都筑有夢路と都築虹帆、水野亜彩子による次世代の女子サーファー育成を目的とした体験型イベント「SURF & MIND SESSION」リポート

11月29日、神奈川・鵠沼海岸にて、次世代の女子サーファー育成を目的とした体験型イベント「SURF & MIND SESSION」が開催された。本イベントは、サーフィンの技術向上と同時にメンタル面の成長にもアプローチすることを目的とした新しい試みで、第1回となる今回は中学生までの女子ショートボーダーを対象に実施。

コーチには、東京五輪銅メダリストで日本女子サーフィン界の第一人者である都筑有夢路と、世界を転戦する若手筆頭のトッププロ都築虹帆が就任。

さらに、オーガナイザー / ディレクターは現在も大会でMCやレポーターとして活躍する水野亜彩子がディレクターとしてイベント全体を統括した。全員が女子プロサーファーという布陣のもと、技術・メンタル・人のつながりを一体化させた濃密な一日が組み立てられた。

 

このイベントが生まれた背景には、サーフィンという競技が持つ「技術や体力だけでなく、メンタルが結果を大きく左右するスポーツである」という特性がある。

 

ジュニア世代の育成現場では、どうしても技術重視の指導が中心になりがちで、緊張、不安、失敗との向き合い方といった“心の成長”を体系的に学ぶ機会は決して多くない。

そんな現状に対し、「波に乗る力」と「心を育てる力」の両方を同時に伝えたいという想いから、「SURF & MIND SESSION」は企画された。本イベントの大きな特徴は、実技・映像解析・メンタルトレーニング・トークセッションを一日の中で循環させる構成にある。

 

 

 

午前は少人数制によるサーフィンレッスンで実際のライディングを撮影。午後はその映像を用いた分析会で、自分のサーフィンを客観的に見つめ直す。

その後、都筑有夢路による「緊張を味方にする」をテーマとしたメンタルトレーニング講座、さらに都築虹帆による「夢の見つけ方・叶え方」のトークセッションが続き、技術・思考・感情・未来が一本の線で結ばれる構成となっている点が、従来のサーフスクールとは一線を画している。

 

ビーチを軽くランニングしながらのビーチクリーンからスタート

 

当日は小学校4年生から中学3年生までの女子サーファー8名が参加。受付後は自己紹介を行い、ビーチを軽くランニングしながらのビーチクリーンからスタートした。初対面同士でやや緊張感もあったが、自然と笑顔が広がり、すぐに打ち解けた雰囲気に包まれた。

 

午前中のサーフィンセッションは4人ずつに分かれて実施。参加条件は「自力でテイクオフができること」で、日頃からコンペに出場している選手もいれば、テイクオフを覚えたばかりの選手もいるなど、技術レベルには幅があった。

 

都筑有夢路と都築虹帆

コーチの2人は海の中から一人ひとりのライディングを細かくチェックし、海から上がるごとに具体的なアドバイスと課題を提示。選手たちは再び海へ戻り、指摘されたポイントを意識して何度もトライを重ねていった。

 

中には自分だけが思うように乗れず、悔しさから涙を流す選手の姿もあったが、都筑有夢路と都築虹帆は「人と比べなくていい」「今できることを一生懸命やっていることが素晴らしい」と声をかけ、単なる慰めではなく前へ進ませる言葉で背中を押した。

 

その後、その選手が笑顔で再び波に向かっていった姿は、まさに“技術とメンタルを同時に育てる”というこのイベントの象徴的な場面となった。

 

昼食後はライディング分析会を実施。午前中に撮影された映像を見ながら、一人ひとりの動きを丁寧に解説し、改善点だけでなく良かった部分も具体的に言語化していく。

自分の滑りを客観視することで、次に何を意識すべきかが明確になり、選手たちは真剣な表情で画面に見入っていた。

 

 

続くメンタルトレーニング講座では、都筑有夢路自身が実際の国際大会で使用している「メンタルチェックシート」を用いて解説。

準備、モチベーション、自信、セルフトーク、緊張や感情の扱い方、ポジショニング、プライオリティ、パフォーマンス、総合評価の10項目を10%刻みで自己評価するという実践的な内容だ。

今年のエルサルバドルでの大会では48%という低スコアだったものの、その反省を活かして臨んだポルトガルでは90%まで改善したという実体験が共有された。

 

「大切なのは技術的なチャレンジだけでなく、心のチャレンジをし続けること」

緊張や不安を排除するのではなく、受け入れて“味方”に変えるという考え方は、参加者たちに強いインパクトを与えた。

 

都築虹帆によるトークセッション

後半は都築虹帆によるトークセッション「夢の見つけ方・叶え方」。小学6年生でサーフィンを始め、15歳でプロ転向、日本代表として世界に挑み続けてきた道のりが率直に語られた。

 

「夢は最初から明確に見えるものばかりではない。とにかく挑戦してみることで、自分のやりたいことが見えてくる」「目の前のことを一生懸命やり続けること、諦めないことが結果的に夢へとつながる」という言葉に、多くの参加者がうなずいていた。

 

また、試合ごとに感情や反省点をノートに書き出し、自己分析を重ねてきたという具体的なメンタル管理法も紹介され、選手だけでなく保護者にとっても学びの多い時間となった。

 

終盤には質疑応答と交流会が行われ、実際に海が混み合っている状況での効果的な練習方法や、海外遠征時に注意すべき点、さらには思わず笑いがこぼれる失敗エピソードまで幅広い話題が飛び交い、終始和やかな雰囲気に包まれた。

 

都筑有夢路、都築虹帆
修了証明書を受け取って笑顔の参加者
協賛スポンサーからの記念品

 

その後、本イベントに協賛したスポンサー各社から参加者全員に数多くの記念品が贈られ、さらに最後には都筑有夢路、都築虹帆のメッセージが添えられた「Certificate of completion(修了証明書)」も手渡された。記念撮影をもってイベントはすべて終了。朝から続いた濃密な1日を終え、選手たちの表情には疲労と同時に、確かな達成感がはっきりと浮かんでいた。

 

都築虹帆、水野亜彩子、都筑有夢路

 

イベント後、主催者3名は今後への想いを次のように語っている。

都筑有夢路は「自分がサーフィンを通して得てきた経験を次世代へ伝えたい。女性が輝ける場所をもっと作りたいという思いで始めた取り組み。現役でいる間は毎年開催し、引退後はさらに広げていきたい」と長期的な展望を明かす。

都築虹帆は「現役でやるからこそ、リアルな言葉と感情をダイレクトに伝えられる。サーフィンの世界には多くの夢が詰まっていることを、次の世代に届け続けたい」と継続への強い意欲を示した。

水野亜彩子は「技術指導に比べ、メンタル面のサポートはまだ十分とは言えない。スポーツだけでなく、人生を生きる上でも“心の向き合い方”はとても重要。年1回のペースを目標にしながら、将来的には形を変えてでも長く続けていきたい」と語る。

さらに、若手選手のセカンドキャリアや社会との接点づくり、サーフィン業界全体の成熟についても課題として挙げ、「現役選手が輝く姿を発信し続けることが、次世代の憧れにつながり、業界の循環を良くする」と、この活動に込めた意義を強調した。

 

「SURF & MIND SESSION」は、単なるサーフィンレッスンにとどまらず、挑戦する心、自分を信じる力、仲間と成長する喜びを同時に育む場として確かな手応えを残した。ここで芽生えた小さな自信と気づきが、やがて次の大きな波へとつながっていくに違いない。

 

岸本結恋(キシモトユコ)
渡邊カレン(ワタナベカレン)
中嶋凜(ナカシマリン)
軸屋安澄美(ジクヤアスミ)
山本海乃(ヤマモトカイナ)
名取すみれ(ナトリスミレ)
西島環(ニシジマタマキ)
木下つぐみ(キノシタツグミ)

[SURF & MIND SESSION]

日程:2025年11月29日(土)
時間:9:00〜16:00
会場:鵠沼海岸
コーチ:都筑有夢路(東京五輪銅メダリスト)
都築虹帆(WSL Challenger Series出場選手)
内容:サーフィンレッスン、映像分析、メンタルトレーニング、トークセッション
参加対象者:中学生までの女性ショートボーダー

・イベントスケジュール
9:00 ~ 9:30 受付 / ビーチクリーン
9:30 ~ 11:30 サーフィン (撮影あり)
11:30 ~ 12:15 昼食 + 休憩
12:15 ~ 13:15 ライディング分析会
13:15 ~ 13:45 メンタルトレーニング講座 テーマ:緊張を味方に / 講師:都筑有夢路
13:45 ~ 15:15 座学 トークセッション「夢の見つけ方・叶え方」/ 講師:都築虹帆
15:15 ~ 15:45 質問・交流会
15:45 ~ 16:00 記念撮影・解散

 

・コーチプロフィール

都筑有夢路
【主な戦績】
2019年:女子QS10000「ABANCA Galicia Classic Surf Pro」優勝(日本人女子初)
2019年:女子ジュニア世界選手権「WSL World Junior Championship」優勝(アジア人女性初)
2020年:女子CT(チャンピオンツアー)クオリファイ(日本人女子初)
2021年:東京オリンピック(女子サーフィン)で銅メダル獲得

 

神奈川県出身のプロサーファーとして、世界の海を舞台に挑戦しています。海の上にいる時間が本当に好きで、どんな時でも挑戦をする事を忘れず、自分らしく乗ることを大切にしています。「やるしかない」という言葉を胸に、世界の舞台で挑戦し続けています。

試合に出始めた頃は勝ちたいのに緊張してしまう、なぜ緊張するのかわからず試合をしていました。試合で勝てるようになった今でも、緊張はいつも隣にいます。でも挑戦を繰り返していくうちに緊張しているのは、本気で夢を叶えたいから。その瞬間から「緊張」は味方になりました。技術だけでなく、夢を追うための心の強さを一緒に育てたいと思っています。

都築虹帆
【主な戦績】
WSL Challenger Series 転戦中(2023〜現在)
2025年: ISA世界選手権 日本代表 世界6位
2025年: QS Korea Open 優勝
2024年:/2025 WSL QS アジアチャンピオン
2024年: QS Miyazaki Pro 優勝
2024年: QS Hyuga Pro 優勝
2022/2023年: WSL QS アジアチャンピオン
2022年: QS Taiwan Open 優勝
2019年: ISA 世界ジュニア選手権 U16日本代表 団体3位

【協賛社】
株式会社AbemaTV
BELL’S GYM
株式会社STOKEcompany
The USA Surf
リーヴァレディースクリニック
株式会社ZETA
FUKAI FITNESS CLUB
FLOWHLIA
株式会社アントレックス
OAKLEY Japan
ムラサキスポーツ
FCS Japan
GRAND MARVLE
Hydro Frosk Japan
BRISAMARINA