。このためにロブが削った10本のボードに、世界観のあるセージのアートがコンセプチュアルに描かれた。photo: Courtesy of Rob Machado
こういう企画やイベントは今後もやっていきたい?
もちろん、今後もっと企画していきたいと思っている。これはRMFのために資金を集める企画だけど、みんなが楽しめる方法でもあるからね。僕には他にも素晴らしいアーティストの友だちがたくさんいるから、たとえば次はトーマス・キャンベルとアートショーをやるのもいいと思っているんだ。
セージとやった初回は、初めてということもあり大変な部分もあったけど、1回経験したので次はスムースだろう。成功例があるから、トーマスに「同じことをやらない? サーフボードと写真でアートをいくつか一緒に作ってさ」と誘いやすい。実現したら超クールだと思うんだよね。
活動はウォーター・プロジェクト以外にも、若者に自発的に企画させるビーチクリーン活動や、ビーチへのゴミ箱の設置など多岐にわたる。実際ロブのホームスポットであるカーディフのビーチにはRMFのゴミ箱が設置されている。
一部のファンの間では、ロブ・マチャド・シェイプのサーフボードが話題になっている。それらのボードは、いわゆるスラスターのパフォーマンス・ショートボードではなく、オルタナティブなデザインやミッドレングスなど、現代のボードデザインの多様性を映したかのようなラインナップだ。
ロブは、ホームブレイクであるカーディフではロングボードからSUPまであらゆるボードを高いレベルで乗りこなしている。デザインやサイズに対してオープンな姿勢は、いかにもサンディエゴ育ちらしい。シェイピングを通して彼はどのようにボードデザインと向き合っているのだろうか?
ここ最近、ロブの活動でもうひとつ気になるのが、シェイピング。ロブが削るサーフボードはどんなコンセプトなの?
僕が作っているのは、楽しむためのサーフボードさ(笑)。以前から僕はサーフボードをシェイプしてはきたけど、真剣になったことは一度もなかったんだ。ところが、たぶんここ4年くらいかな、すごくシェイピングにハマってしまった。そしてデザインすることに夢中になっている。違うデザインをエクスペリメントして楽しんでいるんだ。
純粋にすごく楽しい。何かを作ることにワクワクしている感じ。物作りが好きなんだけど、僕は性格的に決して満足を得られないタチなんだ。本当に良いボードができても、もっと良いものを作る方法があるんじゃないかって思ってしまう。それが僕を夢中にさせ続けているんだろうね。
僕は楽しむためのサーフボードを作っている。
完璧なサーフボードを作るなんて不可能かもしれない。でもいいんだ。なぜならサーフィンはとてもユニークなものだからね。海のコンディションや波は決して同じではない。スケートボードで同じスケートランプや同じサーフェスをずっと滑り続けるのとはわけが違う。
サーフボードは、絶えず変化している海や波のコンディションといった自然の環境によってチョイスが変わるもの。波、風、ボード、何もかもが変化する。そのたびに違うフィーリングを得られるのがサーフィン。絶えず進化し続けるアクティビティなんだ。
シェイピングの師匠はいる?
師匠と呼べるのは、アル・メリックだろうね。15歳のとき以来、彼は僕のすべてのボードをシェイピングしてくれている。僕は長い間、アルがシェイプしているのを何時間も何時間も見て過ごしてきたんだ。シェイピングルームに座り、彼がやっていることを全部見てきたよ。あのときはあまり深く考えていなかったけど、いま振り返ると、アル・メリックのシェイプを間近で見るのって、すごく特別で貴重な時間だったんだなと思うよ。
僕の目から見れば彼はマスター・クラフツマン。間違いなくマスター・サーフボード・シェイパーだね。彼みたいな名匠がサーフボードをシェイプするところをずっと見ることができたなんて、僕はとても恵まれていた。シェイピングに限らず、彼は僕に多くの影響を与えてくれた人なんだ。
ムーンライト・グラッシングのマスター・ラミネーター、ゲイリー・ステューバーがあなたがシェイプしたボードをグラッシングしているね。
ゲイリーは素晴らしいラミネーターだよ。彼のことは大好きだし、腕を信頼している。ムーンライトには数人ラミネーターがいるけど、僕のボードがムーンライトに持ち込まれるときは、いつもゲイリーに頼むんだ。僕がまだワールドツアーを回っていたときから、長年、彼は僕のボードをグラッシングしてくれている。
ボードレーベルのロゴには意味があるの?
あるよ。あれは焼き印なんだ。僕の高祖父は南カリフォルニアにランチ(大牧場)を持っていたんだ。最初はマリナ・デル・レイからサンタモニカまでの14,000エーカー(約56.65㎢)の巨大な土地だった。1840年代のことだけど。そのランチで使っていた牛の焼き印。ランチは年を経るごとに徐々に小さくなっていったらしいけどね。とにかく、このレーベルのロゴは僕のファミリーのルーツに由来するものなんだ。
いまシェイプしているボードで、何か新しいデザインやアイデアはある?
もちろん、たくさんある。ボトムコンツアーをわずかに調整するとか、つねに何か新しいものをエクスペリメントしているからね。ほんのわずかな変化でボードは変わるんだ。この間オーストラリアに行ってきたばかりなんだけど、ジョージ・グリーノーとしばらく過ごすことができた。
その際、彼のいくつかのデザインを見る機会を得られた。彼は僕にいくつかのボードで遊ばさせてくれたよ。そして、グリーノーから影響を受けたボードを2、3本作ってみた。ボトムのレールに特徴があるんだ。ステップみたいな感じに大きくドロップしているレール。初期の彼のボードに見られるグリーノーのデザインなんだ。
これはレールデザインでもありボトムコンツアーでもあるね。
グリーノーのボードを見て、彼がやっていたことを理解した。あれはトライプレイン・ハルのボトムだった。ボトムが段差になって落ちていて、レールがすごく薄かった。この同じコンセプトを、僕のデザインとアウトラインに応用してみた。うまく機能するかもしれないし、全然機能しないかもしれない(笑)。今はただエクスペリメントして楽しんでいるだけ。G-Landに持っていって試すんだ。すごく楽しみ。
自由な時間があるときはいつもシェイピングしているの? 家にシェイピングルームがある?
いや、友だちのファクトリーのシェイピングルームを使わせてもらっている。僕は旅に出ていることが多いけど、ホームタウンにいるときはシェイピングしようと思っている。僕にとって良い方法なんだ。シェイピングは僕に、もっとサーフィンしようという気にさせ続けてくれる。自分のデザインをエクスペリメントしてサーフィンを楽しむ。ついでにシェイピングも上達する。
写真を撮るのと同様に、ボードシェイピングはあなたの創造性を発揮する手段のひとつというわけだね?
その通りだよ。
グリーノーのデザインからインスパイアされロブが削った最新デザイン3本。チャイムドレールとは違い、完全にボトム側のレールが一段落ちているユニークなデザインだ。左のツインフィンは5’2″、真ん中は5’5″、オレンジのボードは5’9″ photo: Courtesy of Rob Machado
むしろ日本で何かをすべきだろう。前向きに考えていきたいね。
自らのアイデアや創造性を、自分が信じるより良い方法を通じてサーフィン界や社会に何らかのカタチで発信していくロブ・マチャド。彼は今すでに、ひとつ上のステージでサーファーという枠を超えたエシカルな活動をし始めている。今後何をするのか、何をすべきか、ロブの考えをさらに聞いてみた。
RMFでの活動で何か今後新しいプロジェクトを考えている?
そうだね。僕はつねにどんな可能性にもオープンなマインドで、自分のファウンデーションに取り組み続けたい。できれば日本でもファウンデーションの活動を展開したいと思っているんだ。どんなカタチでもいいから日本の環境保全に貢献できる方法を見つけたい。僕たちが最近やったプロジェクトのひとつは、僕の家のそばのビーチにゴミ箱を置いたこと。どのビーチにもゴミ箱はあるべき。そう思わない?
ニーズはあるんだ。そのニーズを見つけて満たしたい。いまRMFの活動の範囲は南カリフォルニアだけなんだけど、今後は違う場所にも広げていきたいと思っている。日本でも僕のボードを売り始めることになるんだけど、サーフボードの利益の一部はRMFに寄付される仕組みになっているから、日本で何かをするのは理にかなっていると思う。むしろ日本で何かをすべきだろう。前向きに考えていきたいね。
3年前に来日したとき、サーフィンする以外にもいろんな人と交流していたよね。たとえば、ツリーハウス・ビルダーの小林崇さんとか。いつも旅先では人とのそうした交流を楽しんでいるの?
今回は滞在が短すぎてあまり人と交流できないけど、世界には興味深い人がたくさんいるんだ。そんな人たちとの交流は僕にとって楽しみでもあり、掛け替えのない体験でもある。小林さんは、そんな興味深い人のパーフェクトな例だろう。彼はツリーハウス・マスターであり、素晴らしいクラフツマンであり、ものすごく意義のある活動をしている人。
それに彼はサーファーだ。彼のように高いスキルを持ちながらサーフィンを愛している人が世の中にはたくさんいる。彼らは海と繋がっていて、海はとてもクリエイティブな人たちを包み込んでいる。だから僕はそういう人を見つけて、世界中で彼らと繋がりたいんだ。
そうした繋がりから刺激を受けている?
すごくたくさんの刺激を受けているよ。前回日本に来たときは、僕は小林さんと一緒に仙台に行き、彼のツリーハウス作りを手伝った。あれは僕の人生を変える経験と言ってもいいだろう。まず地震と津波による震災の被害を見た。本当に心が痛んだよ。そして小林さんの話を聞いた。彼がツリーハウスをそこに作る理由をね。彼は僕にこんなふうに説明してくれた。多くの人が愛するものを失くし、多くの人が大自然を責めた。もしくは自然災害をもたらした大自然を恐ろしがっている。
だから彼は自然から何かを作りたいと考えた。そして、木だけを使って自然の中にツリーハウスを作ろうと決めた。彼は自然が与えてくれる幸せな場所を創り出したかったんだ。いつだって子供たちはそこに遊びに行かれる。そして前向きな気持ちで再び大自然との繋がりを感じられるだろう。小林さんのその素晴らしい考えに僕は刺激を受け、深く感銘したんだ。
あなた自身も海と繋がっている素晴らしいサーファーで、影響力と求心力がある人でしょ。ジェエル・チューダーがダクトテープ・インビテーショナルをやっているように、あなたも人を惹き付ける独自の何かをやりたいとは思わない?
そうだね、考えるべきかもしれない。ジョエルのイベントはたしかに超クールだよね。彼も僕に刺激をくれるひとりだ。彼のイベントを見ると本当に鼓舞されるよ。僕にも何かイベントを企画する方法があるかもって思わせてくれる。ジョエルがやっているのはトラディショナル・ロングボーディングの世界観とカルチャーを讃えるものだけど、僕がやるとすれば、それは間違いなく違うものになるだろうね。
ハイパフォーマンス・ショートボーディングとはいわないまでも、その中間に何か面白いものがあるように思う。うん、どこかほどよいところにね。何ができるかはまだわからないけど、確実に考える価値はありそうだな。
ヨガをして、健康に気をつかっているジェリー・ロペスが僕のヒーローなんだ。
ところで、さっき「歳とった」なんて言っていたけど、40歳を過ぎたとはいえ、あなたはまだまだスタイリッシュにキレのあるサーフィンをしている。サーフィン以外にも若くいるために何かしているの?
まずサーフィンを続けているとフィジカルもメンタルも若くいられる。それは間違いない。僕のヒーローはジェリー・ロペスなんだけど、彼のコンディションを見ても、衰えていないことがわかる。彼はいま60代後半だけど、アクティブすぎるよね(笑)。彼はヨガをしていることで有名だし、とても健康に気をつかっている。実は僕も長年同じことをしているんだ。いまそれがどんなに重要なことか改めて気づき始めた。
僕の世代や少し上の世代の人たちがいま「ヨガを始める必要がある、体をケアする必要がある」と言っているのをよく耳にするんだけど、まったく同感だね。40過ぎないと感じないことかもしれないけど、いろんなところが痛み始めるからね(笑)。体を整えることはとても大切だと実感している。だからジェリーから受ける影響が大きいんだと思う。若い体と心のまま、ずっとサーフィンし続けられるなんて素晴らしいこと。僕もそういう存在でありたいと思っている。
今後、何か考えている計画はある?
今後の計画? う~ん、未来についてはわからないよ(笑)。あまり先のことを考えず、シンプルでいたい。自分がやっていることを信じて続けながら、いまを生きていきたいと思っている。
ロブはいつだって自然体である。気負わず丁寧に質問に応えるその姿からは、彼の穏やかな人間性が感じられる。しかし柔らかさの中にも、自らの倫理観や使命感をしっかりと持ち、それを発信しているのが印象的だった。彼が語る通りたしかに歳はとったのかもしれないが、そのぶん包容力や円熟味が増したのだ。ロブ・マチャド、歳を重ねてなお、その強いカリスマ性と魅力は健在だった。
取材協力:http://www.reef-japan.com/
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