
S.LEAGUE 特別戦「さわかみアジアチャレンジ」は、日本のJPSA(日本プロサーフィン連盟)がアジア各国のサーフィン組織やクラブと連携し、アジア全体の競技レベル向上を目指して開催している国際大会だ。
第1回は2022年、日本の釣ヶ先海岸で開催され、日本、インドネシア、スリランカ、ベトナム、台湾、フィリピン、タイの7カ国が参加。翌2023年はインドネシア・バリ島のクラマスで行われ、日本とインドネシアの2カ国で実施された。


今回で3回目となる「さわかみアジアチャレンジ」は、Sリーグ24-25ツアーの一環として、日韓国交正常化60周年記念大会として開催。韓国国内だけでなく、日本でも話題となっているWave Garden社のWave Parkが舞台となった。
参加選手は日本から24-25 S.リーグランキング1位の稲葉玲王、2位 小林桂、3位 西優司。女子は1位 中塩佳那、4位 川瀬心那、5位 清水ひなのと男女6名が出場。

韓国からは17日に行われた予選を勝ち上がった男子6名(カノア・パルミアーノ、チョン・ウイジョン、モク・ハジン、サル・チェ・ウン、チョン・リ・ヒョン、ヤン・ジン・ヒョク)女子3名(イ・ナラ、イム・スジョン、イ・ハリン)が本戦に駒を進めた。
今回のレギュレーションは男子、女子をそれぞれ二組に分け、ライトとレフトの波を交互に2本ずつライド。その4本の結果、ベスト2ウェイブカウントで、トータルハイスコアが高い選手2名がラウンドアップとなる。男子は2回戦って、決勝ラウンドへ。女子はR-1の後、決勝へというフォーマットとなった。
水の消費量を抑えながら、多様な波を提供できるWave Garden社のウェイブプールは、長く乗れる波とバレルに加え、多種多様な波を出すことができる。今回はT6という波で、プロ向けの波。バレルもあり、セクションごとにリップやカービングの組み立ても要求される、かなり戦略的な波と言える。

1回に7本の波が出現するが、最初と最後の波はパワーが弱いとされ、2本目から6本目に乗るのが良いとされている。その中からベストな波を選び、自分の強みをどう引き出すかが勝負の鍵。特に最後のセクションでのフィニッシュが評価を大きく左右した。
試合は日本人選手は全員が決勝へと進出。一方で、韓国代表選手もかなりの実力を見せつけた。特に、男子も女子も10代の選手が中心で、韓国サーフィン界の底上げと若手の台頭が確実に進んでいる印象だ。ここ数年で、日本やインドネシアと並ぶ存在になることは間違いないだろう。
女子優勝は中塩佳那。




その決勝は女子から。中塩佳那、川瀬心那、清水ひなのに韓国代表のイム・スジョンの対決。
R-1から安定したパフォーマンスを見せていた中塩は、決勝でもレフトで主導権を握り、ライトでは8.75、9.50というエクセレントスコアを連発。トータル18.25ポイントをマークし、他の選手をコンボに追い込む圧巻の完全勝利を収めた。
中塩の勝因は、パワーゾーンを的確にキープしながらセクションにしっかりと当て込むという、基本に忠実なアプローチをプールでも貫いた点にある。また、一つ成長の証が感じられた試合となった。

一本目から7点台を出せたので、すごい気持ち的にも楽だったので、あとは攻めるだけで、ちゃんと最後も決めれたのでよかったです。
試合だと、相手によっても戦術だったり作戦も考えないといけないので、頭使うんですけど、逆にプールだと自分のサーフィンでどうにかしないと点数でないので、逆にそっちの方が体力結構使いました。

(初代Sリーグチャンピオンを取った直後の試合で)プレッシャーはあったんですけど、プレッシャーには勝てる自信があるので、やっぱり自分のサーフィンに自信持ってやったのが勝因かなって思います。
新しいシーズンも北海道から参戦していきたいと思います。前後にCSだったりQSもあるんですけど、体調整えて、またSーONE初代チャンピオン取れるように頑張っていきたいです。
男子優勝は小林桂。





続いて男子決勝は、小林桂、稲葉玲王、西優司、韓国代表のカノア・パルミアーノの4名。中でも注目は小林。セミファイナルで今大会初の10ポイントライドを含む19.00ptを叩き出し、その勢いのまま優勝を勝ち取った。
前入りして事前に波の特性を知っていた小林は、プールの波を読み切り、ノートリムの4発&リップのバリエーションを変えるという離れ業を披露。見応え、完成度ともに申し分ないライディングだった。まさに「波をものにする力」が、次のステージに進化した瞬間だった。

「ありがとうございます。バックサイドで7点8点転けないで出そうと思って、1本目で9点が出せて自信が持てました。プールでの試合は波が絶対来るのが分かっているし、とりあえず10点も出せたので、自信のあるバックサイドだったので、いいタイミングで勝てて嬉しいです。」と小林が試合後語った。
「Sリーグの最終戦でグランドチャンピオンを取れなかったことは残念でしたけど、その時は、海の勝負で波も小さかったので。今回はプールの試合で本当に自分のサーフィンを出せるし、みんなと同じ本数の波に乗れてサーフィンの勝負で楽しくやれました。初めての韓国で、プールでの試合も初めて出場して優勝できて嬉しいです。」
アジア全体のサーフィンレベルの底上げ、そして世界で戦える選手の育成
今回の「さわかみアジアチャレンジ」は、単なる国際交流戦にとどまらない。JPSA / Sリーグが掲げる本大会のテーマは、アジア全体のサーフィンレベルの底上げ、そして世界で戦える選手の育成にある。
近年、インドネシア、フィリピン、中国、韓国といった各国の実力が着実に向上しており、アジアが一体となって世界に挑む時代が到来しつつある。それは、日本のサーフィン界にとっても極めて重要な意味を持ち、国内の競技力強化にも直結する動きだと言えるだろう。
S.LEAGUE 24-25特別戦 「さわかみ アジアチャレンジ韓国 24-25」
日程: 2025年 5/18 (日)
会場:15119京畿道始興市カメ島周辺42(地番:鄭王洞2690)サーフコーブ / 始興 WAVE PARK
ショートボード:男子
優勝:小林桂
2位:稲葉玲王
3位:カノア・パルミアーノ
4位:西優司
ショートボード:女子
優勝:中塩佳那
2位:川瀬心那
3位:清水ひなの
4位:イム・スジョン
プレゼンター:さわかみグループ代表 澤上龍氏
この大会は Youtube で生中継されました。
5/18 前半(8:45AM〜)
https://youtube.com/live/l0a5AUnZ_MQ
5/18 後半(3:00PM〜)
https://youtube.com/live/FJd01y-cQA8
ファーストライドセレモニーでは、サーフィン初挑戦となる水崵光一・駐韓大使が見事にテイクオフ。スタンディングに成功し、会場から大きな歓声が上がった。
日韓の青少年を対象にしたサーフィン体験プログラムも実施。四華奈良江(シファナレ)小学校とソウル日本語学校の生徒たちが参加し、日本と韓国の選手や協会スタッフがマンツーマンで指導にあたった。
今大会のゼッケンは特別仕様。肩部分には日本と韓国、それぞれの国旗がプリントされている。(写真は西優司選手)
ビーチインタビューを担当したのは、プロサーファーの高橋みなと。(写真は、稲葉玲王選手へのインタビューの様子)
会場MCは田嶋鉄兵プロとウォンテクさんのコンビ。日本語と韓国語のバイリンガルで、選手たちに熱のこもったアナウンスを届けた。
撮影クルーはライブ配信だけでなく、ジャッジ用のリプレイ映像も提供。プール会場ならではの工夫として、やぐらを組んで高所からの撮影を行った。
Wave Parkには大型ビジョンも完備。選手たちは自分の演技をリアルタイムで確認できる環境が整っている。
今大会で唯一チューブライディングを成功させたのは、韓国のイム・スジョン選手。見事なライディングでした!