先日カリフォルニアのハンティントンビーチで開催された「ISAワールド・サーフィン・ゲームス」で金メダルを獲得した五十嵐カノアが乗る「シャープ・アイ・サーフボード」の創始者でありシェイパーのマルシオ・ゾウビ氏が来日。
今回は、マルシオ・ゾウビ氏の来日に合わせて、今年9月よりシャープアイ・ジャパン代表となった五十嵐ツトム氏とのトークショーがオッシュマンズ原宿店にて開催された。
サーフメディアでは、シャープアイ・サーフボード創始者マルシオに独占インタビュー。今回の来日目的や シャープアイ・サーフボードの展望や目標について話を聞いた。
今回の来日の目的をお聞かせください。
マルシオ:日本に前回来た時から、ずいぶん時間が経ってしまったので、日本のサーフマーケットやサーフショップの状態などを知りたいと思いました。それと上手くいけば工場を作りたいと思っていて、日本でプロダクションを完成できればと思っています。
日本から多くのCTサーファーが生まれるバックアップをしたい。
新しいシャープアイ・サーフボード・ジャパンとは?
マルシオ:チームライダーである五十嵐カノアを通じて、リレーションシップをカノアの父親であるツトム(五十嵐勉氏)と持つことができた。そして、それを機に日本でのビジネス展開をもっと円滑に行くように、その手助けをしてもらうことになったんです。
日本のマーケットはとても大きく、サーフィンレベルは非常に高くなってきています。
我々が提供しているボードは中級以上から上級レベル向けです。私が見てきたサーファーのなかにも非常レベルの高いサーファーが多くいます。だから私たちがサポートして、サーフボードで日本からもっと多くのCTサーファーが生まれるバックアップをしたいんです。
サーフボードメーカーの多くは、ロングボードやミッドレングスなど様々なレベルのニーズに対応するボードを多く販売していますが、シャープアイは違うんですね。
マルシオ:私たちが常に考えているのはハイパフォーマンスができるサーフボードを作ること。それを追求したい。そのボードをサーファーに提供したい。そこに常にフォーカスしているんです。
多くのビッグブランドがCTサーファーをサポートしていますが、そのシェイパーたちは11回あるCTイベントをほとんど見に来ていない。私は今年8つのイベントに行きました。
そこで世界のトップであるチームライダーがどんなパフォーマンスを見せているのか現場で感じるんです。どんな波でどんなことを感じるのか常にフィードバックを得て、次の年のためデータを取るんです。データを取るのは現場に行くことが一番大切です。それがシャープアイなんです。
ハイパフォーマンスをしたいサーファーに伝染して行った。
シャープアイは90年代に日本でも販売行われていました。その時は今のように世界中のトップサーファーが乗っていませんでしたが、どんなきっかけで世界のトップブランドになったのですか?
マルシオ:この状況に私自身も驚いています。自分たちの良いライダーたちが自分のボードでパフォーマンスすることによって、多くの人々が知ることになり、それに乗ってみたい、そんなサーフィンがしたいとハイパフォーマンスをしたい願望を持っているサーファーに伝染して行ったんだと思います。凄いパフォーマンスをするサーファーのボードはすぐに注目されるんです。
CTサーファーにとってサーフボードは非常に重要でセンシティブ。誰かが良いパフォーマンスすると、サーフボードを見せてくれと言ってきて、自分もこんなサーフボードを作ってもらいたいとシェイパーにリクエストしたりするんです。
ハイパフォーマンスができる勝てるサーフボードのシェイイパーは誰なのか。結果として、そうなったんだと思います。
シャープアイといえば、フィリーペ・トリードのイメージが強いんですが、彼とのリレーションシップが最も大切なんですか?
一般的にはチームライダーとのリレーションシップは誰も同じです。確かにフィリーペとのリレーションシップは簡単だったのも事実です。彼はブラジルからサンクレメンテ(カリフォルニア)に移住して、私のサンディエゴからも近かったし同じブラジリアン同士だったのもあって良いリレーションシップを持てました。
カノアが初めて契約した時にカノアが言ったのは、『僕のためにフィリーペより良いサーフボードを作ってくれるか?』って聞かれたんです。僕はカノアに『僕は全てのライダーに同じ目で同じものを提供したい。誰のだからという差別はしないで、僕は全てのライダーに同じクオリティを提供する』と言ったんです。
国籍に関係なく、全てのインターナショナルライダーは同じように扱っています。フィリーペがブラジリアンで、同じポルトガル語で話せたりというのはあるけれど、ジャック・ロビンソンだって、カノアだってリオ・ワイダだってみんな同じ自分のチームライダー。同じクオリティのサーフボードを常に提供しています。
フィリーペのモデルも多いですが、今の話からすると今後、他の彼らのシグネチャーモデルみたいなものがリリースされるということですか?
マルシオ:ストームズはカノアのシグネチャーモデルですが、ジャック・ロビンソンのモデルも今後作っていこうと思っています。
カノアが金メダルを取ったときのDark Arts Epoxy(フルカーボン素材)が話題です。ホームページには掲載されてませんが、どんなサーフボードで、今後の展開は?
マルシオ:Dark Arts Epoxyは、違う会社なんですよ。パテントを取っているコンストラクション(構造)なんです。デザインではないんです。簡単に言うと自分がシェイプしたボードを渡して、それが指定された工場でカーボン・ラミネートされて戻ってくるという感じです。
90年代からある製法は新しいものではないですが、カーボンは耐久性を重視して開発されましたが、ダークアーツは異なったコンセプトで更なるハイパフォーマンスをするために開発されたんです。だからビギナーには違いはわからないが、ハイレベルのサーファーには違いがすぐにわかると思います。
日本で人気のシャープアイですが、今後契約ライダーを増やしていく予定はありますか?
村上舜や酒井仙太郎、飯田翔斗など素晴らしいライダーがいますが、どんどん新しい才能に対して投資していくつもりです。
シャープアイサーフボード・ジャパンの今後の活動について教えてください。
ツトム:いまは仮のウエアハウスが千葉にあるんですが、そこをベースにセールスとかを強化していこうと考えています。自分は基本カリフォルニアですが、カノアのサポートもあったり、日本へは去年も7回ぐらい来ているし、頻繁に来ています。
今回は滞在中にマルシオを日本のサーフボードファクトリーに連れて行って、日本のクオリティを見てもらって、マルシオが吸収するものもあるだろうし、マルシオから日本のファクトリーが吸収するものもあるかもしれない。そんなリレーションシップが出来たらなって思っています。
今後のシャープアイが進んでいく方向を教えてください。
マルシオ:30年前にスタートして、その時は私のサーフボードに乗ったサーファーがワールドタイトルを取るとは思ってもみなかった。時間をかけて経験を積んできた証です。
サーフィンは楽しむために色々なタイプのボードがありますが、自分のコンセプトは、ハイパフォーマンスボード。CTで優勝できるサーファーを育てること。私はライダーの要求に応えるサーフボードを、どんどん作って、CTで活躍するサーファーを増やしていきます。
F−1のレースをみても、そこのエンジニアがレースに参戦して勝った車をよく研究したりしています。いまはCTイベントに行っても、自分のライバルであるシェイパーは誰もいない。現場に来ていない。
CT選手はミリ単位以下の微妙なボードのクオリティを求めている。それを提供し続けることが自分の使命だと思っています。
実際のところ、プロアマ問わず、日本のどんな試合でもシャープアイの板に乗っている選手を多く見かける。
マルシオが言っているように、選手であれば、良いパフォーマンスをして勝っているサーファーが使っているサーフボードを誰もが使いたいと思うはずなのだ。
今回のインタビューでは、シャープアイが今後の日本のコンペシーンを変えていく可能性を感じずにはいられなかった。今後の展開に期待したい。
取材協力:シャープアイ・サーフボード・ジャパン
https://sharpeyesurfboards.jp/