「ダ・フイがWSLを訴えた」という事件の裏側にある確執。ハワイからの現地リポート。

「ダ・フイがWSLを訴えた」という事件の裏側にある確執。ハワイからの現地リポート。 


YouTube Preview Imageエディ・ロスマン

 

パイプマスターズが終了した次の日のことだ、夕方のKGMBローカルニュースにコンテストの映像が映し出されたのは。屹度、華やかだった大会を振り返る微笑ましいリポートが伝えられるのだろうと思っていた。が、リポーターから出た最初のひと言は『ダ・フイがWSLを訴えた』という物々しいものだった。

 

 

ニュースで報道された映像の中ではダ・フイのディレクター、ステイシー・モニーズが、飽きれたという表情で「人に対してのリスペクトってものは全くなしだ、法律も考慮しない、裁判官へのリスペクトもなし」とコメント。それに続いてリアム・マクナマラマが「ワイルドカードを減らされたということは、パイプで血と汗を流して頑張っている若手たちのチャンスを奪ってしまうということだ」と。二人ともWSLへの怒りを露にしている。一体何か起きたのか?

 

 

 

パイプで血と汗を流して頑張っている若手たちのチャンスを奪ってしまうということだ

 

 

調べてみるとダフイがWSLを訴えた理由は『WSL法律を無視したから』ということだった。さて、その法律とは?政府発信のオンラインページによると、その法律とは、平たく言えば『正しいハワイの公園の使い方』をうたったもの。ハワイの公園のほとんどはビーチパークのことだから、海の使い方が唄われた掟だ。様々な立場の人が平等に海を楽しめる様にと作られたもの。まさに海がメインのリクリエーションであるハワイならではの法律だ。

 

 

で、直接問題に関係するのは(さすが世界一の波を誇るノースショアだ)セクション15が、ノースショアオンリーの決まりであるというところ。その決まりの例は、一日8時間以上イベント(コンテスト)は行なってはいけないとか、モクレイア、ハレイワ、ワイメア、エフカイ、サンセット以外の場所でイベントを行なってはいけないとか、大会期間は15日オンリーで実際のイベントは4日以上を使ってはいけないとか、祝日にイベントを行なってはいけないなどなど。

 

 

 


 

ヒートは4人以下で組み立ててはならない。マンオンマンのヒートは禁ずる

 

 

今回問題になったのはその中の『ヒートは4人以下で組み立ててはならない。マンオンマンやワンオンワンのヒートは禁ずる』という部分だ。今回のパイプマスターズではマンオンマンの形が使われたものの、2ヒートを同時進行していた為、結局は4人だったから違法ではないんんじゃないか。が、調べてみるとラウンド3とファイナルヒートは完全にマンオンマン。つまり二人の選手しか海の中にいなかった。ようするにWSLの行なったパイプマスターズは法律違反だったということになる。

 

 

ここでパイプマスターズを継続してみている人は「待てよ」と来ると思う。詳しい人なら「以前からパイプではマンオンマンスタイルは使われているじゃないか。ほら、1995年のケリーとマチャドのチューブ合戦。海の中でお互いの検討を祈って握手したシーン。今でも覚えているぞ!」と。

 

 

そう、法律が1991年の10月24日。だとしたらその時もASPもといWSLは違反をしていたという事になる。特別な申し出を出せばフォーマットを変えていいと書かれているが、特権を出していたかどうかは公的に明らかにされてない。こちらでわかっているのは、裁判はオンゴーイング(続行中)で、坂本裁判官はダフイ側に理解を示しているということ。では、なぜ、今年に限ってダフイがそこを突いたのだろうか?

 

 

「その土地に生まれたから、その場所に住んでいるから」という浅い問題ではない。

 

 

実は 元々そこには、ローカリズムというものが絡んでいる。ただよくありがちな「その土地に生まれたから、その場所に住んでいるから」という浅い問題ではない。ハワイでは歴史的な問題が含まれる。遡ると18世紀。西洋の国々がルネッサンスを経て蒸気で走る船などが開発されどんどん近代化が進んでいる時代、ハワイは地理的な理由から、ガラパゴス化。自給自足の生活だった。が、ヨーロッパで大航海時代に入り、土地の発見が競争するように行われていた余波を得て、ついにキャプテンクックが、ハワイを発見した。西洋化が始まってしまったのだ。

 

 

マクア・ロスマン

 


 

カメハメハ大王も西洋の武器利用して島々を統一したのだが、まだ大王が行きている頃は古代の形が守られていた。が、19世紀に入り、大王は他界。摂政カアフマヌが政治を動かすようになった時点で古代から続いたカプーシステムは崩壊。一気に西洋化に拍車をかけた。文字を扱う事を知らなかった島の人たちの教育が進んだのは西洋化のメリットと言えるが、デメリットも多く、中でも一番の問題となったのが、土地の所有問題だった。

 

古代の人達は、土地を所有するというコンセプトがなかった(土地も海や空のように捉えていた)ので、西洋人の言いなりのままに土地の所有権が法律で決められてしまい、いつのまにかハワイの大半が西洋人のものになった。そして、商売目的で土地は利用されるようになった。生きるために広大な畑と川を失ったハワイアンたちは、生きる術を失い、プラス疫病の影響もあり、ネイティヴハワイアンの人口が一気に減ってしまった 。

 


「自分が今存在するのは祖先の繋がりがあるからだ」といういう考えがある。

 

 

 

今でもそれを引きずっている人がいるの?と驚かれるかもしれないが、ネイティヴハワイアンに言い伝えられているものの中に「自分が今存在するのは祖先の繋がりがあるからだ」といういう考えがある。良いことが起きたら祖先が導いてくれたからと。そんな彼らだからこど、祖先が受けた屈辱を自分の身に降り掛かったものだと考える人が多い。海の世界でに馴染む人たちの中でも、ハワイアンカルチャーを守ろうとする=余所者に対して警戒心を示すほとたちが多いのである。

 


ローカルたちに16席が設けようとされていた。が、それが前々回まで。今年は2席に減らされたのだ。

 

 

 

それを理解したアメリカ大統領クリントンは合衆国公法103-150号に署名。ネイティヴハワイアンの血を引く人たちに、オハという恩恵を与えるシステムが作られた。同じ様にASP(WSL)も特にローカルたちが大切にしているパイプラインでの大会だけは、ローカルたちに16席が設けようとされていた。が、それが前々回まで。今年は2席に減らされたのだ。ダフイの人たちが、そのネイティブ・ハワイアンサイドにいるといえば(席が減らされたのが引き金となり)WSLを起訴した意味がお分かりになったことだろう。

 

 

今回のこの件は、ハワイという混乱した過去を持つ土地だからこそ起きた出来事だで済ませてはいけない様な気がしてならない。我々サーファーに考える機会を与えられた出来事なのではないか?!年々、トランスポーテーションが便利になり、世界の波を追い求められる時代になった。トラベルサーファーの責任として、目的地の歴史や文化を学ぶことが大切なのではないか。。。。『自分の身を守る為に』

 

更新:2015年2月18日 9:31 AM –

 

text by emiko cohen