ISA World Junior Surfing Championshipで健闘した波乗りジャパンが帰国。河村&大村コーチが大会を総括

5/3(金)-12(日)の日程で「2024 ISA World Junior Surfing Championship」。4月に行われたISAロングボード世界大会に続く形で、今度は世界のジュニア選手がエルサルバドルに集結。昨年の大会がブラジルで11月末に行われてから、僅か、約半年というスパンでの開催となった。

 

昨年の大会で、女子としては初めて金メダル(U-18ガールズ:1位)となった松岡亜音やカッパーメダル(U-18ボーイズ:4位)の岩見天獅の活躍もあり、国別団体で3位の銅メダルという成績だった日本。

 

今年度はその松岡、岩見が卒業。それでも新たな新ジュニアチームは、2022年の同会場で銅メダル(U-16ガールズ:3位)を獲得した池田美来を筆頭に、世界選手権大会への出場経験者を揃えて臨んだ。

 

後列(左から):小野里弦、渡邉壱孔、長沢侑磨、岡野漣、髙井汰朗、足立海世、河村海沙コーチ、大石純也監督 前列(左から):大村奈央コーチ、石井有沙、清水ひなの、高橋花音、森舞果、池田美来 (松野杏莉はアメリカ遠征で不在)

 

その新生「波乗りジャパン」の国別順位は5位。メダルはチームキャプテンの渡邉壱孔のカッパーメダル(4位)一人という結果となった。しかし、メダルは逃したものの、各クラスで足立海世、松野杏莉、石井有沙らが健闘を見せ順位を押し上げた。

 

大石純也監督からは「波乗りジャパン」にエールを送った。

 

それだけでなく、今大会では選手全員が最後まで自分の持てる力を発揮したこと。チームでメダル獲得のために戦ったことは、今まで気づかなかった自分の力を改めて知る機会にもなったはずだ。この経験がこれから世界で戦うために役立つことは、間違いないだろう。

 

NSA 副理事長、強化本部長の佐藤正麗穂氏から「波乗りジャパン」に激励の挨拶。

 

協会のスタッフをはじめ、選手のご両親や友人が出迎える中、その若き「波乗りジャパン」とコーチ、スタッフらが、5/14(火)に、成田空港に帰国。

 

笑顔でメダルを日本に持ち帰った渡邉壱孔
今回女子のキャプテンを務めて頑張った池田美来

 

今大会の日本最高位の4位でメダリストとなった渡邉壱孔に、そのメダルの色が掛かったグランドファイナルの戦いについて、改めて聞いた。

 

渡邉壱孔

 

必ず次に繋げて勝てるように頑張ります。

 

「その前のR-6では2本しか乗っていないんですけど、海沙コーチとの作戦が当たってラウンドアップできました。それもあって、1本目はライトの波と決めていたんですけど、グーフィーに行ってしまったことで、相手に流れが行ってしまったことが大きな敗因でした。

 

オーストラリアのフレッチャー・ケレハー(準優勝)がグーフィーで、デーン・ヘンリー(優勝)がライトの波を乗っていて。それに振り回されちゃって、どこで待てば良いかわからなくなってしまって。ヒートは30分あったので、いろいろ動いていたんですけど(波を)取りに行くと逆だったりと、それで時間を使ってしまって。

 

やはり、決勝まで行くと少しのミスでも立て直すことが、すごい難しいことを身にしみて感じました。でも、これを経験できたので、必ず次に繋げて勝てるように頑張ります。」

 

また、今回でISAジュニアの卒業となる渡邉壱孔は、今月末からのインドネシアのクルイ、ニアスで開催されるWSLに参戦。また、同時開催のプロジュニアにもエントリーして、ジュニアの世界大会「WJC」にも挑戦したいと語ってくれた。

 

 

 

そして、今回、初めてコーチングとして帯同した河村海沙プロ、大村奈央プロの両コーチにも、この世界大会の総括を聞いた。

 

河村海沙

大きい波に乗れないのではなくて、大きいボードをコントロールすることに慣れていない。

 

普段からトッププロ、アマのコーチングを受け持っている河村海沙コーチは、今の日本のジュニアの現状と課題をこう語る。

 

「初めてコーチとしてエルサルバドルに帯同させてもらって、団体総合のランキングが日本は5番ということで、4番までならメダルを取ることできたんですけど。あと一つが届かなかったという結果でした。

 

日本チームとしては、やれることほとんど全てやったと思います。ただ、この結果、これが日本の今の実力だと実感させられました。今回、エルサルバドルは波のサイズがあったんですが、その対応が十分ではなかった。

 

もともと、日本は波が小さいことが多いので、ジュニアの選手が普段から練習しているのはそういう波です。小波が得意と言うか。だから、ビッグウェーブというか、大きい波に対しての練習は確実に必要だと思います。

 

今回、優勝したオーストラリアの選手たちは、大きい波、ハードなコンディションに耐えることができる体力、フィジカルがあって、メンタルも備えていました。日本はこれから強化合宿であったり、練習方法を変えたりして、そこを補うことができれば、世界でもっと戦えるようになると思います。

 

大きい波に乗れないのではなくて、大きいボードをコントロールすることに慣れていない。それだけなんです。実力差はジュニアであれば、海外とそんなに差はないです。もちろん、上手い選手はいますけど、日本もそこをやれば、決勝には行けるし、団体のメダルは取れるだけの実力はあると思います。

 

あと、この大会に参加した12人の選手のうち、半数以上が、あとちょっとというところで負けてしまった。グーフィーではなく、レギュラー行けば勝てたのにというような、一つの選択ミスなんですね。そこは経験値なんだと思います。そこもこれからの課題ですね。」

 

 

大村奈央

 

これから世界を目指す子たちは、たくさんの波に乗ることが必要だと思います。

 

 

選手としても多く参加し、ISAでの戦い方を良く知る大村奈央コーチは、この日本チームのこと、特に女子ジュニア選手についてこう述べた。

 

「今回、日本で代表選考が決まってから日数が無かったんですけど。このチームは2週間という期間にどんどん良くなるチームで、伸びしろがすごくあったので、5位という成績まで行くことができました。

 

団体は本当に僅差でメダルまでは取れなかったんですけど、頑張ってない人はいなかったし、大会中もサーフィンがどんどん上手くなっていましたし。試合もすれば、するほど良くなっていました。みんなすごく悔しいと思いますけど、一生懸命やった結果なので誇りに思って、これからもやっていってほしいと思います。

 

ただ、みんな上手だから勝つことはできるけれど、トップの優勝した選手とかと比べると、まだまだ足りない部分はあります。今回、エルサルバドルという日本とはだいぶ違う波で、そこで大きい波に乗れたりとか、パドル力だったり、そういう波でレールサーフィンができるのか。

 

特に女子のジュニア選手は最初に会場に着いた時、雰囲気に圧倒されて波に乗れないとか、(練習している)選手が多いし乗れないとか。それとポジションとかがわからなかったりとかすることが多く見られます。

 

なので、一緒に海に入って海と陸からの景色を覚えさせたり、どの波を追いかければ良いか、波に乗るリズムなどを教えます。男子は波に乗れるけど、女子は乗れなかったりするのは筋力、パドル力の差だったりしますけど、やはり、そこも経験なんですよね。

 

これから世界を目指す子たちは、世界中にいろいろな波があるので、下が砂や岩だったり、波の分厚さもそれぞれ違ったりと、本当にたくさんの波に乗ることが必要だと思います。」

 

 

ジュニア選手の育成が今後の課題。

 

7月にはフランスでパリオリンピックが開催。その後、2028年アメリカ、2032年オーストラリアとサーフィン強国の会場で行われることが決まっている。ここで戦う世代を考えると今のジュニア選手が各国とも重要な鍵となることは間違いない。

 

世界ではジュニアの育成を国単位で行い、特にアジアでは中国が選抜している選手はすべてジュニア世代で占め、波のある海外へ選手を派遣して経験を積ませていると言われている。アジアの盟主であった日本も今は追いつかれ、追い越される状況もすぐそこまで来ている。

 

改めて日本も選手育成、特にジュニアの育成については、一から構築し直す必要があるだろう。どれだけ未知の波の経験を増やすことができるのか。またシチュエーションの判断を試合から学ぶなど、すべての経験値を高めることが求められる。

 

さらに今回、コーチも男女1人ずつ派遣できたことは、ジュニアの女子選手にとっては大きな支えとなった。ジュニアに関しては、コーチングの男女の役割分担なども再考する必要があるだろう。

 

 

2024 ISA World Junior Surfing Championship
 
U18 Boys
渡邉 壱孔: 4位
長沢 侑磨: 33位
小野 里弦: 65位

U16 Boys
足立 海世: 6位
岡野 漣. : 29位
髙井汰朗 : 33位

U18 Girls
松野 杏莉. : 9位
池田 美来. :13位
清水 ひなの:13位

U16 Girls
石井 有沙 : 9位
高橋 花音 :33位
森 舞果. :49位

国別団体 : 5位


 

●大会名称 :2024 ISA World Junior Surfing Championship
●開催期間 :2024年5月3日(金)~12日(日)

●開 催 地 :Surf City El Salvador El Sunzal/La Bocana
●主 催. :International Surfing Association

ISA HP  
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NSA HP NEWS   
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