写真、リポート:永島未知子 アングレット、フランス
WSLヨーロピアン・サマー・レッグの第3戦、QS1500「Pro Anglet」がフランスのアングレット、シャンブルダムールでスタートした。大会初日となる本日は事前の告知通り、メンズのR1から行われた。
「サイズがあるときの湘南のような波」だった(川俣海徳談)という先週のラカナウに比べ、本日シャンブルダムールの波はセットでコシハラ程度。移動日となった週末に波が上がった事が悔やまれるが、どの選手にとっても条件は同じ。
とはいえ波に関して主催者側も懸念を抱いたようで、最初は通常通り1バンクで行われていたのが、途中から急遽2バンクの同時進行になった。つまり自分のヒートまでの待ち時間がいきなり短縮されたことにもある。
「2バンクでやるの知らなくて、(野呂)海利たちが借りてる会場近くの部屋でゆっくりさせてもらってたら、ヒート始まるよって! 教えてもらって急いで戻ってきた」と川俣海徳(かいと)。お約束のようなドタバタ劇を経て、焦って来たのだろうが、その割に平然とした様子でもある。
その川俣海徳(かいと)のラウンド2、ヒート1が日本人として今大会初のヒート。
波のサイズは変わらず小さく、身長178cmの川俣海徳にとってはもっと小さく見えるだろう。11時45分の干潮に向かって、また新月のタイミングも重なったことで潮の満ち引きの影響はいつも以上に大きく、どんどん潮が引いていく。波の割れる手前まで歩きながら入水していった。
ヒートが始まるとすぐセットが入り、他の選手に続いて川俣海徳もさっそくグーフィの波をゲット。うまくまとめられはしなかったが、変な緊張感はない。それからセットが入るたび、積極的に波に乗りヒート中盤で暫定2位につける。後半に入るとポジションを移動しながら、終了まで果敢に攻める。そしてその順位のまま20分が経過し、2位でラウンドアップを果たした。
「ギリギリでした〜」と上がってきた海徳。陸から試合を見ていた田中大貴が「でも一番乗っていたし、波を探して動いていたのも良かったよ」と勢いをキープできるようなコメントをする。本人は聞いて(効いて)いるのかいないのか「次、負けるかも俺・・・」。その一言を聞いたまわりの大人が思わず爆笑してしまいました。なんて屈託のない!
次に登場したのは粟田生(なる)。同じくラウンド2で、ヒート6。生(なる)は去年この大会に参戦した粟田海(かい)の弟で、今年は兄弟揃っての参戦となる。
潮まわりはちょうど干潮のタイミング。気温も朝より上がり、空気は湿気を含んで重たい。夏のまどろみを帯びてきた会場雰囲気の中、入水前にビーチで整える生。
レギュラーの波に乗る選手が続くなか、粟田生が1本目に選んだのはグーフィ。波と自分のサーフィンの相性を確かめるようなライディングだったが、2発技を入れることができ4.17ポイント。しかしそこから生は狙って乗るも、ポイントとなる1本が出ない。セット間隔が長くなり、残り時間5分のところでレギュラーにテイクオフ。
相変わらずの小波だがそのサイズ、波の性質を見抜くと178cmという長身の身体をコンパクトにしたり、伸ばしたりと自由自在に操りながら加速し、キレのあるサーフィンを披露。技を2発入れMCから「Nice Finish !」とアナウンスをもらう。そして5.63ポイントとバックアップを伸ばし、ラウンドアップに必要なスコアを5.00と射程範囲内にまで縮める。しかし少し遅かったのだろう、惜しくもタイムオーバーを迎えてしまった。
粟田生(なる)「バックアップとなる1本が乗れていれば勝てた。早い段階の波選びがもったいなかった。もう少し(最初から)がっつり乗っていれば。ヨーロッパレッグは1戦目のイギリスで勝てなくて、2戦目のラカナウで、試合運びができて勝てた。その勢いのまま(アングレットでも)勝ちたかったけど。でもいい経験になりました。次に気持ちを切り替えます」
ヒート直後に関わらずとても冷静な感想。この春に高校を卒業した年とは思えない対応だが、慣れているのかもしれない。ただ「映像を撮っているので夜、宿に帰ってそれを見直したとき、悔しさが強く沸き起こるかもしれない」とも言っていた。この春に高校を卒業したの? とこちらが聞いたとき、自分のことにも関わらず近くにいた兄の海(かい)くんに「そうだっけ?」と確認するあたり、その年齢らしさであり、弟らしさも垣間みれた。
生(なる)くんのヨーロッパレッグはこれで終了。残りの滞在日程はフランスで思い切りサーフィンを楽しんでください! 次は日本に戻り茨城で行われるJPSA第5戦に参戦予定とのこと。
大会2日目の明日、23日はファーストコールが現地時間7時30分(日本時間14時30分)。メンズのラウンド3から行われる予定だ。ヒート2には本日勝ち上がった川俣海徳、続くヒート3には生(なる)のリベンジ、また昨年のリベンジも果たしてほしい粟田海(かい)、ヒート5にはシードでここからの登場となる田中大貴、ヒート9には同じくシード、好調の野呂海利が登場。
また男子ラウンド3の後には女子のラウンド1が予定されている。こちらはヒート2に橋本恋、ヒート12に田代凪沙、そして最終ヒート16に野呂玲花がクレジット。波のサイズは本日同様に小波といわれるが、そんなのお構いなしなぐらい、明日は大忙しな一日となるだろう。
試合終了後フリーサーフィンに向かった野呂海利と川俣海徳。同じタイミングでプロになったらしい。早生まれなので学年は海徳のほうが上だが、同じ1999年生まれの2人
出番のないとわかった野呂海利と粟田海の2人は選手の控えサイトに設置されているゲームでリラックス
他の国の選手と談笑する粟田海。海外を回っていると知り合いが増える機会に溢れている
オフィシャルサイト:
http://www.worldsurfleague.com/events/2017/mqs/1925/pro-anglet