ジェイミー・オブライエン・インタビュー『JOBとしての生き方』

ジェイミー・オブライエン・インタビュー『JOBとしての生き方』

 

レッド・ブル・ウェブ・シリーズ「Who Is JOB? 」で人気爆発、 命知らずのヒーローとして知られる、JOBことジェイミー・オブライエン。自分の庭であるパイプラインで、サーフィンスキルに磨きをかけ、想像もつかないアイデアで、エキセントリックにサーフィンを楽しんでいる。コンペシーンでも素晴しい成績を収めた彼が、いま何を考え、何処に向っているのか。『JOBとしての生き方』を聞いてみた。

 

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interview by Emiko Cohen  photo:gordinho

 

SURFMEDIA(SM):ジェイミー、久しぶりだね、元気だった?


JOB:元気です。ありがとう!


SM:昨日、ワイメアの河口をたまたま通り過ぎたら、すごい人だかりが出来てて、うちの子が『ジェイミーが何かやってるんじゃないの?』って言ってたんだ。そしたらその夜、ジェイミーのインスタに河口のサーフィンが載せられていた。http://blog.swell.com/waimea-river-surfing


JOB:そうなんだ。たまたまプーピーズ(Who Is JOB? 」に登場して来るジェイミーの仲間)が川上から沼地までのスノースキーしてるところを撮影する為にいたんだけど、撮っている最中に河口が開いていることに気がついて、15人位で一時間掘りあげて(河口を広げて)サーフィンしたんだ。


(ワイメアの川は普段は海まで繋がっていない。川の水量があがりすぎると役所がブルトーザーを運んできて河口を広げていたが、川の水と海の水がぶつかる部分で出来る波を楽しむ為に、最近は川が一杯になると若者たちが自然に集まり、河口を広げ、波乗りを楽しむ様になった。その為、行政は出動しなくて良くなった。)


俺自身も『他にはないキャラ』への変身に成功したってことかな。

 

SM:プーピーズといえば、ジェイミーの「Who Is JOB? 」、かなりキテルよね~。ヤバイ。キャストは世の中に二人とない様な人間だし。オーディションとかあるの? 何人くらいで作ってるの?https://instagram.com/whoisjob/


表に出ているクレイジーな人間は俺を含めると3人。オーディションなんかはないよ。『類は友を呼ぶ』っていうけど、自然にうちに欲しいキャラが集まる様になったんだ。フィルムプロダクションは裏に付いているけど、基本的にこの3人がメインキャラ。

 

コンセプトは『限界にチャレンジ』で、俺自身もどこまで行けるか、どこまで奴らを追いつめるか常に探りながら作品を作っているんだ。予想してたより好評で、自分でも驚いてる。俺自身も『他にはないキャラ』への変身に成功したってことかな。(笑)

 



SM:怪我したりとかはしないの?


今までに大きな怪我は一度もない。だって意外と普通の事をしてると思わないかい? ていうか、これ以上は無理っていうところには、手をつけないようにしてるんだ、あれでも(笑)。でも考えてみてよ、道を歩いていても転んで怪我をすることもある。それを考えると逆に俺たちは、鍛えたりしてマインドトレーニングも積んで行ってることだから、安全だよ。


SM:でも、動画をみると、多くの場合はジェイミーじゃなくて、プーピーズがやってる。プーピーにヤバイ役を押し付けてる訳は?


プーピーズはサーファーじゃないからね。彼のキャリアの為にもああいうのはいいんじゃないかと思ってね。


SM:てことは、プーピーズ自身、喜んでやってるってこと?


う~~ん、ノー、、いや、イエス。アイデアを出して「次はお前コレやれよ」って勧めると、最初は必ず「やだ」と返ってくる。2度目の誘いも「やだ」と。だけど3度目には大抵「うん」と言ってくるんだ(笑)。ヤツはサーファーでない分、波乗りとは関係ないところでキャリアを積まないと、、というところを彼自身もわかってるみたい。彼自身もやった後は「やって良かった」と喜んでるのも見ててわかるし。

 



SM:楽しい???


楽しいよ。(インタビューしているテーブルの後ろにある洗濯機に向かっているプーピーズに声をかける)プーピーズ、楽しんでるかい??

プーピーズ「楽しいよ!今までに味わったことないくらいの楽しさ(笑)。」


SM:プーピーズ以外にビデオ作りに拘る人たちらしき人がたくさんタムロってるけど、一緒に住んでるの??喧嘩とかはしないの?


たまーにね。ルームメイトよりも友達といる方が楽しいし。ケンカ??
たまにあるけどね。俺がプーピーズをやっつける方。笑。ま、、お泊まり会が続いてるって感じで最高楽しいよ。


この話しをしながら 以前、同世代のローカルサーファーたち(フレッド・パタチアや、ジェイソン・シバタやショーン・ムーディー)が地元の子だけのグループを作っていたのだが、ジェイミーはそこに加わらず、ブラジルから来たサーファーなどの世話をしたり、応援したりしていた。母親がオーストラリアからの移住者だったという事の影響か《サークルの外の人間を勇気づける》人情身溢れる一面がある事を思い出した。


SM:下水道をサーフボードで降りたり、ロッキーの辺りに出来た路肩の水たまりをベットマットで滑ったり、ケイキのショアブレイクに浮き輪で突っ込んだり、ワヒアワの橋からのバンジージャンプとか。。普通の人だったら、あんな事をやろうとは考えてもみないよね。アイデアはどこから来たの?


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Who is JOB 3.0 – Mattress Surfing – Ep 4

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Who is JOB 3.0 – Sewer Surfing w/ Poopies – Ep 6

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Who is JOB 4.0 – Flying Bikini Babes in Hawaii – Ep 4

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Who is JOB 4.0 – Tubing & Shorebreak Madness – Ep 2


“最終的にはリアリティー番組として、テレビが拘ってもらう事が目標なんだ。”

 

スポンサーのレッドブルから「大衆を驚かすような動画を作れないか」って言われたのが動画を作る様になった切っ掛けだったんだ。で、考えたのは、たとえばテレビでもシリーズで流されてる《jackass》なんかは『決して自宅では真似をしないでくださいね』系のクレイジーなことをやってるけど。

 

俺はサーファーだから、海に関するものにすればいいものが出来るんじゃないかなと。その方向で作り続けているんだ。アイデアはその時の海の状況や、自然が作る状況に合わせて、誰かが出してきては試してる(笑)


SM:この先はどんな方向に流れていく予定?


今も様々なクリップを撮影中なんだけど、これからもどんどん作っていく予定。最終的にはリアリティー番組として、テレビが拘ってもらう事が目標なんだ。

 

2004年12月念願のパイプライン・マスターとなる

 

 

 

ツアーを廻ってみたら、満足してない自分がいることに気がついたんだ。


SM:ちょっと真面目な話しになるけど、小さい時は普通にサーフィンの世界チャンピオンを目指す普通のサーファーだったよね。


そうだね。子供の時は普通に学校行って、普通に放課後はサーフィンしてた。普通にコンテストにも出てね。もちろん「いつかは世界チャンピオン」なんて考えてた。けど、実際にその道を追ってみたら「いかに詰まらないことか」がよーくわかったんだ。


SM:何がきっかけでツアーから離れようと思ったの?


うん、実際にツアーを廻ってみたら、満足してない自分がいることに気がついたんだ。大会の波は良くないことが多かったし、旅に出ていた為に、パイプのセッションを何度も逃したし。ハッピーになれない状態でツアーを続けてても無駄だなって思ったんだ。


SM:でも未だに大会には出てるけど、やはり未練があるから?


ノーノー。サンセットとハレイワ、タヒチとパイププロくらい。あまり気にかけてないよ、大会の結果は。パイプマスターズに出たいからポイント稼ぎの為に、出てるんだ。


SM:それだけパイプにこだわる訳は?


波が好きなんだ。奇麗に決まったチューブの波は最高だ。サーファーにとっては試験場とも言えるよね。世界中から多くのサーファーがパイプの波をやりにくる。自分の力を認めてもらう為にもこのの波で波乗りをしてみせるのは大切なことだと思うし。

 

子供の頃から仲良しのジョンジョン(右)とジェイミー

 

 


SM:ジェイミーと同じ様にパイプの前で育ったジョンジョンがワールドツアーで成功しているけど、その事に関しては、どう思う? パイプの大会なんかでジョンジョンがいたら「絶対やっつけたい」とか言う気持ちになったりする??


いつだってジョンジョンは「やっつけたい相手」だよ。海の中だけじゃなくって陸にいてもね(笑)。。。というのは冗談。彼の技術はケリーに匹敵するものを持ってるし、きっとこれからもハワイに錦を飾り続けてくれるだろう。そんな有能なヤツが自分の仲良しの友人だということを俺も誇りに思ってるんだ。

 

きっと5年前だったらまた違った考えだったと思うけど、今は心から応援してるんだ。彼の家族の成功も同時に祈ってる。いい人たちだから。もちろんパイプのセッションなんかで横に並んでると、ちょっとしたコンテストみたいな気分でお互い競いあう。いい刺激をもらってるよ。


SM:パイプでのジェイミーの位置は《神様的》なものだと思うけど、廻りがそういう目で見ることに関してどう思う?


うん。嬉しいことだよね。しかもナイスな人たちが多いし。どうすればいいの?と聞かれるときには、大切なポイントを伝授してあげたりはする。だけど、あまり人とのコネクションは持たないようにしてるんだ。パイプでの波乗りは集中力が必要だからね。少しでも油断すると乗れなくなるだけでなく怪我もすることもある。

 

沖での知り合いをたくさんつくると、「この人に波を譲った方がいいかな?」とか、「あの人には笑顔で挨拶しておこう」とか、いろんな事を考えだしちゃう。そうなると力を発揮出来ずに終わっちゃうからね。

 


 

平坦なライフなんて詰まらない。俺は自分を「崖っぷちに追い込む」のが好きなんだよ


SM:パイプではソフトボード使ったり、2枚のボードをスイッチしたり、ふざけてるでしょ? 波が良いときに「もったいないとは思わないのかな」と。あの意味は?


廻りのサーファーが真面目に取り組み過ぎてるような気がしてね。。。。ここでレールを掴もうとか、あそこでストールさせようとか。。。サーフィンって元来「楽しくてなんぼ」のものだろ? ある意味、そこを周囲にアピールしたいって意図もある。

 

それに俺、23年もパイプやってるんだぜ。何か新しいことにチャレンジすることで《パイプのチャレンジが新鮮》に感じることが出来る!アドレナリン駆け巡らせてパイプチャージする為に、色々な工夫をしてる。平坦なライフなんて詰まらない。俺は自分を「崖っぷちに追い込む」のが好きなんだよ(笑)。

 

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《このクリップをみるとジェイミーがいかにエキサイトしてチャレンジしていかが伝わってくる。彼の表情はまさに始めてパイプを経験したサーファーの様に活き活きしている。》

 


SM:ソフトボードとかエアーマットとか、ときには普通のボードとか使うけど、それぞれに使う技術は違うの?


もちろんだよ。ソフトボードで特に6フィート以上の波を乗りこなすのは、完全に乗り手の技術に掛かってる。相当な技術が必要。だから面白いんだけどね(笑)。何せ、どこに板が向かってくれるのか予測が付かない。瞬間瞬間に操作していく。「魔法のじゅうたん」を操作するジニーの様な気分でね(笑)

 

SM:ちなみにスタイロフォームのボードでパイプマスターズに出ようと思ったことは?


(笑)実は、、ある。ただそれで勝ってしまった場合、今あるサーフィンの定義をヒックリ返すことにもなりかねない。サーフィンファンの目とかスポンサーの気持ちとか考えるとプロの領域を荒らすことが良いんだろうかと疑問に思うところがあり、まだやってない。

 

SM:ジェイミーがやってるクレイジーなチャレンジが、そのうちスポーツとして認められる日が来ると思う?


それは、、う~ん、わかんない。ただスポーツにして認めてもらおうという気持ちよりも、、、そうだね、、、ジェットスキーを使ってみたり、いろんな事をしてるけど、子供の頃だったら「危ないから辞めなさい」と大人に言われて諦めさせられたことを、今大人だから夢を現実にできるからやってるような、ある意味リベンジ的な意味もある(笑)。

 

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SM:サーフボードのトコロがスポンサーに付いているけど、「コストコで115ドルで買えるソフトトップ」であんだけ上手く乗っちゃってる姿が表にでると、あまりシェイパーにとっては嬉しくないことじゃないかと思うけど、トコロとの関係は上手く言ってるの?


実は、その件をウエイド(トコロ)にメールしたんだ。「ソフトトップをどう思う?」ってね。最初のメールでは「ソフトトップをしらない」と返事が来たから次のメールに写真を添付してメールしたんだ。その後、返信来なかった。

 

SM:実はこの前、トコロにインタビューしにいった時に、ジェイミーがソフトトップを使うことをどう思うかって質問したんだ。


(身を乗り出し)え?え?え? なんて言ってた???

 

SM:あまり芳しくはないけど、ジェイミーが楽しいって思ってやってるんだったら、いいんじゃないかな。サーフィンで大切なのは「楽しむこと」だから。


わ~お、ウエイド(トコロ)ってなんてナイスガイなんだ!長い付き合いの中で、彼は俺のことをいつも理解してくれてる。本当に感謝してる。

 

1997年、ブリューワー、デリック・ドーナーと世界チャンピオンを夢見ていたJOB

結局、人は「楽しんで物事に取り組んでいる人」を見たいんだと思う。

 

SM:ジェイミーは家族とかいたんだっけ? 子供いたっけ?


いるいる。プーピーズとダミアン(笑)。冗談。ノーノー。いない、いない。まだ体力あるし、若いし(31歳)、やりたい事が一杯あるから、この先5年はあり得ないね。落ち着いた時に家族を持つことを考える様になると思う女の子を追いかけなくても、家族を持ちたいと思える女性に巡り会えるチャンスはこの先にたくさんあると思う。。パイプに家を持ってるしね(笑)。

 

SM:最後に、、やっぱり端から見ると「まだまだ行けたんじゃないかな」とか「もっと頑張れば良かったのに」とか思ってたんだけど、ツアーを辞めて今のソウルサーファー的な道を選んだ選択は間違ってなかったと言える?


結局、人は「楽しんで物事に取り組んでいる人」を見たいんだと思う。俺はツアーが楽しくなかった。あのまま続けていても「誰も人を惹き付けることが出来なかった」と思うんだ。ツアーをキッパリ辞めて、体力的にも充実しているうちに方向転換したことは良かったことだと思う。パイプの前に家を構えることが出来たのも方向を変えた御陰だし。

 

夏場の波のない時には波乗りだけじゃなく、スペアフィッシングで魚釣りで夕食を採ったり、深海に潜って奇麗な貝を拾ったり、山にイノシシ狩りに出たり、パイプの波を逃すこともなくなったし、ハワイをいろんな角度から楽しめる様になった。

 

とくにダイビングに関してはライセンスもとってから、知識も増えて、殺してはいけない魚は活かし、食用にしてよい魚を自分の家の前の海で採り、食卓にあげることが出来る様になった。「俺、すげーこと出来ちゃってる」って嬉しくなる(笑)。ツアーを廻っていたらこうはいかなかったと思う。こういう人間がサーフィン界にいるのもありかな、と。

 

ジェイミー・オブライエンのオフィシャル・フェイスブック

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