世界的なサーフィンコーチ、“スネーク”ことジェイク・パターソンがホワイトバッファローのライダーを合宿形式で集中コーチング

サーフィン界で世界的に知られるコーチ、ジェイク“スネーク”パターソン(Jake Paterson)が、日本の若手選手たちを対象に「WSL QS6000 Billabong Tahara Pro」(田原)で行った合宿形式の集中コーチングの様子をレポート。

 

パターソンと過ごした8日間は、文字通り“サーフィン漬け”の日々となった。ホワイトバッファローのライダー6人、松田詩野、松岡亜音、池田美来、高橋花音(試合不出場)、須田喬士郎、岡野漣を対象に、試合に合わせた徹底した合宿型指導が行われた。

 

ジェイク・パターソン

 

パターソンはオーストラリア出身の元CTサーファー。1998年のパイプライン・マスターズ優勝をはじめ、ジェフリーズベイやサンセットでの勝利、ASP時代の2000年・2001年の世界ランキング5位など、輝かしい実績を持つ。

 

 

引退後は指導者に転身し、ジュリアン・ウィルソン、ステファニー・ギルモア、グリフィン・コラピント、イーサン・ユーイングなど世界トップ選手を育てた。また、選手たちのツアーに密着した映像シリーズ「SnakeTales」でも知られ、“世界的サーフコーチ”の代名詞となっている。

 

さらに昨年のパリ五輪では「波乗りジャパン」のコーチとして帯同したことも記憶にあたらしい。今や日本と世界を股にかけて活躍する姿は、“スネーク”の名にふさわしい存在感を放っている。

 

 

2020年には一度コーチ業を引退したが、2024年のCSで復帰。ポルトガルでのCSでは五十嵐カノア、ケイド・マトソン(USA)、エイトン・オズボーン(USA)、シオン・クロフォード(HAW)、ジェット・シリング(USA)、メイシー・キャラハン(AUS)、大原洋人などをサポートし、再び現場で指導を行った。

 

 

 

今回の合宿でパターソンが日本の選手たちに伝えたのは、単なる戦略やテクニックにとどまらなかった。朝早く海に入りフリーサーフィンで選手の動きを観察し、ビーチで細かくアドバイス。

 

 

夜は一日の映像を囲んでミーティングを行い、選手たちは自分の動きを確認しながらメモを取り、質問を投げかけた。食事中もサーフィンの話題が絶えず、まさに一日中サーフィンに向き合う濃密な時間となった。

 

 

勝敗だけでなく、サーフィン人生の積み重ね方を意識する姿勢

 

 

試合中も、ヒートごとに相手やコンディションを分析し、波の選び方や攻め方を的確に示すなど徹底指導。

 

パターソンが繰り返し強調したのは、自信を持つこと、目標を立てて努力すること、そして過程を楽しむこと。勝敗だけでなく、サーフィン人生の積み重ね方を意識する姿勢を選手に促した。

 

SNSの使い方についても「時間を決めて、自分の集中を奪われないように」と指導。「人のことはコントロールできない。自分に集中すべき」と語り、サーフィン以外の生活面も含めた“マインドセット”の重要性を体感させる内容となった。

 

 

ジャッジの評価する演技を理解して挑むべき

 

ジェイク・パターソン

 

選手たちも大きな刺激を受けた。松岡亜音は「スネークは不安を取り除いてくれました。試合前は緊張で自信を失うこともありましたが、自信を持つことの大切さを改めて感じました。勝ち負けではなく、自分がやってきたことを信じることが一番大事だと学びました」と語る。

 

 

 

その他の選手も、「自分のサーフィンを客観的に見る重要性」「負けた直後に改善点を指摘されるありがたさ」「ジャッジの評価基準を理解する視点」などを学び、技術だけでなく心構えも変わったことを実感していた。

 

 

パターソンはテクニックや戦略の前に「基本を大事にしろ」と繰り返す。道具の準備や波選び、ジャッジの視点、負けから学ぶこと。

採点競技だからこそ、ジャッジの評価する演技を理解して挑むべきだと説き、その言葉には世界トップを相手に勝ち抜いてきた経験に裏打ちされた説得力がある。

 

松岡亜音
池田美来
松田詩野

 

田原での8日間は、選手たちにとって大きな転機となるだろう。大会は松岡亜音が3位、池田美来が5位、松田詩野 25位、須田喬士郎 49位、岡野漣 65位と結果となった。

 

すぐに成果が現れなくとも、心と技術の深い部分で必ず花開くはずだ。朝から晩までサーフィンだけを考え、世界のトップコーチと濃密な時間を共有した経験は、間違いなく次のステージへの推進力となるだろう。