映画「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave」に出演の女優、松原奈佑さんにインタビュー

 

定年後にサーフィンを始めた中年男を故・大杉漣が演じ、多くの中年サーファーを生み出す影響を与えた2005年に公開の「Life on the Longboard」から14年を経て、その世界観を受け継いだ映画「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave」が5月31日に公開される。

 

舞台は前作と同じ種子島だが、前作とはまた違うストーリーが展開されているとのこと。今回はどんなWaveが起きるのか?!公開が待ち遠しい。

 

 

さて、その映画に出演の女優、松原奈佑さん。看護師でありながら女優というか、女優でありながら看護師というのか、両方の仕事をする新しいタイプのスーパーウーマンだ。

 

しかも、この映画をきっかけにサーフィンを始めたサーファーガール。松原さんに会い、ご自身のこと、サーフィンのこと、そして映画「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2nd Wave」についてショートインタビューをさせて頂いた。

 

 

 

 

インタビュー:米地有理子(http://digital.sirena-magazine.com/

 

 

ーまず始めに、看護師のお仕事をされているのですよね?そして女優さんもされているとはどういうことで?

 

はい、看護師として大学病院で働いていたのですが、東日本大震災の影響を病院内で経験し、今までの生きる価値観を変えられたというか、“どう生きるか”を考えるきっかけを与えられました。自分はどんな風に生きたらいいのか。生死に向き合っていく日々で、まだ生きていられる自分はどう在るべきなんだろうかと。

 

もともと人間が好きで小学校の時から女優さんになりたいと思っていたので、思い切って演劇学校に入って学ぶことにしたんです。

 

 

 

ーその中で今回の映画の喜多一郎監督に出会ったのですね?

 

喜多監督がオーディションを兼ねて演技を教えるワークショップを開講していらして、そこに参加したことが今回の出演に繋がりました。

 

ー役作りのために種子島で看護師として働いたと聞きました。

 

そうですね、約2ヶ月近く働きました。看護師の役は自分の経験を活かせる部分でしたが、離島の医療については想像がつかない部分がありました。実際に働いて島の事を知りたいのと、何か島の役に立てる事はないかなと思って。都心の病院で忙しく働く毎日でしたが、種子島の医療従事者の皆さんは仕事の前にサーフィンに行ったり、患者さんと海のことを話したり、リラックスした雰囲気でした。

 

 

–そういう方々と過ごしてどんな事を思いましたか

 

ライフワークバランスがすごく取れていて、こういう生き方をされている同じ職種の方がいるんだなぁと思いました。人に優しくされると、鏡のように自分も優しさを返せたりするじゃないですか。忙しさでピリピリするよりも先に、島の温かさやサーフィンに癒されて、自然に自分もゆったりした優しい気持ちになることが出来て。

 

働いていくって、形は変わってもずっと続いていく事だから、自分自身が元気を充電できる環境じゃなかったら人を元気にする事なんて出来ないと思うんです。

 

 

ー今回その充電としてサーフィンがあったのですね。サーフィンも種子島で経験されたと。

 

はい。この役をリアルに演じるために、サーフィンも特訓しました。ライディングシーンは、上手く乗れたら使うかも、と監督から言われていたのもあって笑。絶対に立ちたいなと思っていました。

 

でもある日、密着取材が入っていてその日しか撮影できないって時に、ちょっと波が強くて。夢中になっていたら何だか、肋骨が痛むんです。

 

病院にいったら肋骨が折れていて….実は周りには内緒で痛み止めを使って映画の本番に入りました。ここまで来たら絶対自分で乗りたいと思いました。今となっては笑い話ですね。

 

映画ではそんなライディングシーンを使って頂いています。是非観てください 笑。

 

 

ーサーフィンは初めてですよね?やってみてどうですか?

 

最初から恐いという気持ちはなかったのですけど、難しかったですね。でも波に押されて乗っていく感覚が面白くて。立てないと悔しいから立てるようになりたいと気付いたら夢中になっていました。あと波待ちも好きです。浮かびながら海を見ていると、自分の辛い事や悩みは小さい事だなと思えてくるんです。海や自然の雄大さに、自分の雑念が洗い流されるというか。

 

 

ーサーフィンにはまりましたね?

 

ですね!もともと海が好きだったのですが、これまでは仕事で地方や海外に行っても、“どこでサーフィンできるか” なんて考えることなかったのに、今はサーフポイントを探すようになったり、サーファーファッションをチェックする様になりました。

 

ロサンゼルスのベニスビーチでは何度もサーフィンしたのですが、波がパワフルで沢山来るんです!ハッピーになれて、めちゃくちゃ気持ち良かったです。今はスポンジ素材のロングボードに乗っているのですが、今度は少し短いボードにもチャレンジしてみたいな。

 

ー話を映画に戻しますが、映画撮影で心に残っていることは?

 

心に残っている事は沢山ありますが、特に撮影中私が凄く緊張していた時に、主演の吉沢悠さんがアドバイスをしてくださって。自分にも周りにも正直でいることが、緊張しないコツかなって事を教えてくださったんです。凄く有り難かったですね。

 

あとは竹中直人さんが、演技をしている時も楽屋に居る時も、本当にリズミカルで楽しそうで、色々とお話もして下さったり。それでリラックス出来たのか、竹中さんと撮影したシーンは一番自分らしく演技が出来た気がしているんです。

 

 

ー映画の舞台となった種子島はどんな場所ですか?

 

種子島は道端で会っても“こんにちは”って挨拶を交わすような、人が温かくて親しみを感じられる場所です。そして今回の映画や私の活動など、ユニークで新しい試みを広い心で受け入れてくれて、一緒にこの映画を創ってくださいました。勇気のある島だし、一人一人が温かくて、家族のように接してくれる優しい島だと思います。

 

病院でお世話した人が、ある時入ったケーキ屋さんの家族だったんです。家族の方がありがとうって、シュークリームを下さったことがあって。凄く美味しくて、優しい甘さで、一口食べたら温かくて泣きそうになりました。

 

ー松原さんにとって、この映画で得られたものは?

 

島の人達と出会えたこと、サーフィンが大好きな色々な人と出会えたこと、頑張っている医療従事者の方々と出会えたこと。こんな素敵なプロジェクトに参加できたこと。現在この映画の出演を通して、私の感じた事を講演する機会も頂いているのですが、この経験を色んな方々とシェアできる事で私もインスパイアされています。

 

ー今後の松原さんの夢は?

 

国際的に活躍できる女優になりたいですね。

 

 

ーでは看護師さんは当面お休みですか?

 

両方やっていきたいと思います。看護師と女優って、似ている部分があると思うんです。相手は何を見て何を感じてどう行動するかをひたすらに考える、人間追求学というか。

 

愛読書に ”人間とはケアをする生き物” という一節があるのですが、これは看護師、女優に限らず、今もこうやって私たちはお互いケア、気にかけあいながら対話しているような事をさしていると思うんです。それを追求するのが看護師でもあり、女優でもあると。演技を追求することで看護に良い影響を与えたり、看護を追求することで演技でこういう表現ができるというように相乗効果があればと思います。

 

種子島医療センターの看護PR大使も努める女優・看護師の松原奈佑さんは看護専門学校で公演を行った。

 

また今回の映画プロジェクトのように、女優であり看護師でもある私を取り上げていただいて、それが地域おこしになったりする。そんなユニークで新しい取り組みが、これから地方を盛り上げていく起爆剤になれば嬉しいです。

 

今、医療センターの看護PR大使をさせて頂いているのですが、看護師の働き方も多様化しています。私を通して看護のことに興味を持って頂いたり、いろいろな形でお役に立てる機会が増えればいいなと思っています。まだまだ未熟な所ばかりですが、自分らしく生きようともがき続ける事が、私の生きるっていうことかもしれません。

 

 

ーそれは新しいですね。まさにスーパーウーマン。最後に松原さんから映画のPRをお願いします。

 

サーフィンシーンは水中、空、陸、いろんな角度から撮影をしていてカッコいいです!波乗りっていいって思えます。自分の事ばかり考えていては、良い波には乗れない。受け入れて、自然と一つになる。そんな心も感じてもらえるかな。

 

人の温かさも感じてほしいです。種子島は波は豊富ですが、都会のように特別な何か遊ぶ場所がある訳ではないと思うんです。でもそれが良いところ。何もないからこそ、人の温かさや自然の美しさを感じられます。

 

それから私もそうですが、この映画の主人公のように誰しも順風満帆な人生ではないと思うんです。そうした中で何かをやりたい、頑張りたいという人を応援するエネルギーを持った作品になったと思います。この作品で元気になってくれる人が増えたらと願っています。是非観てくれたら、嬉しいです。

 

 

 

松原奈佑(まつばら なゆ)

 

神奈川県出身。奈良橋陽子UPSアカデミーを卒業後、ハリウッドで俳優Robert Ruslerや、ニューヨークActors Studio正会員に師事し、演技を学ぶ。出演作に「手をつないで帰ろうよ〜シャングリラの向こうで〜」(16)、日韓合作映画「風の色」(18)、そして2019年5月31日から公開のライフオンザロングボード セカンドウェイブ。ラジオのレギュラー番組にFM鹿児島ラジオ「Life on the long board」”松原奈佑の奈佑トーク”。女優でありながら、現役の看護師でもあるという異色の経歴の持ち主。その知識と経験は最新作ライフ〜で演じた奈緒役の看護師としてのふるまいに生かされた。また現在全国で「自分らしく生きる魅力」「魅力ある働き方」へのコツをシェアする講演会を行い、好評を博している。

https://www.instagram.com/nayu_matsubara/

 

 

映画オフィシャルサイト:http://www.lifeonthelongboard2.com/

https://www.facebook.com/LifeOnTheLongboard2/