キース・マロイ・インタビュー/“Come Hell or High Water”

 

マロイ三兄弟の長男、クリス・マロイは、これまでクリエイティブな才能を遺憾なく発揮し、フィルムメーカーとして数々の作品を手がけ高い評価を得てきた。しかし、クリスの作品作りを永年にわたり陰でサポートしてきたひとりに、次男のキース・マロイがいるということを知る人は少ないだろう。彼もまたサーフィンに対する熱い思い同様に、フィルムメイキングに対しても静かな情熱を抱いてきた。そんなキースが満を持して初めて監督した作品が、ボディサーフィンをテーマにした“Come Hell or High Water”である。今回キースは、今作の共同プロデューサーでもあるマーク・カニンガムと音楽監督を務めたトッド・ハニガン、そして出演者のひとりであるベリンダ・バグスらとともにプレミア試写会のために来日した。初の監督作品となった今作について、またボディサーフィンの魅力や思い入れについて語ってもらった。


第一章:なぜボディサーフィンなのか 第二章:極めて高い映像クオリティ 第三章:ボディサーフィンの魅力


photo&text:takashi tomita

“Come Hell or High Water”は、徹底的にボディサーフィンのみを追求した作品という意味で、実にユニークである。体ひとつで波に乗るという極めてシンプルな行為を捉えた点では、昨今のオルタナティブ・サーフィンの究極に行き着いた感もあり、実に斬新かつ決定的な切り口だ。どのようなアイデアやコンセプトからこのフィルムは作られたのだろうか?

SM: このフィルムはあなたの初監督作品でしょう? テーマや内容はあなたのアイデアだったの?

K: 以前に5分くらいの短いフィルムは撮ったことはあるけど、43分という長さのフィルムを撮ったのはこれが初めて。監督としてこれが初めての大きなプロジェクトだった。ボディサーフィンをテーマにしたフィルムは、私と兄(クリス・マロイ)とマーク・カニンガムとで長い間話し合ってきたテーマなんだ。マークは実際に友だちと20数年前にボディサーフィンのフィルムを作っているだけど、最近は誰も作っていない。私はいまがちょうどいい素晴らしいタイミングだと思ったんだ。

SM: なぜボディサーフィンをテーマにしてフィルムを作ろうと思ったの?

K: 私にとってボディサーフィンは、コンテストで勝負した後の気分転換だった。コンテストの合間のとてもリフレッシュできる休息みたいなものなんだ。コンペティティブなサーフィンから一息つくって感じかな。ボディサーフィンもサーフィンの一種ではあるんだけど、サーフボードを使わないし、なによりもエゴがなくてシンプルなものだと思う。それをみんなに見せたかった。

SM: なぜ“Come Hell or High Water”というタイトルにしたの?

K: 私と兄が気に入ってつけたタイトルなんだけど。正直言うとそれ以外にこれといった理由はないんだ。意味は「何が何でも」。フィルムとの厳密な関係性や意味はないんだ。とても広義な意味だし、自分がやりたいことは何でもやり遂げることができるってこと。なぜか私はこの言葉が好きなんだ。実際にはフィルムの内容よりは、製作プロセスとリンクしているかも。多くの困難を乗り越えて完成まで漕ぎ着けたからね。

SM: フィルムのなかにはたくさん無名のボディサーファーが出ていたよね? キャスティングのコンセプトは?

K: キャスティングは共同製作者のマーク・カニンガムの尽力によるところが大きいね。彼がたくさんの友人のボディサーファーやボディサーフィンのコミュニティを紹介してくれた。プロジェクトに取り組み始めたとき、多くの人が私にこう言ったんだ。「君はケリー・スレーターやトム・カレンやロブ・マチャドやデイブ・ラスタビッチと仲がいいじゃないか。彼らはみんな素晴らしいボディサーファーでもあるだろ。彼らを起用しろよ」って。でも私の考えは違った。彼らはサーファーだ。彼らをキャスティングしたらサーファーがボディサーフィンするのを撮ることになる。でもこのフィルムは真のボディサーファーを取り上げるべきだと思っていた。結果的にほとんど無名な人ばかりだけれど、このフィルムは真のボディサーファーをキャスティングしてこそ価値があるものだと信じている。

SM: キャスティングも含め、マークの存在は大きかった?

K: もちろん。マークはボディサーフィンに対する知識が豊富。だから私は一日おきに彼に電話をし、フィルムのディレクションや方向性を相談したりしたんだ。彼がいてくれることはとても心強かった。彼がこの映画作りに果たした役割はとても大きいよ。出演者としてもカメラの前に立つカタチで関わってくれたし、マークこそが世界最高のボディサーファーだと思っている。

 

第一章:なぜボディサーフィンなのか 第二章:極めて高い映像クオリティ 第三章:ボディサーフィンの魅力