日本プロサーフィンの新しいツアー「S.LEAGUE」。この記念すべき初戦は茨城県大洗町 磯場ポイントで水曜日からスタートし、本日が最終日。ショートボード、ロングボード、マスターズのチャンピオンが決まる。
会場は朝からは雲多めの、晴れ。風は弱いオフで、波はコシぐらい。サイズはあまり変わらずだが、昨日よりは乗りやすそうなコンディション。朝一は上げているので、ロングのセミファイナルからスタート。続いてショートボード男女のセミファイナルを行なって。すべてのカテゴリーのファイナルが行われた。
河野正和がマスターズで初優勝。
まずはマスターズから。決勝のメンバーは牛越峰統、原田正規、河野正和、今村厚の4人。牛越、今村が早めにポイントを積み上げる作戦か、来る波にくる波にライディング。原田、河野はじっくり波を待つ。セットをつかんだ原田がレフトの波で7.00ポイントにバックアップも出して、ヒートをリード。
河野もレフトの波で3発当てて、8.75ポイントを出し、再び波を待つ。今村はミドルの波で演技するも点は伸びず。牛越もセットを狙うが、波にパワーが無いのか、いまいちキレが無く、こちらもポイントが伸ばせない。
試合終了が近くなった時、原田がバックアップを上げて6.00ポイントでトータル13.00ポイント。この時点で、ニードが8点台となった牛越は優先権もアンダーだったことで、右へ一人移動。今村はインサイドで波をつかんで、当て込むも点は伸びず。
河野のニードは4.25ポイント。しかし、試合前に作戦は?の問いに「良い波を待って乗るだけ」と言っていた通り、セットの波での演技に7.00ポイントがついて、大逆転のコール。沖にいた牛越と波を叩いて、この優勝を喜んだ。
「Sリーグが始まりまして、その記念すべき第1戦で優勝できたことを光栄に思っています。」とマスターズで初優勝を決めた河野が語った。「いつもの通り自分は待つタイプなので、波が来れば逆転できると考えていたので、最後にミディアムサイズの波が見えたんでこれはイケると思っていきました。」
中塩佳那がショートボード女子優勝。
続いてショートボードの女子。セミファイナルで宮坂麻衣子を破った、中塩佳那。川合美乃里を倒した、川瀬心那のマッチアップ。川瀬はセミと同じ作戦。波が引いてきたとはいえ、まだ緩慢な状態だったので、前半でポイントを重ねていく作戦。
片や中塩もセミと同じで、優先権を持って、じっくり待つ作戦。波が来ないかもしれないという心配もどこ吹く風。自分で「メンタルは強い方」と公言する中塩だからできる戦い方だ。試合では少ないセットをものにして、エクセレント2本叩き出して圧倒。川瀬をコンビネーションに追い込んでの完全優勝だった。
「序盤、心那が1本で5点を持っていて、そのあとスコアが出来てなかったんで気持ちは少し楽でした。」と中塩佳那が語った。「でも変な波に手を出してしまってスコア出来ない時があったんですが、良い波乗って自分のサーフィン出せれば点数が出る自信があったので、セットを待って決めることができて良かったです。今年は海外の試合にも出て刺激をもらって、このSリーグの開幕に合わせて調整してきたので、その成果が出せて良かったです」
西優司が兄・慶司郎をファイナルで破り優勝。
続いてショートボードの男子。決勝は稲葉玲王との戦いで勝ち上がった西慶司郎に対するは、田中大貴を破った西優司。なんと兄弟での頂上決戦となった。兄の慶司郎は稲葉と戦った時と同じ、コンスタントにリズムよく攻めてポイントを積み上げて、相手にプレッシャーをかける。
反対に弟の優司は、セットを待つ。ポテンシャルのある波はレフトの方が多かったが、その波は速い。レギュラースタンスの優司にとっては、板の取り回しがスムースとなるバックサイド。
セミファイナルで田中大貴と戦った時もそうだったが、インサイドのクローズセクションまで連続で当てこむことで、この時はエクセレントの9.00ポイントを叩き出した。
決勝でも同じく攻め方は変えず、兄にプレッシャーをかけ続けて、そのままタイムアップ。長男の修司、次男の慶司郎と2人の兄に担がれての嬉しい優勝となった。
「なんとも言えないです。本当に嬉しいです。」と西優司が語った。「ファイナルは楽しんじゃって、あまり覚えていないところもあるんですけど、本当に良かったです。」
兄弟対決について聞かれると「慶司郎はグラチャン2回とって。上の兄二人がすごく上手いので、その背中を追いながらやってきました。去年1年はすごく悔しい思いをしたんですけど。良い時も悪い時もサポートしてくれたスポンサーの方に感謝しかないです」と涙で言葉を詰まらせながら語った。
ロングボードの男子優勝は浜瀬海。
ロングボードの男子決勝は浜瀬海、田岡遼平、堀井哲、森大騎の4人。波が引きいっぱいになる時間帯でセットはあるものの、沖から乗るとミドルで張らなくなるという難しいコンディション。これに手を焼いたのが、堀井、田岡、森。それでも、つないで、つないで演技を試みるが、点はさほど伸びず。
波のセレクトで勝敗自体が分かれたが、浜瀬が見せたインサイドでの演技は見事だった。崩れる速い波にもかかわらず、ハングファイブ、ハングテンでソウルアーチまで披露。どれだけ引っ張るんだというぐらい、ノーズに張り付いてみせた。結果、全員をコンビネーションに追い込んで完全優勝という結果。
「Sリーグ開幕戦で優勝できて良かったです。作戦はいい波を待って自分のサーフィンをすることだけを心がけていました。焦りはなく波は待てば来ると思っていたので、じっくり待ちました。今回の賞金は世界戦の方が多いのでそれに回します。湘南の試合のすぐ後にWLT第3戦がアブダビのプールで行われるので、それに出場します」
ロングボード女子優勝は田岡なつみ。
今日の最終ヒート。ロングボード女子のファイナルは、田岡なつみ、榊原頼子、吉川広夏、大橋寛子という顔ぶれ。結果は田岡と吉川の一騎打ちの様相となり、エクセレントの9.25ポイントを出した田岡が、追いすがる吉川を振り切って優勝。WSLのロングボードチャンピオンシリーズでの経験が、この結果にもつながった形となった。
「Sリーグ開幕戦優勝できて本当に嬉しいです。30分ヒートでいい波選ぼうと思ったんですが、来る波全部いい波に見えてしまって、前半波選び失敗したかなって思ったんですけど、自分のリズムを掴めたので良かったです。
9.25ポイントを出した波については、バックサイドは狙ってなかったんですけど、レギュラーの方がインサイドが難しかったので、レフトに振ったら張ってきて凄くいい波でラッキーでした」
これで開幕戦は終了。この「S.LEAGUE」は 2024年8月〜2025年4月がツアー期間となる。ショートボードが4戦、ロングが3戦のランキング戦となり、上位の選手のみが最終戦の「S.LEAGUE Grand Final」へ出場することができる(マスターズは全選手出場可能)システムとなっている。
「S.LEAGUE Grand Final」の条件は下記のとおり。
ショートボード:男子 36位以内、女子 18位以内
ロングボード :男子 24位以内、女子 12位以内
※ ツアーランキングの計算は対象となる各試合の獲得ポイントの内、最低ポイントの1戦分をカットした合計ポイントとなる。対象の試合が3試合以下の場合は、全戦のポイント合計となる。
この最終戦に向かって戦いは始まったばかり。次戦は9/15-16 ロングボード第2戦が神奈川県茅ヶ崎市 茅ヶ崎パーク(ヘッドランドビーチ)、10/17-20 ショートボード第2戦、マスターズ第2戦は静岡県下田市 多々戸浜で開催される。これからの「S.LEAGUE」の動向に要注目だ。
さわかみ S.LEAGUE 24-25#1
第28回茨城サーフィンクラシック さわかみ杯
ショートボード
男子
優勝:西優司(¥1,000,000)
2位:西慶司郎(¥400,000)
3位:稲葉玲王、田中大貴(¥225,000)
女子
優勝:中塩佳那(¥300,000)
2位:川瀬心那(¥130,000)
3位:宮坂麻衣子、川合美乃里(¥65,000)
ロングボード
男子
優勝:浜瀬海(¥500,000)
2位:田岡遼平(¥250,000)
3位:堀井哲(¥150,000)
4位:森大騎(¥100,000)
女子
優勝:田岡なつみ(¥150,000)
2位:吉川広夏(¥70,000)
3位:榊原頼子(¥50,000)
4位:大橋寛子(¥30,000)
マスターズ
優勝:河野正和(¥200,000)
2位:原田正規(¥150,000)
3位:今村厚(¥100,000)
4位:牛越峰統(¥50,000)
※ ( )は賞金額
Best Riding賞
ショートボード男子:西優司(9.00pt)
ショートボード女子:中塩佳那(8.50pt)
ロングボード男子:浜瀬海(9.50pt)
ロングボード女子:田岡なつみ(9.25pt)
マスターズ:河野正和(8.75pt)
特別協賛:さわかみグループ
協賛:株式会社 R.surfer
協力:I.S.U 茨城サーフィンユニオン
「S.LEAGUE」 https://sleague.jp/
「S.LEAGUE / Tour」 https://sleague.jp/tour.php
JPSA:HP
https://www.jpsa.com/
試合終了後、勝利者インタビューが海の中ですぐに行われた(西優司とインタビュアーは田中譲)
イベントの最後は各カテゴリーの優勝者に、オリンピアンの稲葉玲王のサイン会に多くの来場者が並んだ。