
夏本番を目前に控えた6月29日、日本のサーフカルチャー発祥の地・湘南に、海を愛する約130人が集結した。サーフブランド「BILLABONG」と、60年以上の歴史を誇る「西浜サーフライフセービングクラブ(SLSC)」が共催する「Enoshima Ocean Cleanup 2025」。
今年で4回目を迎えるこの活動は、「伝え、広げる」をテーマに、プロサーファーやライフセーバー、そして初めて公募で集まった一般参加者が一体となり、自分たちの遊び場である海への感謝を行動で示した。

街から海へ、ゴミの現実を追う
「PROTECT THE PLACES WE PLAY(自分たちの遊び場を守ろう)」。この共通の理念のもと、両者のタッグは2022年から毎年クリーンアップイベントを続けてきた。今年の活動は、これまで以上に広範囲にわたる二つのチームで展開された。





一つは、観光客で賑わうビーチや境川周辺の「街」を清掃するチーム。もう一つは、プロサーファーやライフセーバーたちがボードを漕ぎ、普段は人の足が届きにくい江の島の「入り江」を目指すチームだ。
このアプローチは、街で生まれたゴミが川を伝い、やがて海へと流れ着くという現実を浮き彫りにした。

街中では、一見きれいに見えるものの、目を凝らせば排水溝の周りや植え込みにマイクロプラスチックが点在している。一方、パドルで渡った江の島の入り江には、ペットボトルや発泡スチロール、さらには生態系に大きな影響を与える魚網といった大きな漂着ゴミが今なお残されていた。


約30分の清掃で、集まったゴミは軽トラックの荷台を埋め尽くすほど。それは見えない場所で静かにゴミが蓄積している紛れもない証拠だった。
参加者の声が広げる、意識のバトン

江の島海水浴場協同組合の顧問、藤沢市議会議員の佐賀ワキさんは、「実際にパドルで江ノ島に渡り、飲料容器が落ちているのを見て、ゴミが街から流れてきていると実感しました。街のゴミを拾うことが、ビーチをきれいにすることに直結するんですね」と語る。

また、Z世代の環境グループ「NAMIMATI」の菅原絵美さんも、「街から川へ、そして海へというゴミのルートを体感しました。私たち一人ひとりが普段の生活から意識を変えることが大切」と、日々の行動の重要性を訴えた。

BILLABONGのプロライダー、近藤義忠さんは、プロの視点からこう話す。「今年は空梅雨でゴミが少なめに見えましたが、それは表面的なこと。暮らしの中でゴミを出さないことが一番大事です。夏にはバーベキューのゴミを放置する人もまだいる。だからこそ、こうした活動をもっと多くの人に知ってもらいたい」。
清掃から啓蒙へ。「見せる」ことの力

西浜SLSCのメンバーが着用するBILLABONGとのコラボユニフォームは、道行く観光客の目を引いた。スマートフォンで撮影する人の姿もあり、清掃活動そのものが「海を大切にしよう」というメッセージを伝える自然な啓蒙となっていた。これもまた、「伝え、広げる」というテーマを体現する重要なアクションだ。

イベントの最後、BILLABONGの小島研史マーケティングディレクターは参加者に力強く呼びかけた。「今日ここで感じたこと、思ったことを、ぜひ周りの人に伝えてください。その小さな一歩が、きれいな海を全国に広げる力になります」。




うオーシャンクリーン
美しい海を未来へ繋ぐために必要なのは、一年に一度の特別な活動だけではない。日々の暮らしの中で、ゴミを出さない選択を積み重ねていくこと。湘南から始まったこの活動の輪が、日本中の海、そして私たちの意識へと、これからも着実に広がっていくことを期待させる一日となった。
イベント概要と関連情報
- イベント名: Enoshima Ocean Cleanup 2025
- 開催日: 2025年6月29日(土)
- 主催: 西浜サーフライフセービングクラブ、BILLABONG
- 参加者数: 約130名
- 主な参加団体: 江の島海水浴場協同組合、湘南レーベル、カリフォルニアジェネラルストア、岩崎学園、NAMIMATI、日本財団ヒーローズプレッジ、ソニー生命、他多数
活動内容:
- シティクリーン: 片瀬西浜から境川周辺の市街地清掃
- オーシャンクリーン: パドルボードで江ノ島の入り江に渡り、漂着ゴミを回収
- <2025年 江の島周辺 海水浴場開設期間>
- 片瀬西浜・鵠沼海水浴場: 7月1日(火)~9月7日(日)
- 片瀬東浜海水浴場: 7月1日(火)~8月31日(日)
- 遊泳時間や詳細は藤沢市観光公式ウェブサイト等でご確認ください。https://www.fujisawa-kanko.jp/event/20250613.html