
2024年、日本のプロサーフィンツアーは「S.LEAGUE」として新たな一歩を踏み出した。最大の変化は、トップカテゴリーの「S.ONE」と、その下部ツアーにあたる「S.TWO」という2部リーグ制の導入だ。
この新システムは何を目指し、選手たちに何をもたらすのか。S.LEAGUE 25-26シーズンのS.ONE スタートを前に、S.TWOが千葉県の井戸野浜オープンで開幕し、現場で指揮するディレクターの田中樹氏に話を聞いた。
「プロの価値向上」が最大の目的
S.ONEとS.TWOへの分割は、何よりも「プロサーファーの価値を高める」ことを目的としている。ディレクターの田中樹氏は「人数を絞ることで、より良い波のコンディションで大会を開催し、イベントとしての質を担保したい」と語る。
S.TWOは、アマチュア選手がプロを目指す「トライアル」のラウンドと、既存のプロ選手が競うラウンドで構成される。
このシステムは、世界プロサーフィン連盟(WSL)のCS(チャレンジャーシリーズ)とCT(チャンピオンシップツアー)の関係性にも似ており、国内ツアーのレベルと価値を体系的に引き上げる狙いがある。
S.ONEは世界への登竜門、S.TWOはサバイバル
S.TWOは、S.ONE昇格をかけた「サバイバル」の場となる。一方でS.ONEは、選手たちが目指すべき「魅力的なツアー」であり、若手選手が世界へ羽ばたくための「登竜門」としての役割が期待される。
「せっかくプロになったのだから、上を目指してほしい。ただプロ資格を取って満足するのではなく、向上心を持って挑戦し続けてもらいたい」と田中樹氏は熱を込める。

世界への道と国内ツアーの役割
現状、S.LEAGUEから世界ツアー(WSL)へ直接つながるシステムはない。あくまでアジア圏のナショナルツアーという位置づけだ。
しかし、S.ONEで活躍することで選手の認知度や価値が高まれば、スポンサー獲得など、世界へ挑戦するための経済的な「手助け」になる。国内で完結する質の高いツアーがあることで、若手選手の育成や強化にも繋がると田中氏は語る。
具体的なツアー運営と今後の展望
S.TWOでも賞金は設定されており、男女、種目(ショート/ロング)を問わず優勝賞金は10万円(第2位80,000円 / 第3位 40,000円 / 第4位 20,000円) が用意される。今後、スポンサーがつけば賞金が増額される可能性もある。
ヒート時間の15分というのは、昨年度のSリーグトライアルと変わらず、アマチュアラウンドは15分でプロラウンドは20分と変わらない。
また、井戸野浜オープンはショートとロングの合同イベントだったため、ダブルバンクでの開催となったが、基本的にはワンバンクでの開催を考えている。しかしトライアルに関してはプロアマオープンラウンド。人数が多かったらツーバンクの可能性はある。
田中樹氏は「S.ONEは、選手が最も望む『良い波』で試合をやりたい」と語り、その実現に向けて準備を進めている。将来的には「選手がサーフィンだけで生活できるようなツアーに育てていくこと。」を大きな目標に掲げている。
「そのためには選手の協力だったり、周りの協力がないとできないと思う。自分たち役員だけが頑張っても何も先には進まないので、そういう協力を基にやっていきたいと思ってます。 」と語った。
S.ONEツアー出場選手数
- ショートボード男子:上位29名
シード選手7
36名
- ショートボード女子:上位13名
シード選手5
18名
- ロングボード男子:上位22名
シード選手2
24名
- ロングボード女子:上位10名
シード選手2
12名
※シード選手はワールド/スポンサー/ローカルシード等
翌シーズンのS.ONEツアー残留とS.TWO降格選手
- ショートボード男子:S.ONE29名のうち上位18名が残留、下位11名がS.TWOの上位11名と入れ替え。
- ショートボード女子:13名のうち上位8名が残留、下位5名がS.TWOと入れ替え。
- ロングボード男子:22名のうち上位16名が残留、下位6名がS.TWOと入れ替え。
- ロングボード女子:10名のうち上位6名が残留、下位4名がS.TWOと入れ替え。
新しく生まれ変わったS.LEAGUE。この改革が日本のサーフィン界にどのような変化をもたらすのか、今後の展開から目が離せない。
さわかみS.LEAGUE 25-26 S.TWO開幕戦「井戸野浜オープンで岡野漣、石田海夏、高貫佑麻、吉川広夏が優勝。15名がプロ資格。