Photo & Text 米地有理子
千葉県いすみ市で毎年開催され、今年で17回目となるサーフタウンフェスタ。昨年は新型コロナウイルスのパンデミックにより中止されたが、今年は新型コロナウィルス感染症感染拡大防止ガイドラインをもとに何ができるか、何をしたら有意義なイベントになるかが、実行委員会で検討された。
そして、イベントの行われる太東海岸において大会エリアをネットで仕切り、入り口で検温、消毒を実施した中で、千葉県内の小学生サーファーの大会を小規模に行うという初の試み、『 1st SURF TOWN FESTA KIDS CONTEST 』を開催することとなった。
コロナ禍により、子供たちが楽しめるイベントも縮小され、サーフィンの大会も少ない状況の中で、いすみ市周辺はサーフィンを頑張る子供たちも多いことから、少しでも子供たちを盛り上げたいと考えた結果だ。
また、いすみ市ではサーフィンを体験する「いすみ市Jr.サーフィンスクール」が毎年行われており、コンテストがサーフィンを始めた子供たちの次の目標ともなることから、このコンテストを次のステップとして根付かせていきたいという思いもある。
そしてこのイベントが、未だ続くコロナ禍における各種イベントのモデルケースともなるように挑戦しようと実行委員一同が一丸となって取り組んだコンテストとなった。
6月6日(日)の大会当日は朝から太東海岸は波もほどよくあり、多くのサーファーが海に来ていた。大会エリアは一般用の駐車場とは別に選手用の駐車場を設け、選手家族が次々に集い、会場の入場開始を待っていた。
入場が開始されると、会場の入り口で検温、手指の消毒、名前のチェックが行われ、選手や家族が入場、会場内はマスク必須だ。選手には記念品のサーフタウンフェスタのビーチタオルが渡された。
ビギナークラス(立って横にいけるレベル)が16名、オープンクラス(技ができるレベル)24名、申込全員の参加となった。開会式はまず最初にライフガードによる準備体操、太田いすみ市長、岩瀬いすみ市体育協会会長より挨拶があり、友重実行委員から感染防止の為の注意事項の説明、小川ジャッジ委員長から競技についての説明が行われた。
そしていすみ市の小学校6年生の友重リキくんによる選手宣誓が行われ、競技がスタート。開会式終了を待つかのように小雨が降り出したが、小さいながらも勇敢に波へと挑む選手たちはゼッケンをつけて、今日の舞台へと向かって行った。
波は腰腹ぐらいのライトブレイク中心、子供たちには十分なサイズで、普段はロングボーダーで賑わうブレイクが子供たちに貸し切りとなった。海にはライフガードのジェットスキーが待機し、選手たちは太東海岸の特色である堤防脇からエントリー。1ヒート15分、最大8本までのベスト2ウェイブで競い合った。
雨の中ビーチでは、家族やコーチたちが選手たちに声援を送ったり、次の選手がアドバイスを受けていた。ビギナークラス、オープンクラスともに白熱したヒートが展開され、レベルの高い試合となった。
負けた選手は本当に悔しそうで、子供たちが日頃いかに真剣にサーフィンに取り組んで来たことを垣間見た気がした。使用したゼッケンは選手自らハンガーに掛けて返却という形を採用し、使用したゼッケンは1回ごとに水洗いをして使用。
ゼッケンを着けてから保護者たちが「頑張って来いよ」とゼッケンの後ろを縛り、縛り終えると子供たちが海へと走って行く光景が微笑ましかった。
時折雨も強くなり、波もサイズが上がって来たりしたが、雨にも負けず頑張る子供たちの姿、そしてそれを見守る大人たち。サーフィンコンテストのヒートの1シーンが、まるで人生を物語るような素敵な一幕に映った。
各クラスのファイナルが無事終了し、結果発表の表彰式。表彰式に合わせたかのように雨が止み、大会の無事終了を祝福するかのように青空が広がり始めた。優勝者にはチバフォルニアサイクルより自転車が賞品として提供され、ファイナリストには真心こもった手づくりの楯といすみ市よりいすみ市米、スケートボード等の賞品が用意された。
市長より閉会の言葉が述べられた後、各クラスのファイナリストが壇上にあがり、4位、3位と発表された。そのたびに観客からどよめきがあり、残された2名の中でいよいよクライマックスの1位の発表となる。
1位の名前が発表されると、優勝者はガッツポーズ、会場は大きな拍手で包まれた。賞品が手渡され、記念撮影の後、山田実行委員長より挨拶があり、「来年も大会やりたい人ー?」の呼びかけに子供たちは「はーい」と元気に手を挙げていた。
大会ができない状況の中でチャンスを与えて頂き感謝しかありません。
選手の保護者やコーチとしてプロサーファーも多く参加しており、終了後に何人かに大会の感想を聞いてみた。
「なかなか大会ができない状況の中でチャンスを与えて頂き感謝しかありません。自分もいすみ市住民で、地元の海で地元で教えている子供たちが参加できて、一つの目標にできてよかったです。この大会が終わって、子供たちに課題もできたと思います」(田中樹プロ)
「コーチングしている子供たちが自分の力を発揮できる環境が昨年はなかったので今年はよかったです。子供たちに教えることで自分が示していく立場になり、負けられないという感じで、自分の試合に対する取り組みが変わりましたね」(西慶司郎プロ)
子供たちがサーフィンに参加できる環境が増えるといいですね。
「すごくいい大会でした。こういう活動が周りの市町村にも広まって、子供たちがサーフィンに参加できる環境が増えるといいですね。今日来ていたサーフィンやっていない子もやってみたいと言っていたので、こういうことがサーファーを増やしていくと思います」(舟橋大吾プロ)
「大会最高でしたね。ぜひ続けてほしいです。レベルが高くて見応えがあったし、毎年やっていくと子供たちも成長していくと思います。参加費も無料で、コロナ禍の大変な時期にとっても良かったですよね」(原田正規プロ)
「楽しかったですね。父親的にも。子供たちが太東を貸し切りでできてすごいですよね。コロナ禍じゃなかったら、サーフィンの大会の他にも海で遊べることを広められたらいいですね。今の状況の中ではベストな感じでできたのでは。中学生のクラスもできるといいですね」(佐藤千尋プロ)
その他、保護者から「コロナの中で有り難かった」「みんないい顔していました」などの感想をもらった。
また、子供たちにも感想を聞いてみると、皆口々に「楽しかった」「また出たい」「悔しかった」などと言っていた。
サーフタウンフェスタで初となったキッズサーフィンコンテストの開催をとおして、子供たちの真剣な眼差し、マスクをしながらも溢れる笑顔に大人たちは元気をもらった。
大人たちが子供たちの未来を考えて行動していけば、不安定でなかなかゴールの見えないコロナ禍もみんなで希望を持って乗り越えていける気がした。来年のキッズサーフィンコンテストが今から楽しみだ。
※撮影上、マスクを外している写真もありますが、会場内はマスク必須でイベントは開催されました。
【大会結果】
ビギナークラス
優勝 山田青空
2位 舟橋暖人
3位 原田海真
4位 町井小波音
オープンクラス
優勝 鈴木慈英
2位 橋本大河
3位 石山汰一
4位 友重リキ