次の拠点となり得るアジアで日本はどう変わっていかなければならないのか。

韓国初の国際大会で見えた日本の現状。

〜次の拠点となり得るアジアで日本はどう変わっていかなければならないのか。


 

今回の大会のためのコンテストボード。photo:s.yamamoto

韓国の済州島、中文海岸で初のASP JAPANの大会「MURASAKI QUIKSILVER JEJU OPEN」が行われた。地元韓国4名、海外4名を加え、エントリー数は合計27名。ヒートはR-32からのスタートで、最初からマネーラウンドというヒート組となった。

 

日本からのエントリーは19名。参戦したメンバーが凄い。歴代グランドチャンピオンの田中樹、林健太、田嶋鉄兵、大澤伸幸、田中英義に加え、今は海外ASPを中心に転戦する辻裕次郎、脇田貴之。ジュニアの日本代表の大橋海人、加藤嵐、仲村拓久未に加え、国内でもトップの椎葉順、高梨直人。実力を上げてきている深川達哉、河村海沙、高橋健人、北田力也、黒沢賢一、川畑大志、山岸夢人というメンバー。日本のトップオブザトップと言っても過言ではないだろう。

 

大会は波に翻弄されるものの、最後はものすごくスリリングで白熱した試合となった。ボクシングで言うノーガードの打ち合いと言うのか、みんなが攻めのサーフィンを披露してくれた。各選手もスキルを試されたものの、実力以上の演技で会場を沸かてくれた。

 

そう、こういう試合をやらなきゃだめだ。ギャラリーが熱くなるだけでなく、選手が実力を伸ばすためにも、こういうトップアスリートの集まる試合をやるべきなんだ。さらに海外からの選手の参加があれば、いろんな国の戦い方やサーフィンが学べる。日本人選手の世界での活躍を望むならば、こういう試合を国内でも多く開催しなければいけないんだと思う。

 

今回はASP JAPANの開催である。それでもエントリーが少なかったのはなぜ何だろう?海外の試合だからか? 遠征費がかかるからか?でも、ツアーのパックを利用すれば国内ともさほど変わらない。では、年間活動費で最初にかかる協会の登録費の負担が大きいのか?二つの組織にダブルで払うのは無理ということなのか?経済面で考えれば、それも仕方がないのかもしれない。それに「行っても勝てないから」という理由も、たまに耳にする。

 

では、プロサーファーとは何だろう?何の為にプロサーファーになったんだろう?もちろん試合に出るだけが、プロではないかもしれない。しかし、試合の成績でプロとしての評価をされるのも事実。その評価は引退した後を含め、今後の人生をも左右する。なぜなら、それがプロスポーツだからだ。

 

今回のアマチュアコンテストの出場者。この中からアジア代表選手が生まれるのか。

 

ここ韓国ではムラサキスポーツが10年前からサーフィンのイベントを行っていると言う。今大会との併催で隣のビーチブレイクにおいて、アマチュアコンテストも行われた。その大会には、なんと250名のエントリーがあり、大会も大いに盛り上がっていた。スキルはまだまだではあるものの、みんな楽しんで参加していた。そして、感じたのはサーフィンへの熱さ。とても勢いがある。これからの韓国のサーフィンの未来は明るいだろう。

 

今年のASPの初戦は中国でも開催され、アジアが次のサーフビジネスの拠点になることは間違いないと思われる。今は日本より実力が下かもしれないが、どう何だろうか?ブラジル、南アフリカ、ヨーロッパに抜かれた日本がこのまま抜かれないと言えるのだろうか?その保証はない。

 

プロゴルフの世界を見ても、昨年は韓国勢が日本の賞金王になっている。なぜ韓国が強いのか?その違いを記事で読んだ。「日本はスポーツとして考え、韓国は人生として捉えている」これでは敵うわけがない。日本はいつから形だけのプロサーファーになったんだろう。サラリーマンみたいなプロサーファーだったら、このままでは間違いなく後塵を拝することになるだろう。

 

今の日本のサーフィンの現状は鎖国しているのと同じだ。国内だけでの自給自足。そこに世界はない。しかし、現在、自給自足すらも無理な時代になったということに、選手も業界も気付いてないのだろうか?グローバルな時代と言われて何年経ったのか?今や自国だけでやっていくのは無理。もう後戻りはできないのだ。

 

再び問いたい。まずは選手に。何でプロサーファーになったんだ?そして、業界に問いたい。プロスポーツとは何なのか?今、日本のサーフィン界全体が真剣に考えなければいけない時が来ている。

(写真、文:山本貞彦)