フランス現地レポート。野呂玲花、5位でフィニッシュ ! 田中大貴は惜しくもR3突破ならず

フランス現地レポート。野呂玲花、5位でフィニッシュ ! 田中大貴は惜しくもR3突破ならず 


今回もQF進出を果たし5位となった野呂玲花

 

アングレット、ペイバスク、フランス、2016年8月26日金曜日:フランスのアングレットで開催中のWSL−QS1500「プロ・アングレット」3日目。

 

予報のとおり前日に比べ波のサイズは全体的にダウン。大きいものでセット胸肩。面もボヨボヨ気味と点数を出せる波を見つけるのが難しそう。会場の雰囲気は大会3日目ともあり、それまでにあったお祭りのような浮ついた感じは薄まり、落ち着いたよい緊張感へとシフト。トップシード選手の登場もそれに一役買っているのだろう。

 

田中大貴

 

 

最初の日本人選手の出番はメンズの田中大貴。R3の最終ヒートに登場した。前日に「以前から戦ってみたかったワード・カルマイケル選手と当たれるのが楽しみでしょうがない」と語っていた田中。それがそのカルマイケルに終盤マークされることになろうとは、想像していただろうか。

 

カルマイケルにマークされる大貴

 

 

ヒート開始後、口火を切ったのは今回も田中。レフトの波で前半から積極的にライディングを重ねていく。しかしポイントを出したのはライトの波に乗っていたギレルモ・サット選手。そのままサットがリードを広げていく形で、試合の焦点はカルマイケルと田中による2位争いへと向けられた。

 

残り時間10分、ここから試合の後半戦となる時点で田中が逆転に必要なポイントは4.38。射程圏外ではない。しかしその後、カルマイケルもバリエーションに富んだ技、迫力のあるスプレーと、これまでの試合で培ってきたキャリアを感じさせるライディングでスコアを伸ばし、田中を引き離しにかかる。

 

残り時間3分。逆転に必要なポイントは7.4までに広がった。追い打ちをかけるようにそこからはカルマイケルが優先権を持って田中をマークしにかかる。終了間際、入ってきたセットの波に田中が乗ろうとしたが、その同じ波をカルマイケルもテイクオフ。優先権はカルマイケルなので当然、田中はその波を譲るはめに。結果、カルマイケルはR3突破を確実にしただけでなく、自身のポイントスコアも伸ばし、1位での通過を手にした。悔しいが、敵ながらアッパレな戦い方だった。

 

—試合終了後、本人に話を聞いてみた。

 

「最後ずっとマークされていて、プライオリティも向こうが持っていた。自分が移動したときにもついてこられて。最後の1本もやっぱり乗られて…」

 

—しかし変な話、対戦してみたかった選手にマークされるというのは?

 

「ほっとかれるよりかは嬉しいというか、認められた、というか一人の選手として見てくれたのかな。でもやっぱり勝つ気でいたから…(悔しい)。(敗因は)

強いて言えば、前半で変な波に乗り過ぎた。カルマイケル選手は待っていい波に乗っていたなと。波のセレクトを冷静に判断できていれば、また変わっていたかも。そこが反省点」

 

—大貴くんのヨーロッパレッグはこれで終わりですが、今後のご予定は?

 

「29日に羽田についてそのまま茨城で開催されるJPSAへ。次の週は湘南、それでまたポルトガルでジュニアの世界大会があるのでヨーロッパに戻ってきます。帰国したら伊勢、日向、そこで2日くらい学校に行けるかなと。それからJPSA最終戦の仙台へ」

 

—現役の高校3年生とは思えないスケジュール。そんなに後が詰まっているならすぐに切り替えないとですね。

 

「このヨーロッパの試合で得たことを次の茨城であるJPSAで生かしたいです。それが楽しみです」

 

 

野呂玲花

 

 

メンズR3が終わると始まったのがウーメンズのR3。ヒート1から期待の野呂玲花が登場。だがこのヒートの対戦相手は有名選手が名を連ねていた。1つ前の大会で優勝し好調さをキープするエラ・ウィリアムズ、元CT選手でプロ・アングレットの前回優勝者でもあるポーリン・アド。偶然にも野呂を含めたこの3名、同じリップカールにスポンサーされているチームメイトともいえる。

 

その野呂のR3、序盤は波に恵まれず4位に位置していたが、後半に入りポジションを左側へ移動。それが功を奏したのかレフトの波をキャッチすると、迫力のあるリエントリーを2発。MCからは「That’s looking good」の声が届く。点数も7.33ポイントがつき一気に2位へとジャンプアップした。そこから試合終了まで順位を守りR3を通過。無事、野呂の舞台はクォーターファイナルへ続くことに。

 

「勝てると思わなかった、全然緊張しなかった」というレイカちゃんに、試合を見守っていたお母さんが「勝てると思わなかったのに勝てた、イケるで次も!」と後押しの一言をかける

 

 

クォーターファイナはテサ・ティッセンとマンオンマン

 

野呂玲花

 

クォーターファイナルからはマンonマン方式。相手はラウンド1でも戦ったテサ・ティッセン。アングレット隣のオセゴーをホームポイントとし、最初から積極的に波に乗って勝ち上がってきた。スロースタートかつ乗る本数も少なくして勝ち上がってきた野呂とは正反対のタイプに思える。

 

しかしヒートが始まると前半5分で3本と、序盤から果敢に攻めたのは野呂の方。ただしハイタイドが過ぎるのを待って開始された最初のヒートということもあり、セットは入るものの波はまだまだ割れづらく、攻めても1アクション止まり。ポイントに結びつかない。その間、ティッセンがインサイドまで乗り継いだレフトの1本で5.67ポイントを出してしまう。

 

野呂玲花

 

 

中盤になると逆に本数を重ねだしたのがティッセン。野呂は波選びに慎重になりだす。ただし両者のポイントはさほど開いておらず、またこれまでの2試合を逆転で勝ち上がってきた野呂の試合運び、波運への期待もあり、たとえ後半に入り逆転に6.17ポイントが必要とアナウンスされても「2本決めればいいだけ」と信じることができた。

 

しかし最終的にはその“2本”はやってこず、ポイント差を5.01まで縮めたが、逆転するまでは辿り着けなかった。

 

—プロ・アングレットを5位で終えた今、率直な感想を教えてください。

 

「やっぱり優勝したいけど、どうかな? というのもあった。クォーターの前のR3で元CTサーファー(ポーリン・アド)を倒せたことは嬉しかった。クォーターも勝ちたかったけど、波がこなくて・・・波がきたら勝ててたかなと」

 

—クォーターファイナルでは戦い方がこれまでの2戦と変わったように思えましたが?

 

「(これまでの2戦も)最初からたくさん乗ってリズムを掴もうとは思っていたのですが、リズムを掴めなくて最後にいい波を掴んで勝ち上がれた。それがクォーターまでの勝ち方だったのですが、クォーターファイナルこそ最初にリズムを掴みたかった。でもリズムが掴めないまま波がどんどんこなくなって、結局逆転できなかった」

 

—厳しい言い方かもしれませんが、条件は相手も同じだと思います。その同じ波の条件下で勝てなかったのは?

 

「いい波に1本でも乗りたかったのですが、そのときにプライオリティがなかった。後から言っても仕方ないけど、もう少し波を待てばよかった」

 

—レイカちゃんはこの後、スペインに移動して「パンタン・クラシック・ガリシア・プロ(8月30日—9月4日)」に出ると思いますが、意気込みを教えてください。

 

「今回イギリスとフランスで戦った(焦らない)試合運びを忘れず、自信を持って試合をする事。2年前に同じ大会で9位になっているので、今回はそれを上回る成績を残したいです」

 

ヒート直後のまだウエットスーツを着たままでのインタビューにも関わらず、疲労や悲壮感は見せなく、ハキハキと答えてくれた。むしろスッキリとした様子。


インタビュー最後にこう付け加えてくれた。「実は対戦相手がテス・ティッセンと決まったのを見て、勝てるかな? て思っちゃったんです。過去に何度か試合して勝ったり負けたりしている相手。ちょっと(心のどこかで)油断しちゃったのが結果に出ちゃったのかも(苦笑)。次のスペインでは油断しません!」

 

本当の敗退理由はそこにあるようだ。本人のスッキリした表情や話し方からすると、目標はもう次のスペイン戦。8月30日から始まる「パンタン・クラシック・ガリシア・プロ」でも引き続きより一層、野呂玲花の活躍に期待したい、そして期待できるだろう。

 

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2016 Pro Anglet Highlights: Highlights: Big Airs, Bigger Scores on Day 3 in Anglet

 

大会オフィシャルサイト:

http://www.worldsurfleague.com/events/2016/mqs/1487/pro-anglet

 

ラスト1本、優先権を使われ阻止される大貴。奇しくも大貴がR2でしたことをR3ではされる側になった

学べる18歳。その能力はとても高いと感じました。ヒート中も物怖じせずスコア経過を求めるなど、サーフィンをしにきているのではなく、試合をしにきているという意識をちゃんと持っています。これが今のジュニア世代では普通のことですか !? 今後の成長が楽しみです

 

 

玲花 R3編

いつもニコニコ笑顔で挨拶してくれるエラ・ウィリアムズ。選手たちからの評判がよい!)

レイカちゃんはヒート前にいつもこうして「いける」と3回唱えるそう。「思い込みって大切だと思うので!」

ラウンドアップを喜びあうレイカちゃんとエラ・ウィリアムズ。二人とも同じリップカールのチーム仲間でもある

会場でいろんな人から話しかけられていたレイカちゃん。世界中の試合を転戦してきたのがわかる。ちなみにこのお方は元CTサーファー、ジャスティン・デュポンのお父さん

QF15分くらい前まで田中大貴くんとアイス屋さんを見に行っていたレイカちゃん。ヒートが行われると知り、それからすぐ準備に入り、気持ちを入れ変えた

お母さん「インサイドまで攻めて大丈夫やで。板が折れたらダイキ、持っててーな」。レイカちゃんの応援で残っていた大貴くん「全然いいよ!」。チーム玲花の出来上がり

波は割れづらくなったが、海の色は朝に比べキレイな青になった

カリフォルニアに移住してからビーガンになったというレイカちゃん。もちろんフランスでも実践! 食事は同行しているお母さんが用意してくれるのかと思ったら「私は無理、肉タリアンやから」とのことで、自分の分は自分で用意。管理できることは自分でやっているんですね。ベジタリアンになってからパドルが疲れなくなったそうです。