ディスカバリーインドネシアⅡ〜第3弾北スマトラ、バンダアチェ後編。「いつか絶対に行ってみたいと思うに価する場所」
再開された「ディスカバリーインドネシア」。東西南北、四方を海に囲れ、年間を通じて良質なスウェルが打寄せるインドネシアの知られざる波の魅力 に迫る。 2シーズン目を迎える今年も、世界が認める有数なサ-フィンデェスティネ-ションをクロ-ズアップし、年間で5つのロケーションを紹介していく。 未だ見ぬ魅惑のサーフスポットへの旅を楽しんで欲しい。シーズン2の第3弾は、北スマトラのバンダアチェ。
悲劇が起きた海で呑気にサーフィンなどしていていいものなのだろうか
2004年12月26日、アチェ州沿岸を巨大津波が襲った。10万人を超える人々が海に飲み込まれていったという。その被害はあの東日本大震災をも凌ぐほど甚大なものであった。
そんな悲劇が起きた海で呑気にサーフィンなどしていていいものなのだろうか、そんなジレンマを抱きながらサーフボードを小脇に抱えて海へと向かった。
そこには屈託のない笑顔を向けてくるローカルサーファーの姿があった。彼らは一様にフレンドリーで親切であった。彼らからは苦しみを乗り越えてきた者にしか醸し出すことのできない真の優しさが感じられた。彼らの笑顔に救われてボクはアチェでのサーフィンを心から楽しむことができたのだ。
アチェに関しては旅に出る前から多少の思い入れがあった。ここを訪れた者から耳にしたアチェの情報はサーファー特有の誇大誇張も含めて心トキメク話ばかりだった。かといって「絶対に行ってみたい」とも思っていなかったので「多少」の思い入れにとどまっていたのだ。
ディスカバリーインドネシア第3弾ということでアチェを訪れたわけだが、第一弾のスンバ、第二弾の北マルクともにボートトリップだったので初めてのランドステイということになった。
しかし今回我々がステイしたOZハウスはまるでボートトリップであるかのような錯覚を引き起こした。いい意味で一体感が感じられる作りになっていたのだ。
内面から溢れ出るサーファーとしてのスタイルが見るものを魅了する。
今回の旅ではヨッシーこと吉川共久プロがBlue. Magazineのメインキャラクターとして参加してくれた。
彼とは3度目の旅となる。ルックスもさることながら内面から溢れ出るサーファーとしてのスタイルが見るものを魅了する。
彼と海に入ると彼のスタイルに感化されて、なんだか自分も「吉川共久」になったような気分でサーフィンができるから不思議だ。
写真で自分のショットを見てみると実際にはまったく似ても似つかないのが現実なのだが。
まあとにかく、彼と波を追いかける時間はオジサンながらに心が浮ついてしまうひとときとなるのだ。
アチェの波は一言でいうと月並みながら素晴らしい波だった。今まで耳にしていたアチェに関する情報に誇張がなかったことに気付かされた。たまにはサーファーの言うことも信じてみるものだなと反省すらした。
メインポイントのAフレームはその名の通り「A」の形のようにワンピークからライト、レフトともに規則正しくブレイクしてくれるFun Waveだ。
スウェルのディレクションが決まるとライト方向にパックリと口をあけたバレルが出現する。
サーファーはただレールをセットするだけで波のトンネルへと包まれていく。Aフレームとチャンネルを挟んでパドルでも移動できる距離にレフトのロングブレイクもある。
ライトに飽きたらレフト、レフトに飽きたらライト、なんてこともできる贅沢なロケーションとなっているのだ。
旅が終わるころには「アチェ、また来たいよね」という会話があちこちで聞かれた。
ライトもレフトもクオリティの高い波がコンスタントにブレイクしていたのでサーファーとしては当然のことかもしれない。それに加えてロコたちとの心の交流がこの旅に花を添えてくれた。
今回アチェを旅してみて、ここは「いつか絶対に行ってみたい」と思うに価する場所であることを誇大なしにお伝えしておくべきだと思ったのだった。
ディスカバリーインドネシアⅡ〜第3弾北スマトラ、バンダアチェ前編。「想定外は想定内」
バリ島在住プロサーファー。2000年〜2007年までJPSA(日本プロサーフィン連盟)ロングボードツアーでシード選手として活躍。その後、雑誌、webなどで執筆活動を行い、サーフィンや旅をテーマに啓蒙活動を行っている。
有本圭のブログ→ http://sw-players.com/
サーファー&フォトグラファー。最高の波を求め1994年にインドネシアのバリ島へ移住。バリ島をベースにインドネシア各地で水中撮影をメインに活動、 サーファーの視点から自然の素晴しさを伝える作品創りに努める。
Nobu Fuku Photography http://www.nobufuku.com/
協力:波伝説、ガル-ダインドネシア航空、BLUE、OMtour、オ-シャンゾ-ン OZハウス