自由の意味を求めて男ふたりが旅をする、というストーリーはどうやらアメリカ文化に根付いた古典的なスタイルらしい。古くはアメリカ文学の名作「ハックルベリー・フィンの冒険」がそうだ。さらにはアメリカン・ニューシネマの代表作「真夜中のカウボーイ」、「イージーライダー」なども同様のスタイルを踏襲しているといえる。「イージーライダー」の劇中、アル中の弁護士役のジャック・ニコルソンは主人公のふたりにこんなセリフを呟く。「アメリカ人は個人の自由についてはいくらでも語るけど、実際に自由な個人を見るのは嫌なんだよ」。言い得て妙だ。
そういえばサーファーという人種にも真に自由な人間が多いようだ。もしアメリカの古典になぞらえて、ふたりのサーファーが自由の意味を求めて旅をしたら…。カリフォルニアの映像クリエーター、サイラス・サットンの最新フィルム『Stoked&Broke』は、まさにそんなロードムービーだ。
1月に日本でもDVD(日本版)がリリースされる最新作『Stoked&Broke』について、さらには彼が主宰する”Korduroy TV”について、サイラス自身が表現したいメッセージやヴィジョンを聞いてみた。
Special Thanks/Laid Back Corporation, Cinema Amigo Text &Photo : :Takashi Tomita
▶今作品を作ろうとしたきっかけは? |
まず今作品『Stoked&Broke』を作ろうとしたきっかけは何だったのでしょう?
ここ10年ほど、僕はプロサーファーを追いかけて世界中を旅してきた。最近は遠いところへ旅しないと楽しめないと誰もが思いがちだよね。だから、その逆のものを作りたかった。莫大な費用をかけずに、遠くにトリップしなくても楽しい時間を過ごすことができることを見せようと思ったんだ。 もともとは私のウェブサイト”Korduroy TV”の中でのシリーズ企画にするつもりだったんだ。でもラホヤでヴァンに住んでいるニーボーダーのスティーブ・ファーガソンと出会い考えが変わった。自由な人生がどんなに素晴らしいものかという話を期待していたら、逆に彼は自由だけを追い求める人生に対する訓話をしてくれた。自分の自由に責任を持つように、と。これがこの作品の発想の原点。そして、ウェブ用の短い映像ではなくてドキュメンタリー作品を作るべきだと考えた。オーストラリアを舞台とした前作の『Under the Sun』は、入念に撮影計画をたてて制作に3年を要した。でも今回はドキュメンタリー作品として、流れを自然に任せることにしたんだ。お陰で、物事を自然に任せることの美学のようなものを今回学ぶことできたよ。 |
▶途中の人びとの反応はどうでしたか? |
このフィルムの中であなたたちふたりは、手製のリヤカーを引いて無一文で野宿しながら旅するわけですけど、途中の人びとの反応はどうでしたか?
ホームレスに間違われることはなかった。僕たちが波を楽しみ笑顔でいる限り、この旅はうまくいっていたよ。廃材や竹から自分たちの手だけで作ったリヤカーも、僕たちのDIY精神を満足させてくれた。ボードも自分たちで作ったものが結構あったしね。一見すると路上生活者に見えるかもしれないけど、僕たちは楽しい波でのサーフィンを満喫していた。だから旅の間ほとんど僕たちは笑っていたんだ。サーファーもサーファーじゃない人も、それを感じてくれたと思う。彼らは僕たちの笑顔を見ることで、僕たちが楽しんで満足していることに気づいたんだ。もし幸せでポジティブなエネルギーに満ちていて、それを発していれば、物事は悪い方向にはいかないものだよ。それこそこの映画の伝えたいことさ。 |
▶旅の途中での様々なサーファーと出会い |
旅の途中で様々なサーファーと出会いますが、彼ら年配のサーファーたちからどんな影響を受けましたか?
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▶今作『Stoked&Broke』で伝えたいメッセージとは? |
あなたは、DIYやハンドメイド・クラフトの価値を紹介し、物質主義の現代社会を問い直すコンセプトのウェブサイト”Korduroy TV”を主宰していますが、今作『Stoked&Broke』も含めて、あなたが伝えたいメッセージとは?
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▶あなたのフィルム作品に通底する理念は? |
あなたのフィルム作品や”Korduroy TV”に通底する理念は、シンプルに生きることの提案なのでしょうか?
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▶最後に今後のプロジェクトや展開について教えてください。 |
“Korduroy TV”は今後もずっと続けていくよ。サイトをリニューアルしてさらに充実したカタチにするんだ。いまはブログっぽいけど、今後はもっとコミュニティとして機能するサイトにしていくつもり。個人的にはここ何年か忙し過ぎたので、いろんなことを自分が学ぶために、もうちょっと時間の余裕を持ちたいな。非物質社会にも投資したい。もちろんサーフィンも楽しむよ。波やサーフィンはいつだって僕たちサーファーをワクワクさせてくれるものだからね。これは海からの贈り物なんだ。毎朝起きて波を見るのは、毎日新たなプレゼントの箱を開くようなもの。難しい波に挑戦しようとか、ある特定のボードに乗ろうとか、うまくサーフィンしようとか考えず、自分にプレッシャーをかけないで、ただ海に入り純粋にサーフィンを楽しめばいい。もっとワクワクして、そのワクワク感やインスピレーションを他の誰かと共有すれば、サーフィンや人びとや社会をさらに愛せるようになる。ポジティブなバイブをシェアすれば、人生はもっとよくなるはずだよ。 |
▶プロフィール |
1982年12月16日生まれ。カリフォルニアのオレンジ・カウンティ出身。カリフォルニアの映像クリエーターとして昨今注目を集める。若くしてロングボードの才能に恵まれるが、コンペティションやサーフィン界の商業的な部分には早くから冷めていた。映画制作はほぼ独学。初フィルムは20歳のとき。その処女作”Riding Waves”は、Xダンス・フィルム・フェスティバルでベストシネマトグラフィー賞に、またビッグアイラインド・サーフフィルム・フェスティバスでベストフィルム賞に選ばれる。スマトラの北端でのサーフエイドの活躍をドキュメントした”Next Wave: A Tsunami Relief Story”ではエミー賞に輝く。サーフフィルムとしては前作となる”Under the Sun”でも数々のフィルムフェスティバルでアワードを多数受賞。クリエーターとしての信条はシンプリシティー(質素さ、簡素さ)の美しさを表現すること。著名サーファーをキャスティングしただけのありがちなサーフフィルムとは違い、独自の価値観と理念に基づいた視点で描くユーモラスな社会派のドキュメンタリー作品が多く、世界的にも高い評価を得ている。数年前から、DIYやハンドメイドやシンプルライフなどの価値を紹介するウェブサイト”Korduroy TV”を主宰。サンディエゴ・カウンティのエンシニータス在住。 |
▶『Stoked and Broke』トレーラー |
▶上映スケジュール&DVD情報 |
パタゴニアストアー上映スケジュール ————————– 1/12(木)19:30~ 大崎 03-5487-2101 定員80名 1/13(金)19:30~ サーフ東京 03-5469-2101 定員60名 1/14(土)19:30~ 名古屋 052-950-7721 定員40名 1/20(金)19:30~ 神戸 078-334-7117 定員40名 1/21(土)19:00~ サーフ千葉 0475-40-6030 定員50名 1/28(土)19:30~ 福岡 092-738-2175 定員40名 2/3(金)19:30~ 大阪 06-6258-0366 定員40名 ————————– ・全て事前予約制/有料開催となります。 ・ご予約・お問合はパタゴニア開催ストアまでご連絡下さい。
Stoked & Broke DVD |