今年、晴れてJPSAプロ公認を得た金尾玲生。アマ時代は複数回の日本代表を経験し、サーフスケーターズではチャンプを4回取るほどのスタイルマスター。その金尾玲生が、ここまでプロ資格にこだわった理由とは。
Photo / S.Yamamoto
Text / S.Yamamoto
ープロ公認おめでとう!この結果に至るまで、去年から何か変えたことってあるの?
そうですね。実際、全日本のタイトルを取った後は自分もすぐに上に行けると思ったんですけど、うまくいきませんでした。下からの世代もどんどん出てきたし、やはり自分の中で、とても悔しかった思いがあります。今年最後にしようと決めたこと、それが一番大きいと思います。で、今年も結局、最後のトライアルでプロになれたんですけど。本当に最後、そこで何をしたらプロになれるのかを考えて、試合に臨みました。
今年はトレーニングもパーソナルでやってもらって、あと食事の管理もトレーナーと話しながら進めました。朝起きて、調子良いし。やはり一日のスタートが全然違うんですよね。炭水化物を夜には取らないとか、それだけの小さいことですぐに実感できました。朝昼はしっかり食べて、夜は野菜だけとか。夜は寝るだけなので、そんなにエネルギーは要らないですから。
ただ、自分はスポーツやっているので、取らなさ過ぎも良くないので、いろいろ考えてやりました。あと整体のスポンサーもしてもらっているので、その整体の先生とかといろいろ話しながら、身体のメンテナンスも行ったりしました。
ー今年が無理なら最後にしようって言っていたけど、本当にそう思っていた?
本当にそうですね。自分の中では腹をくくって、決めていました。結局、いつも来年あるからという考えを毎年、心のどこかで思っていたんでしょうね。今回、絶対に決めると毎回思いながら、もし、ダメなら来年って。だから、自分にもっとプレッシャーをかけないとダメだなって。だから、これで無理なら辞めると自分に区切りを付けて、今年で最後と決めていました。
去年、本当に自分にベストをつくしたのか?って。実はノーだったんですね。トレーニングとかしたんですけど、まだまだ足りないし、自分で思っている範囲じゃダメなんだなっていうのを実感して。何が足りなかったのかというと、それは努力もあるし、そこまでの準備が完全でなかったと思いました。
今年、取れなかったら辞める。辞めたら普通に仕事をしようと。サーフィン関係でも、違う分野の仕事をしても良いと思っていました。決めていたことは、スポンサーを全部辞めようって。それだけは考えていました。で、仕事やって、休日にサーフィンする生活を漠然ですけど想像しました。
でも、結果が出るまでは、今出来ることに集中してプロになるんだということを思っていました。あとでプロになれなかった時に、もう一度、考えようって。
ー改めて聞くけど、これは資格でしょ。玲生のやりたいことは、その資格がないと自分の夢が叶えられないのかな?玲生はサーフスケートのキャラを持っていて、スポンサーもたくさんあって、もうプロなんじゃないの?
自分はサーフィンだけで生きて行きたいと考えています。なので、他の仕事とかしながらだと、プロって言えないんじゃないかと考えています。なので、これ一本で稼いでいくプロとしてやっていきたいからこそ、この資格を取りたかったんです。
ープロスポーツという部分で日本の基準に乗っからない限りは、自分のやりたいことができない。だから、資格は取らなきゃいけないということ?プロとしてスポーツ選手として活躍したいということかな?
日本はそういうシステムだからしょうがないのかもしれないですけど。自分は日本にいる以上、資格を取らなければいけないと考えていました。スタートはそこからですから。
ただ、プロで成績、結果を出すのは当然だ思うんですけど。そこに憧れ、スター性がないとダメだと思うんですよね。 この人みたいになりたいと思われなきゃ、ダメだなと思っています。アスリートとして、野球選手、サッカー選手と同じようにならなきゃいけないと思うし。サーフィンってトレーニングもそうですけど、競技自体もつらいじゃないですか。やっていても命がけだし。もっと注目されないといけないスポーツだと思うんですよね。
それを広めるにはどうしたらいいのか。選手一人一人の意識を変えないといけないと思うんです。そこを少しでも自分の力で変えられたらと。もちろん結果は大事ですけど、普通のプロサーファーになりたくないんです。自分はサーフスケーターであると思うし。そこをアピールしていきたいと思っています。
ーコンペをちゃんと経験した上での、フリーサーファーになりたいだね。だからこそ資格にこだわったんだ。
その通りかもしれません。自分のベースはサーフスケートですし。西さん(西岡昌典)、大地君(関根大地)、洋之介君(佐久間洋之介)とかの先輩がいて。そして、勝又さん(勝又正彦)、蔵人さん(真木蔵人)から引き継いだものが大きいと思っています。自分が在るのは、そのおかげです。やはり、ベースはそこだから。だからこそ、日本のプロ資格にこだわったんだと思います。
ー最終的なゴールは?
自分をもっと確立していきたいです。最終的なゴールとして、サーフィンをやっていない人にも「金尾玲生」を知ってもらいたいです。自分のスタイルを通して、サーフィンの素晴らしさを知ってもらいたいなと思います。自分の中で憧れであるのは、勝又さんなんです。スゴイなって思うし、自分もそういう存在になりたいって思います。いずれは一時代のムーブメントを築くようになれたらって。
ーということはオリジナルになりたいということ?
自分をブランドにしたいじゃないですけど。「勝又正彦」って、完全なブランドじゃないですか。そのように成れたらカッコいいですよね。でも、それより自分が係わるカルチャーに、少しでも爪痕が残せたらって、そんな風に考えています。
ーコンペをしっかりやって、カルチャーの世界の理解を深めさせる。他にないスタイルという部分で、プロサーフスケーターということなんだね。
そうですね。いかに自分を表現できるかだと思います。なので、春に新しい動きをやります。自分を知ってもらう手段でもあるし。こんなこともできるんだって知ってもらいたいから。普通のプロサーファーになりたくないんですよね。だから、コンペもカルチャー、どっちもやっていきたいです。サーフスケータズだけでなく、いろんなことやって。アスリートなんだけど、その中でもまた違ったアスリートという存在になりたいです。
プロ公認を取る以前から、サーフィン、スケートで実力を発揮。サーフスケーターズではチャンプを4回取るほどのスタイルマスター。その金尾玲生がなぜここまで、JPSAのプロ資格にこだわったのか。それを知りたかった。
サーフィンはライフスタイルになり得るスポーツ。ただ、今の日本のサーフィンはカルチャー色が強い。サーフカルチャー誌が増えた理由に年齢層が上がったこと。それにより、コンペよりも、スタイルにこだわる編集内容になっている。それはお金を使う層もここだからだ。それに加え、未だ日本はコンペの世界で結果が出ていない。だから、カルチャーの世界がもてはやされる結果になっていると推測される。
本来、このカルチャーとスポーツ(コンペ)の両面があることで、お互いが輝けるはずだ。だから、今の日本はいびつな状況だと思う。そして、これすら理解できていないのが、日本の現状だ。
このままでも十分活躍の場所は確約されていたと思う。玲生はこの部分を肌で感じ、サーフスケートのベースがあるからこそ、それにこだわった。そのために敢えてコンペの資格に挑戦し続けた。単にプロになるということではなく、自身の存在意義への証明なのかもしれない。
プロスポーツの世界は厳しい。敢えてそこに踏み入れたのも、自分の人生をやりぬくという欲求からなのだろう。自分のやり方でいい。型にはまる必要はない。人間にはいろんな才能があるのだから、何にでも挑戦することができる。改めて玲生はそれを教えてくれた。
取材協力:RIKI RIKI DELI TEL 0467-89-3544 http://www.rikirikideli.com/
名前:金尾玲生
生年月日:1992.6/24 23歳
スポンサー:RVCA,Joistik Surfboard, QUIVER, NIXON, DRAGON, C1RCA,
Black Line, Futures, SEXWAX, Rsurf, Samudra bill, 69slam, RSURF, Ezick, Exseed,
Glasslab, ラポール整骨院, シンビホーム, 藤本軌道
神奈川湘南、茅ヶ崎生まれ、茅ヶ崎在住。
サーフィン歴: 13年
スケート歴 : 13年
実績:2008年ISA World Junior Surfing Championship 日本代表(フランス)
2009年 The SurfSkaters 総合優勝
2010年ISA ISA World Junior Surfing Championship 日本代表(ニュージーランド)
NSA 全日本ジュニアクラス 優勝
The SurfSkaters 総合優勝
2012年 ASP World Junior Championship 日本代表(インドネシア バリ)
The SurfSkaters ラウドネスクラス(25歳以下)優勝
2015年 JPSA公認プロ資格獲得
The SurfSkaters ビアマスタークラス(23~27歳以下)優勝