エイトン・オズボーン、ルーカス・キャシティ、キアラ・グールドがSTAB HIGH JAPANで優勝。

世界のサーフィン媒体で一線を画す「STAB」。その方針はサーフィンをカルチャーとしてとらえ、コンテストでも単なる結果にとどまらず、バックサイドストーリーやジャッジングなどその時の話題についても幅広く取材。ジェンダーや自然環境問題からプロサーファーのスポンサー契約や業界裏話など深掘り記事なども多く、オリジナルコンテンツではプロサーファーのサーフボード乗り比べなど、人気企画は多岐にわたる。

 

その「STAB」が従来の大会とは違う特別なイベントとして始めたのが、この「Stab High」というエアーショー。このイベントは独創的で、どれだけカッコ良いエアーを魅せることができるかを争うもの。参加選手はインビテーション制で、世界のエアースペシャリストが揃うコンテストだ。

 

Stab High Japan, Presented by Monster Energy Day One Highlights

 

 

当初は「BSRサーフリゾート」のウェイブプール(アメリカ テキサス)で2018年、2019年と開催するも、第3回となる2020年はコロナ禍により海に場所を移し、メンタワイ(インドネシア)での開催となった。2021年はコスタリカ、2022年レイキーピーク(インドネシア)と続いたが、本来のライブイベント形式に戻るために、今年は再びウェイブプールを会場に選んだ。

 

その会場は静岡県の静波サーフスタジアム by PerfectSwell。クラス分けは「プロ(16歳以上)」に「レディーバーズ(15歳以下)」に、今回から新たに15歳以下の男子クラス「ボトルロケッツ」を増設し、PPV(ペイ・パー・ビュー)ライブ放送で世界へも配信を行なった。

 

ノア・ディーン

 

出場選手は歴代優勝者で第1回のノア・ディーン、第2回チッパ・ウィルソン、第3回イアン・クレーン、第4回マット・メオラ、第5回ロビー・マコーミックはもちろんのこと、ハリー・ブライアント、ノア・ベッシェン、ジュリアン・ウィルソン、ルーク・スワンソン、メイソン・ホーら常連に加え、リーバイ・スローソン、ジョエル・ヴォーンなど才能あふれる若手エアリストらも揃う多彩な顔ぶれとなった。

 

Jacob Szekely
ジュリアン・ウイルソン

 

日本からは第4回に続き、二度目の出場となる大橋海人。さらに村上舜、三輪紘也(以上プロ)に、伊波優月(レディーバーズ)、岡野漣、枡田雷治(ボトルロケッツ)の6名がこのイベントに招待された。

 

優勝賞金は US $15,000。「レディーバーズ」「ボトルロケッツ」でもUS $5,000。さらにすべての部門の中で、最高にインパクトを残したエアーには「モンスター・エアー賞」として、賞金 US $10,000(ちなみに前回の第5回はレディーバーズを優勝したシエラ・カーが獲得)が贈られる。

 

マット・メオラ

 

ジャッジに関してはエアーの高さ、スタイル、回転性と角度、さまざまなグラブ、ランディングなどサーファーの創造性を考慮するも、爆発的な破壊力のあるエアーには高得点が与えられる。

 

ただし、メイクしないと0点。たとえ、ランディングしても不十分と判断されれば高得点は出ないし、技も1回目よりは2回目に難度の高い技にしないと点は伸びない。つまり、ジャッジを飽きさせず、クリエイティブな演技でメイクすることが求められた。

 

今回、静波サーフスタジアム by PerfectSwell側も、この「Stab High」に合わせ、演技しやすい波に再調整。選手はエアーに最適な「ハイボール」と呼ばれる波を使い、技の芸術性やスタイルを存分に魅せて競い合った。

 

 

 

初日のプロの予選が行われ、レフト、ライトを2回ずつ乗って、上位10名がセミファイナルへ。残りの26名がサドンデスラウンドでの一発勝負。今やフルローテは当たり前で、バリアルやビッグスピン、足を抜くフットオフのマドンナ、ジュードーなどのバリエーションも増え、最後の逆転に賭ける大技で会場を沸かせた。

 

レディーバーズ優勝はキアラ・グールド(タヒチ)13歳。
キアラ

 

2日目となる最終日は「レディーバーズ」、「ボトルロケッツ」、「プロ」のセミファイナルからそれぞれの決勝というスケジュール。大会結果は「レディーバーズ(15歳以下)」ガールズの決勝メンバーは、スカイ・スーツ、マディ・スタントン、パティ・チュウ、キアラ・グールドの4人。優勝はキアラ・グールド(タヒチ)13歳。安定したエアーのメイク率が勝負を分けた。

 

 

パティ・チュウ(中国)の12歳。

 

驚いたのは2位のパティ・チュウ(中国)の12歳。スノーボーダーということでスピードを出すことや高さにも慣れているのか、空中の姿勢が安定している。確実に世界へ出てくる選手となるだろう。

 

 

ボトルロケッツ優勝はルーカス・キャシティ

 

「ボトルロケッツ(15歳以下)」ボーイズはクルス・ディノファ、ルーカス・キャシティ、枡田雷治、岡野漣の4人。風の状況で、全てレフトの波での勝負となった中、ルーカス・キャシティ(メキシコ、アメリカ)がことごとくばBSのフルローテをビタ止めして優勝。

 

Ryji Masuda(枡田雷治)
Ryji Masuda(枡田雷治)
Ren Okano(岡野漣)
Ren Okano(岡野漣)

 

2位は今回、インディー、スロブと高さのあるグラブエアーを難なく決めた枡田雷治。3位はこちらも安定したメイクで岡野漣という結果となった。ボーイズはまだ発展途上とはいえ、見応え十分な試合となった。

 

優勝:エイトン・オズボーン
エイトン・オズボーン

 

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「プロ」はマット・メオラ、アルビー・レイヤー、ジェイコブ・ゼケリー、エイトン・オズボーンがファイナルに進出。その決勝のライト、レフト3本ずつで、マット34点、アルビー33点、ジェイコブ32点と1本ずつメイクしたものの1点差の戦い。

 

一人出遅れたのがエイトン。規定の本数を乗るもメイクできず、0点のまま。最後のボーナスのレフトをBSのSTALEFISH GRABのフルローテで 、なんと46点(ジャッジは9,9,9,9,10=46)で大逆転。エイトン・オズボーンの優勝が決まった。

 

 

「Stab High」が、ウェイブプールに戻った理由。

 

アルビー・レイヤー

 

革新的なエアーショーの祭典「Stab High」が、ウェイブプールに戻った理由。海では同じ波が来ないし、その時々の条件もバラバラ。審査基準を決めておいても、選手の演技が波次第になることは否めない。

 

その点、ウェイブプールなら選手全員の条件が同じとなる。選手が己の個性全開で、新しいトリックを披露して勝負ができるということが一番の理由。サーフィンが本来持っている自由であり、自らのエアースタイルを表現できて競え合える場には、ウェイブプールがベストということだろう。

 

新しいスタイルを表現することは、進化につながる。それがこのイベントの求めるところでもあり、それが海というフィールドではどう変化するのか。WSL、ISAやオリンピックでは成しえない、新たな可能性を見せてくれるのが、この「Stab High」なのだ。

 

 

「Stab High Presented by Monster Energy」

出場選手:
Pro Division(36名)
Rasta Robb(Robbie McCormick)
Harry Bryant
Shun Murakami(村上舜)
Dakoda Walters
Leon Glatzer
Levi Slawson

Chippa Wilson
Albee Layer
Shane Sykes
Oscar Berry
Joel Vaughan
Dane Reynolds
Ian Crane
Eithan Osborne
Kaito Ohashi(大橋海人)
Jacob Szekely
Kyuss King
Hayden Rodgers
Matt Meola
Luke Swanson
Letty Mortenson
Parker Coffin
Micky Clarke
Kael Walsh
Noa Deane
Mason Ho
Ivan Florence
Sheldon Paishon
Hiroya Miwa(三輪紘也)
Jake Kelley
Julian Wilson
Eli Beukes
Wade Goodall
Noah Beschen
Shaun Manners
Nick Marshall
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Ladybirds presented by YETI(10名)
Kiara Goold

Yuzuki Iha(伊波優月)
Kadyn Persidok
Zoey Kaina
Maddie Stanton

Patti Zhou
Leihani Zoric
Tya Zebrowski
Kaia Howard

Skai Suitt

Bottle Rockets presented by YETI(10名)
Ren Okano(岡野漣)

Arthur Vilar
Lucas Cassity
Jaggar Philips
Cruz Uros
Ryji Masuda(枡田雷治)
Cruz Dinofa
Caden Francis
Zacky Taylor
Loci Cullen

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Judges(6名)
Kolohe Andino
Lee WIilson
Dion Agius
Wade Goodall
Masatoshi Ohno(大野修聖)
Nathan Fletcher – Head Judge

Commentators(6名)
Dane Reynolds
Vaughan Blakey
Damien Fahrenfort
VictoriaI Vergara
Shane Dorian
Stace Galbraith

 

 

[大会結果]

大会名:Stab High 2024 Presented by Monster Energy
日程 :2024年6月22日−23日
場所 :静岡県静波サーフスタジアム by PerfectSwell
協賛:Monster Energy、YETI、Skullcandy、Sun Bum、Sambazon、
   GoPro、Perfect Swell、XCEL

 

[PRO]

優勝:Eithan Osborne(US$15,000)
2位: Matt Meola
3位: Albee Layer
4位: Jacob Szekely

優勝:Eithan Osborne(US$15,000)
2位: Matt Meola
3位: Albee Layer
4位: Jacob Szekely

 


[Ladybirds presented by YETI]

優勝:Kiara Goold (US$ 5,000)
2位: Patti Zhou
3位: Maddie Stanton
4位: Skai Suitt

 

優勝:Kiara Goold (US$ 5,000)
2位: Patti Zhou
3位: Maddie Stanton
4位: Skai Suitt

 

[Bottle Rockets presented by YETI]

優勝:Lucas Cassity(US$ 5,000)
2位:Ryji Masuda(枡田雷治)
3位:Ren Okano(岡野漣)
4位: Cruz Dinofa

優勝:Lucas Cassity(US$ 5,000)
2位:Ryji Masuda(枡田雷治)
3位:Ren Okano(岡野漣)
4位: Cruz Dinofa

 

[Monster Air]

Mason Ho (US$ 10,000)

[競技概要]

PRO:

予選ラウンド
36名のプロ選手を6人ずつの6ヒートに分ける。各選手はレフト2回、ライト2回をライド。すべての演技は0から50で採点され、選手はシングルハイスコアが得点となる。リーダーボード形式により36名の選手の得点を掲示、上位10名がセミファイナルに進出。
 
サドンデス
上位10名に入れなかった残りの26名の選手は、セミファイナルへの残り2枠をかけてサドンデス・ラウンドを戦う。それまでの予選ラウンドの得点は消去。各選手は最後に1本、ライトかレフトのどちらか好きな方向に波に乗り演技する。サドンデス・ラウンドの中のハイスコアの上位2名が、セミファイナルに進出。
 
セミファイナル
12名の選手は6名ずつの2ヒートに分けられる。各選手はレフト2回、ライト2回をライドし、シングルハイスコアがカウントされ、上位4名がファイナルに進出する。
 
ファイナル
ファイナリスト4名はレフト3本、ライト3本を乗る。ファイナルでは選手のベストレフトとベストライトがそれぞれカウントされる。6本の波をキャッチした後、各選手は好きな方向にボーナスウェーブが与えられる。全員がボーナスウェーブをサーフした後、ライトエア+レフトエアの合計が最も多かった選手が「Stab High 2024」のチャンピオンとなる。

 
LadybirdsとBottle Rockets:

セミフィナル
10名の選手を5人ずつの2ヒートに分ける。各選手はレフト2回、ライト2回をライド。選手はシングルハイスコアが得点となる。上位4名がファイナルに進出。

ファイナル
ファイナリスト4名はレフト3本、ライト3本を乗る。ファイナルでは選手のベストレフトとベストライトがそれぞれカウントされる。6本の波をキャッチした後、各選手は好きな方向にボーナスウェーブが与えられる。全員がボーナスウェーブをサーフした後、ライトエア+レフトエアの合計が最も多かった選手が優勝となる。

 

 

このイベントを楽しみにしていた多くの観客が、オープンと同時に列をなす。

ジャッジメンバーはネイサン・フレッチャー(ヘッドジャッジ)、コロヘ・アンディーノ、リー・ウィルソン、ディオン・アジウス、ウェイド・グッドオール、大野修聖とエアーに精通した6名で構成。

ジャッジパネルは5名。審査は10ポイント制で、小数点はなし。5名のジャッジ合計で、最高点は50ポイントになる。結果はリーダーボードに表示される。メイクしないと0点が並ぶ。

大野修聖はタヒチでの怪我で試合は辞退するも、日本人ジャッジとして参加。

会場内のMCは脇田泰地と久米大志。英語と日本語のバイリンガルで選手の紹介や演技を解説。

スポンサーブースやフードトラックなども多く出店して、会場に来たギャラリーをもてなす。

見ての通り楽しいフェスティバルであり、皆が集うパーティーでもあり、サーフカルチャーを代表するイベントが「Stab High」だ。

会場内には大型モニターを設置して、ライブ放送を見れるようにした。ここでリプレーも見れるし、ジャッジの採点や順位も確認できる。

コメンテーターはデイン・レイノルズ、ボーン・プレイキー、ダミアン・ファレンフォート、ビクトリア・ベルガラ、シェーン・ドリアン、ステイス・ギャルブレイスと超豪華。

スポンサーのモンスターエナジーは、来場者にフリードリンク。

地元からは牧之原茶のサービスが振舞われた。

今イベントの救急スタッフは、THE SURFSKATERESでもお馴染みのDr.Aこと岸暁。開始早々、治療に追われた。

キレた演技を魅せたのは、日本人として2回目の招待を受けた大橋海人。

ローカルの三輪紘也は地元応援の中、日本人最高位で15位と健闘。

エアーをメイクした三輪を地元応援団が拍手で迎える。

村上舜の高さあるパワフルな演技に会場からも歓声が上がる。

メイソン・ホーは初日、フットオフの「ジュードー(デッキに乗った前足を抜く)」で46点のトップ通過。結果、これがモンスターエアー賞を獲得。

ジェイコブ・セークリーのビッグエアーに会場もどよめく。

ニック・マーシャルはバックサイドダブルグラブ360を披露。

DAY-2

伊波優月は5位で決勝進出は逃したものの、きっちりエアーはメイク。これからが楽しみな存在だ。

今回のイベントのために特設観客席も設置された。普段はこの高さでは見れないので新鮮な感覚。

エイトンの最後の演技に選手やギャラリーは大興奮。ジャッジブースの採点は46点とコール(9,9,9,9,10=46)され、さらに歓声が上がる。