9月3日から静岡県御前崎ロングビーチでスタートしたWSL Asia / Men’s & Women’s QS2000 & Pro Jr「MIDAS CAPITAL OMAEZAKI PRO 2025」は、DAY-5の本日が最終日を迎えた。プロジュニアはすでに9月4日に終了しており、残されたのはQS2000の男女優勝者を決める戦い。

大会最終日は男子ラウンドオブ16から始まり、男女ともにクォーターファイナル、セミファイナル、そしてファイナルが行われた。男子は4ラウンド、女子は3ラウンドを勝ち抜く計算となった。
会場のコンディションは朝一はサイドの風、波はカタサイズでスタート。しかし昼にかけてオンショアに変わり、波はコシハラまでサイズダウン。ブレイクポイントもアウトからミドルに変わり、ワイド気味の速い波に。タイミングを外せば技を決める前に潰されるコンディションとなり、波の見極めとインサイドでのフィニッシュが勝敗を分けるポイントとなった。

今大会のジャッジ基準は全体的に辛め。2発決めても2点台は珍しくなく、きれいなサーフィンだけでは評価されない。リスクを取った演技にこそ高得点が与えられる傾向で、攻めの姿勢が強く求められた。
サイズがあるうちは攻めのサーフィンにメリハリがつけやすいが、コシハラサイズまで落ち込んだセミファイナル以降は、張る波を選ばなければ演技すら成立しない状況となり、波選びが勝負を決定づけた。


女子セミファイナル第1ヒートはHana Bakkerと野中美波の対戦。Bakkerがパワフルなライディングを見せるも、野中はスピードとコミットメントでリスクを恐れないアプローチを展開し、高評価を獲得し、決勝進出を決めた。



第2ヒートは鈴木莉珠と池田美来。鈴木は田嶋鉄兵コーチの指示で左のバンクを選び、池田は正面に構える展開。両者が干渉なく自分のサーフィンを展開したが、ジャッジは鈴木の攻めの姿勢を評価し、ここは鈴木が僅差で決勝へ進んだ。
女子ファイナル


決勝は野中美波と鈴木莉珠。鈴木が左、野中が正面にポジショニング。野中の正面にポテンシャルあるライトの波が入り続け、これを逃さず6.67、6.50を揃えてトータル13.17をマーク。鈴木は序盤に4.50を出すも得点は伸びず。
最後は野中が鈴木のいる左へ移動して試合をコントロールし、そのまま時間切れ。野中が嬉しい優勝を飾った。小柄ながらも攻めの姿勢を体現する彼女のスタイルは、今のジャッジ基準に見事に合致した。
これが彼女の武器でもある。準優勝の鈴木も実戦を通じて着実に力をつけており、波さえつかめれば勝てるいう今回の大会結果は自信につながったと思う。今後に大きな期待がかかる。
野中美波、御前崎で復活V!


野中美波が見事優勝を果たした。久しぶりの勝利に、試合後のインタビューでは安堵の表情を見せながらも、次なるステージへの強い意気込みを語った。
プレッシャーなく楽しめたことが勝因
「今回の試合はあまりプレッシャーを感じずに、楽しくすべてのヒートを挑めた」と、野中は勝因を振り返る。その背景には、大会会場である御前崎との相性の良さがあった。「御前崎はすごく好きなポイント。よくトリップでも来る場所で、自分のサーフィンが結構できていた」と語り、リラックスしたメンタルが良いパフォーマンスにつながったことを明かした。
ファイナルで掴んだ2本の高得点ライドについては、「あれは結構ラッキーでした。ずっと試合を見ていても見つけられなかった波が、たまたま自分のところに来てくれた。海に感謝です」と謙虚に語った。



CSへの大きな一歩となる勝利
近年、思うような結果を残せずにいた中での今回の優勝は、大きな意味を持つ。この勝利により、世界トップレベルの選手が集うチャレンジャー・シリーズ(CS)への参戦に弾みがついた。「次のポルトガル、ブラジルのCSに行こうと思っているので、そこへ向けての自信につながった」と、世界への再挑戦に手応えを感じている様子だ。
来季のクオリファイに向けた明確な目標
「来年のCSにクオリファイすることと、CSでクオーターファイナル以上に行くことが目標です」と力強く宣言。この優勝をステップに、さらなる高みを目指す。
最後に野中は、「暑い中、会場に足を運んでくださった皆さん、運営スタッフ、ローカルの方々、本当にありがとうございました。引き続き試合も続くので、頑張るので応援よろしくお願いします」と、支えてくれたすべての人々への感謝の言葉で締めくくり、今後の活躍を誓った。


男子セミファイナル第1ヒートは安室丈とRaphael Castro(USA)。急速にサイズが落ちる中で波を掴むも、両者とも決め手に欠ける展開。 Raphaelはとりあえず波をつかんで当てるものの、体格を活かしたサーフインはできず、当てるだけ。片や安室も正面のバンクで演技をするものの、同じく決めきれず。それでも僅差で安室が決勝へ。


第2ヒートは金沢呂偉と小林桂。小林は田嶋鉄兵コーチとともに今日は終始、左のバンクを選択。クォーターファイナルでは、エアーリバースを連発して8.67のエクセレントを叩き出した勢いそのままに、技を仕掛け続けて加点。金沢は持ち味のスムースな演技で対抗するも及ばず、小林が決勝へ進出した。
男子ファイナル


決勝は安室丈と小林桂。安室が正面、小林が最後まで左を選択し、互いに波を乗り合う展開に。安室もスピードを活かしたフローある演技で攻めるもこちらは4点台。フィニッシュが決めきれず苦戦。一方の小林はフリーサーフィンのように波を掴んではリスキーな技を仕掛ける。
この決勝の差は「コミットメント」。小林がバリエーションあるリスキーな演技を行えば、1発でも6点台がつく。さらに小林は「Variety of maneuvers(技の多様性)」と「Commitment and degree of difficulty(コミットメントと難易度)」を体現し、見事に大会2連覇を達成した。
御前崎の変化しやすいコンディションの中で求められたのは、波を見極め、恐れずに攻める姿勢。男女ともにジャッジの基準を的確に理解し、それを実行できた選手が勝ち上がった大会となった。
小林桂が御前崎で2連覇を達成



今年からUSリージョンからアジアリージョンに戦いの場を移し、今回の優勝は、その新たな挑戦における大きな一歩となった。試合後のインタビューで、小林桂は喜びを語ると共に、今後の抱負を力強く語った。
アジアリージョンへの転換、その意味
「日本のサーファーはレベルが高い。みんな超サーフィン上手いので、120%出さないと勝てない」と、アジアリージョンのレベルの高さを語った。その中で、アジアQS、オーストラリアでの試合が多数開催され、多く試合に出られる機会があることが重要だと述べた。「このアジアシリーズがもっともっと大きくなると思うので、本当に楽しみです」と、今後の展開に期待を寄せた。

静岡での優勝の意味
小林桂にとって、父親の故郷である静岡県での優勝は特別な意味を持つ。「静岡は最高です!ナンバーワンです」と喜びを爆発させた。「今回の優勝は、みんなのサポートがあったからこそ。」と、周囲への感謝を述べた。
「周りのチームは、愛そのもの。そのチームの中に入れてもらって、そのサポートで今回優勝できた」と語り、「2年連続で優勝することができて本当に嬉しいです。自分のサーフィンをファイナルデイで出せた」と、充実感を語った。
この優勝をステップに、小林桂は「とりあえず全部の試合に出たい。リズムを作って、次はQS6,000の田原で、その後に宮崎にも行きたい」と、今後のスケジュールを語った。怪我の調整をしながら、クラウド9と台湾にも出場する予定だという。
「アジアランキングでナンバーワンも取りたい。自分のサーフィンができるように頑張る」と、力強く今後の目標を語った。

この大会結果でWSL ASIA QSランキングは下記のとおり。 優勝の小林桂は3位へ、野中美波は6位にアップ。
Asia – 2025/2026 Men’s Qualifying Series Rankings https://www.worldsurfleague.com/athletes/tour/mqs?regionId=6&year=2025
Asia – 2025/2026 Women’s Qualifying Series Rankings https://www.worldsurfleague.com/athletes/tour/wqs?regionId=6&year=2025
「OMAEZAKI PRO」は資金集めから運営まで、すべてを御前崎ローカルが担う大会

「OMAEZAKI PRO」は2022年に始まり、国際大会を通じてサーフィン競技の普及と次世代サーファーの育成を目指してきた。今年もその理念を受け継ぎ、第4回大会を開催。大会とあわせて地域イベントを充実させることで、観光誘致や地域活性化にも大きく貢献している。
今年はQS(ワールドサーフリーグ クオリファイングシリーズ)の試合に加え、待望のプロジュニアが復活。普段はNSAやローカル大会で活躍する小学生サーファーたちも数多く参戦した。同年代では勝てても、キャリアや体格の差に直面し、思うような結果を残すのは容易ではない。

しかし、この「敗北」こそが将来の糧となる。世界を目指す若手にとっては大きな財産であり、さらにQSにはインドネシアやアメリカからも選手が集結。普段は対戦できない海外勢との経験が、確実に彼らの成長を後押しする。
パリ五輪以降、日本代表の強化は急務とされている。特に国際舞台で戦えるジュニア世代の育成は最重要課題だ。この大会での経験は、将来のオリンピックやWSLのCS(チャレンジャーシリーズ)で活躍する選手を生み、日本サーフィン界全体の底上げにつながるだろう。
「OMAEZAKI PRO」は資金集めから運営まで、すべてを御前崎ローカルが担う大会だ。他にはない “ ローカル発の国際大会 ” であり、「御前崎を盛り上げたい」という思いに加え、「日本から世界で戦える選手を育てたい」という情熱が根底にある。
さらに地域創生や海岸保護活動、地元高校生の参加なども取り入れ、地元の行政や企業と連携し、国際大会の新しい在り方を提案している。「子どもたちに多様な選択肢を示し、体験を通じて夢を見つけてほしい」そんな願いも込められているのだ。
試合だけでなくイベントも進化し、今年も大きな成果を収めた「OMAEZAKI PRO」。来年はぜひ御前崎に足を運び、その熱気と可能性を体感してみてほしい。ここには、未来へのヒントが数多く詰まっている。
大会 HP
https://www.omaezakipro.com/
WSL HP
QS2000
https://www.worldsurfleague.com/events/2025/qs/431/midas-capital-omaezaki-pro-qs-2000/main
Pro Jr
https://www.worldsurfleague.com/events/2025/jun/432/midas-capital-omaezaki-pro-junior/main
WSL Asia / Men‘s &Women’s QS2000 & Pro Jr「MIDAS CAPITAL OMAEZAKI PRO 2025」
・日 程:2025 年9月3日(水)~7日(日)
・ 主 催:WSL 御前崎プロ実行委員会
・ 共 催:WSL/ASIA(APAC)
・ 特別協賛:株式会社MIDAS CAPITAL
・ 後 援:静岡県/御前崎市/御前崎市商工会/御前崎市観光協会(予定も含む)
・ 協 力:日本サーフィン連盟静岡2 区支部/御前崎ローカルサーフコミュニティ/ 御前崎スマイルプロジェクト
WSL ASIA 「Midas Capital Omaezaki PRO QS 2000」
Men’s優勝:小林桂
2位:安室丈
3位:Raphael Castro(USA)、金沢呂偉
プレゼンター
WSL御前崎プロ実行委員会 実行委員長 小野田政宏 氏
Women’s優勝:野中美波
2位:鈴木莉珠
3位:Hana Bakker(JPN)、池田美来
プレゼンター
WSL御前崎プロ実行委員会 大会会長 下村勝 氏

特別賞(CITIZENプロマスター賞)
男子:小林桂
女子:野中美波
プレゼンター
シチズン時計株式会社 薮亀亮太郎 氏
池田美来に波の選択と戦い方をレクチャーする浦山哲也コーチ。
大会のゼッケンには記念として選手のサインが書き込まれる。
表彰式では特製の木製シールドが贈られる。
インタビューのライブ配信では、学生ボランティアがADを担当。




