現地レポート〜野呂玲花、最後の逆転ライドでR2突破! 田中大貴、頭脳戦で逃げ切りR3へ!

現地レポート〜野呂玲花、最後の逆転ライドでR2突破! 田中大貴、頭脳戦で逃げ切りR3へ! 


大逆転で勝ち上がった野呂玲花

 

 

 

TEXT & PHOTO:Michiko NAGASHIMA

 

アングレット、ペイバスク、フランス、2016年8月25日木曜日:フランスのアングレットで開催中のWSL−QS1000「プロ・アングレット」2日目。

 

朝7時のファーストコールを受け始まったのはウィメンズヒート。前日に行われきれなかったR1の残り2ヒートが終わると、続けざまにR2が開始した。そのR2の2ヒート目に野呂玲花が登場。

 

 

朝5時に起きて会場入り。7時前にようやく空が薄明るくなりやっと入水。3本ほど乗って自身のヒートスタンバイに入った

 

 

波のコンディションはセットで胸肩。南東よりの風が吹いているが面はキレイ。朝の遅いフランスらしく8時を過ぎてようやく太陽の光が海面に届き出した。夜から朝に変化しつつある会場の空気はキビキビとしたもの。

 

そんな雰囲気の中で始まった野村玲花のヒート。スタートするやセットが入り、野呂以外の選手が立て続けにライド。5分を過ぎ、その間にライディングを重ねる選手がいる一方で野呂に動きは見られない。その野呂、残り時間が10分近くなったところでライトの波をキャッチ。2発目のリエントリーを際どい場所でメイクし、5.33ポイント。この時点で2位につける。

 

他の選手はほぼレフトの波を捉えていた中、レイカちゃんが乗ったのはライトの波ばかり。「本当はレフトで点数を出したかったけど、でもライトでも点数が出てよかった」

 


しかしその後で他選手がポイントを重ね野呂は3位に。勝ち上がるのに必要なポイントは3.51。野呂の実力を考えれば、逆転は十分可能だが、その後リードを許し、残り3分を切ったところで野呂は4位に転落してしまう。勝つのに必要なのは4.58ポイント。

 


イギリス3位、ラカナウ5位と直前の試合成績がよく、調子がよいと思われるだけにR2での敗退はなんとも悔やまれる。また他の選手が5本、7本と乗っている中で野呂のライディング本数はたったの2本。

 

もう少し野呂のサーフィンを見たかったと思った1分半、ライトの波にテイクオフ。インサイドまで乗り継ぎながらリエントリーを3発。そして海から上がったところで試合終了。

 

終了後にアナウンスされたポイントは5.67。最後の最後で逆転勝ち。朝から見ている側をひやひやさせながらもR3へと駒を進めた。

 


 

—試合終了後、本人に話を聞いてみた。

 

「今回のヨーロッパツアーを回ってみて、試合に対しての気持ちが変わった。いつもはヒート前半に乗れなかったら焦って自滅。でも乗れなくても焦らなくなった。今のヒートも最初は乗れなかったけど、2本でいいから、2本だけでいいからと、気持ちを切り替えてやった」

 

—そもそも焦らなくなったのはどうして?

 

「勝ちたいという気持ちはどの試合もある。でも勝つときは勝つし、負けるときは負ける(と悟った)。全力で思いっきりやろうとしたのがきっかけです」

 

—それでも終了間際の順位で…

 

「4位になりましたよね(笑)。いつもは焦っていたのですが、焦らなくなりました。前回の大会もそういうことがあった。でもあと1本だけでいいや、と落ち着けたら試合がうまく進んだ。落ち着いて1本乗ってコケてしまったら、自分のレベルはそこまでだと思える。でも焦って乗ったらそう思えない。だから焦らないでいるようにした」

 

—ヨーロッパに入ってからの戦績がよいので、今回も当然R3アップ、それより上へと期待がかかります。

 

「ヨーロッパに入る前の試合がダメだった。日本のQSで優勝した後、調子が悪くなってしまって、その後メキシコ、カリフォルニアでふるわず。今回すごく悩んでヨーロッパにきたけど、悩んだおかげで試合に対する気持ちが変わった。思い切りやろうと。


今回は強い選手がたくさん出てきている。おそらく次戦の6スター(スペイン)が控えているから。R3ではどの選手と当たっても自分のサーフィンができるように落ち着ついてやりたいです」

 


 

そのR3はアングレットの前、ラカナウの大会で優勝したエラ・ウィリアムズが対戦相手の一人に含まれる。運がよくて、波がよくて…そんな理由で勝ってきたのではなく、勝っている要因を自己分析している野呂。R3も落ち着いた試合運びで、勝ち上がる勢いは失わずにラウンド3の突破を期待したい。

 

 

現在カリフォルニア在住のレイカちゃん。本人曰くアングレットのビーチは等間隔に堤防が作られた形状でカリフォルニアと似ていると。波質も同じく。そんなに難しい波ではないが、ハイタイドになるとダラダラしてしまう傾向が。しかしそれ以外はいい波との事。この場所が気に入った様子で、特に同行していたお母さんの口からは「住める」発言も飛び出した

 

 

 

 

 

 

 

ウィメンズのR2が終了すると次はメンズR2に移行。さっそく1ヒート目から粟田海の出番となる。時刻は10時50分。まさにハイタイドちょうどの時。アングレットの波は特徴の一つとして、潮の満ち引きが激しいことがあげられる。前日はハイタイドの時刻に試合を行うことを避けたくらいだ。

 

ヒートの開始がコールされると対戦選手の何人かはすぐ波に乗っていたが、その後セットが入ってもなかなか割れづらい波が続く。

 

粟田海

 

 

他の選手も技数やバリエーションを見せられなかったり、長く乗れなかったりと苦戦している様子。1発が決め手となるようなヒートの中、粟田も何本かテイクオフするものの、乗り切れていないような印象を受けた。そしてそのまま試合終了。

 

粟田「もっと波に乗りたかった。立った瞬間に力が入っちゃったな、というのがあった。対戦相手が有名人だったのも意識してしまった。他には波のとりこぼし、波待ちのポイントが間違っていた。あとはライディング…話にならなかった」

 

聞けばヨーロッパでの試合は初めてで、それも一人で行動しているそう。

 

粟田「ヨーロッパでのQSは去年、一昨年くらいから行きたいと思っていた。今年の7月で21歳になり、レンタカーが運転できる年齢になった。それで一人で動けるようになったから来てみた」

 

初めての慣れない土地、自分で選んだとはいえ一人で行動するのはとてもストレスがかかる。クルマを駐車する、日本ではなんてことない小さな事も外国では労力を要する。

 

粟田「ははは、でも楽しいです。フランスは言葉に少し苦労しますが、楽しいです。この後は日本に帰ってJPSAに戻ります。この経験を来年や次に繋げられれば」

 

 

試合結果は残念だったが、来年以降にもし大会以外のストレスや業務が軽減されれば、より試合に集中できるかもしれない。しかし単独行動の方が調子いい場合もあるので一概には言えないが。何にせよこの経験が生かされ、結果になることが楽しみだ。

 

 

 

田中大貴、頭脳戦で逃げ切りR3へ! 


 

田中大貴

 

もう一人のメンズ日本人選手、田中大貴の試合はそれから時間が過ぎること約4時間半、15ヒート目に始まった。時刻は16時を過ぎ、強い陽射しと遅めのシエスタタイム、それに早朝から大会自体が運営されていることで、会場は少しけだるいムードに包まれていた。

 

しかしそんなムードも選手にとってはもちろん関係なし。試合が始まると一番手を切ったのは田中。立て続けに2本乗るなど積極的に攻める。


波の状況はサイズが下がり、ショアブレイク気味の早い波。その為テイクオフをしても波につかまってしまう選手が続出。ジレンマが感じられるような展開だ。それでも田中は乗れる波を見つけると、積極的に攻め続けカレントリーダーに。

 


 

 

途中で他の選手に抜かれ終盤で2位になるも、プライオリティを使い下位選手のうち一人をマーク。最後の最後で、マークをしていない方の選手がライトの波で2発リエントリーを決め、それにMCも素晴らしいとアナウンス。逆転される5.73以上のポイントが出てしまうかと、肝を冷やしたが、出たポイントは4.63ポイント。田中は序盤はリードを決め、後半はプライオリティをうまく利用し、R3へのラウンドアップを決めた。

 

—R2突破おめでとうございます。

 

「試合を通して波回りがよく、いい波が入ってきた。でもコケちゃう場面も多く、力みすぎて、けっこう焦っていた部分もあった。でも波回りがよかったので、結局ギリギリですが勝ててよかった」

 


 

—下位につけていた選手が最後に乗った1本はドキドキでしたね。

 

「自分が優先権を持っていたから、二人の選手のうちどちらをマークしようか悩んだ。でも波のサイズ、動きを予想してマークする選手を選んだ。そうしたら残り30秒くらいで大きい波がきて、その選手が乗ることを阻止できた。しかしもう一人の選手も乗ってしまって逆転の不安があったけど、結果オーライ。


試合をする側として、プレッシャーをかけられて乗るのと、かけられないのとでは全然違う。だから相手の近くにいって、プレッシャーをかけて乗るようにしている。

 

勝つためにはいい波に乗る事は絶対。だけど運任せよりも頭を使って試合を組み立てていかないといけない、世界で勝つためには。特にプライオリティ式だと頭を使う。そうでなければ話は別だけど。


残り3分間はプライオリティを持っていた。あえて使わずギリギリまで待った。波がこなくて変な波に乗るよりもプライオリティを持っていれば本当にいい波が待てる。また他の選手の邪魔もできる。暫定1位ならスコアを伸ばすようにするけど、暫定2位は勝ち上がることを考えなくてはいけない。逆転される可能性があるから。だから自分が点数を出すよりも相手をマークする作戦にかえた」

 

—明日26日のR3に向けて、意気込みを。

 

「R3はワード・カルマイケルという有名選手と当たる。その選手と戦ってみたい気持ちは以前からあった。彼と当たれるのは嬉しい。勝ち負けより戦ってみたい気持ちが強い。楽しみでしょうがない! 3R目はコケたりしたら勝てるような相手たちではないけれど、ベストを尽くし、勝つというよりいいパフォーマンスをする、ということを考えてやりたいと思います」

 

大会3日目となる明日26日のファーストコールは朝7時(現地時間)。順調にいけば9時半ごろ田中大貴のR3が始まりそうだ。それに続いて野呂玲花のウーメンズR3も行われることが濃厚。更なるラウンドアップを期待しながら、また明日も現地からのレポートをお届けします。

 

 

勝負師なんですね、と言うと「けっこう好きなんです」との答えが。

去年の今大会優勝者が「プライオリティをうまく使えることが今後ますます勝敗を左右していく」と言っていたのが記憶に蘇った。大貴くんは試合という場数の多さに比例して強くなっていくのが予想される。

 

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2016 Pro Anglet Highlights: Ocean Pumps, Top Seeds Debut at Pro Anglet

大会オフィシャルサイト:

http://www.worldsurfleague.com/events/2016/mqs/1487/pro-anglet