『THE SURFER’S JOURNAL』日本版は、米サーファーズ・ジャーナル社発行の隔月誌『THE SURFER’S JOURNAL』のフランス語に続く外国語バージョン。本物の“SURF CULTURE”を日本のサーフィン愛好家たちに向けて発信。『THE SURFER’S JOURNAL』同様、美しい印刷で紹介される素晴らしい写真は読者を虜にする。
そんなサーファーズジャーナル26.6(日本版7.6号)となる最新号が3月5日(月)発売になった。
<フィーチャーストーリー>
今号の日本版のオリジナルコンテンツは、1990年代に突如、世界同時多発的に起こったロングボード・ブームを筆者、李リョウがカメラマンの目線で当時の熱狂ぶりをふり返った。
NEO LONGBOARD DAYS 「ポテトテップス狂騒曲」
ロングボード・リバイバルからまもなく30年、近代サーフィン史のマイルストーンとなった異例のブームを振り返る。
文:李リョウ
30年近く過ぎた現在、俯瞰でその1990年代を振り返ってみると、このブームはサーフィン史のうえでも異例の出来事だったと総括できる。SNSもiPhoneもまだ普及していない時代に世界で同時にこのブームはブレークした。
これは1960年代にアメリカの西海岸で起こった『ギジェット』のブームと比肩できる。このギジェットとロングボード・リバイバルの共通点は、サーファーの世界だけの流行りごとだけに止まらず一般の人々にまで影響を及ぼして、大きなブームとなった点にある。
つづいてのストーリーは、非対称サーフボードのいち考察だ。人体の構造とライディング時のメカニズムの差異に着目した著者は非対称サーフボードこそが理にかなっていると結論づけた。
IN UNEQUAL MEASURE 「非対称サーフボードの明日」
人の目を欺くかのような不自然な湾曲かもしれないが、非対称サーフボードは究極のバランスを求めた自然な結末だ。
文:スチュワート・ネットル
「非対称サーフボードの発想は人体の構造に由来している。人体は左右対称である。つまり1本の対称軸で成り立っている。それは頭から股間を貫いた対称軸が中心となって左側と右側に分けられる。一般的なサーフボードも左右対称であり、ストリンガーが軸となる。
だが問題は、身体とボードの軸は、けっして並列ではないということだ。ライディング時の両足(スタンス)は、ボードの軸の上に90度の状態で立つために、それぞれ左右に不均衡を生じさせる。この状態でサーフボードをコントロールするとなると、まったく異なるふたつのメカニズムで身体を制御する必要がある。それらはつま先荷重と踵荷重である。この違いを体験するには平らな地面にライディング・スタンスで立ち、つま先側と踵側に荷重してみればすぐに理解できる。
つま先と踵のターンには大きな差異が存在するが、広いフェースでの大きなターンの際、ターンの違いを補完し動きを調和させるために、要所となる足首から膝、そして腰に関していえば、どちらのターンにおいてもほとんど違いはないと思ってよい。しかしながら短い弧を描くターンに関しては、人体の構造上の短所が明らかになる。
ブルース・ブラウンといえば昨年末に亡くなったサーフ・ムービー界の巨匠であり、大ヒットを記録した映画『エンドレスサマー』の生みの親である。その映画製作50周年を記念して、あのスミソニアン博物館にフィルムが永久所蔵されたことでも話題になった。
Let’ Do It!
Bruce’s Beauties「ブルースズ・ビューティズ」
史上もっとも人気を博したサーフィン映画の50周年を迎え、これまでアーカイブされていた監督撮り下ろしの秘蔵のスチール写真が公開された。このブルース・ブラウンのコレクションを観に、多くの者が殺到したという。それにともない限定リリースされた『The Endless Summer』のボックスセットが話題を呼んだ。マイクとロバートが日付変更線を越えるときに流れる、ザ・サンダルズと共演するワリー・ジョリスの魂のメロディカは相変わらずたまらない。
THE CALVES OF COPPER RIVER「カッパーリバーの挑戦」
ギャレット・マクナマラが仲間と敢行した、サーフィン界でもっとも大胆不敵なプロジェクト。およそ10年前、その場に居合わせた本稿の著者キンボール・テイラーは、当時の濃密な体験を今も鮮明に覚えている。
文:キンボール・テイラー
都市が水面から垂直に屹立している様子を想像してほしい。半月状に広がるウォーターフロントは幅が1マイル、その高さは30階建ての高層ビルに匹敵する。スーパーマンの生まれ故郷、クリプトン星の建物みたいに氷晶で形成された構造物は、白または深みのある半透明のブルーに染まり、水辺に連なるタワーの奥には、密集したメトロポリスが白いルーフに覆われて高く突き出している。
氷塊はゆっくりと時間をかけて静かに流動しつづけ、やがて水際に達すると、すさまじい勢いで崩れ落ちていく。ベルトコンベアに運ばれて破壊へと突き進むのだ。ときにはアイス・シティーの街区まるごと消滅することもある。そんなとき、ごくまれに水面のどこかでゴーストのように美しい波が出現する。
氷河の末端部から数百ヤード離れていた私たちの耳にも、近くで雷鳴か大砲を放ったときのような轟音が飛び込んできた。アラスカ州カッパーリバーに到着した初日、かつてビラボンXXLグローバル・ビッグウェーブ・アワードの勝者となったギャレット・マクナマラは、私を見据えたままこう言った。「あれを見たら、ブッ飛んじまうよ」
FAVORS OF FORTUNE「ロンボク島、デザートポイントの秘密」
文:スティーブ・バリロッティ
1983年、ロナルド・レーガンはGPSテクノロジーを文明社会の発展に活かすことを公約していたが、衛星ナビのマトリックスには、まだ広範な地域が暗いままに残っていた。だがバリ島の東22マイルのロンボク島はその範囲ではなかった。ジャワ海と西オーストラリアを深い海溝でへだてるロンボク海峡は、アメリカ、ソ連、どちらの陣営にとっても戦略的に重要な場所だったのだ。
低空の軌道を回る人工衛星がとらえたハイレゾ画像は、視る者によってまったく違う意味を持っていた。動物保護の意識を持つ地球生物学者なら、海峡の真ん中に走る”海のベルリンの壁”、あの有名なウォレス線が、アジアの鳥や生物種とニューギニア、オーストラリアの種を分けていることに即座に気づいただろう。
ロンボクを探査するKGB職員なら、ヌサ・ペニダとセコトン半島の端のあいだのわずか12マイルの狭い海溝が3,000フィートの深さがあり、核サブステルス機じゅうぶんに通過可能なことを見て取っただろう。だが、NOAA(国立海洋大気庁)とつながりを持つサーファーだったら、セコトン半島のいくつかのポイントに、スピードのあるラドン船でわずか1時間たらずでたどり着けることに注目しただろう。
Portfolio: Ryan Miller
The Straight Story「真実」
ライアン・ミラー:技術、道具、そして努力がWSLへの道をひらく。
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