ディスカバリーインドネシアⅡ〜スンバ、その2。「コモドドラゴンと怪我の功名」

ディスカバリーインドネシアⅡ〜スンバ、その2。「コモドドラゴンと怪我の功名」 


 

再開された「ディスカバリーインドネシア」。東西南北、四方を海に囲れ、年間を通じて良質なスウェルが打寄せるインドネシアの知られざる波の魅力に迫る。 2シーズン目を迎える今年も、世界が認める有数なサ-フィンデェスティネ-ションをクロ-ズアップし、年間で5つのロケーションを紹介していく予定。 未だ見ぬ魅惑のサーフスポットへの旅を楽しんで欲しい。

 

 

 

前回のおはなし。スンバその1「トラブルこそが、その旅の思い出」

 

波乱含みで始まったスンバ・フローレンス島ボートトリップ。早朝からすったもんだを繰り返しながら、ようやく目的地であるフローレンス島ラブハンバジョ空港に降り立ったのはその日の午後の遅い時間であった。この空港の近くの港から波を探訪するためのボートに乗り込む予定になっていたのだ。

 

乗り損ねた午前便から午後便に振り替えると、日本からこの旅に参加するクルーたちが搭乗する便に潜り込むことができたのは不幸中の幸いであった。それはボートに乗り損ねるという目もあてられない状況からは免れることができたことを意味していた。

 


 

トラブルは容赦なく再び我々の上に降り掛かってきた。

 

ホッとしたのも束の間、トラブルは容赦なく再び我々の上に降り掛かってきた。なんと日本からのクルーたちのサーフボードの一部が飛行機に載せられていなかったという驚愕の事実がラブハンバジョ空港で発覚したのだ。

 

「機体が小さいので全てのサーフボードが積めなかった」というようなことをなんら悪びれる様子もなく堂々と胸を張って説明する職員にカリッと腹を立てながらも、「まあここはインドネシアだから」と諦める他なかった。

 

今回の旅には波伝説の加藤社長を隊長に、9名のクルーが参加することになっていた。OMツアーの佐藤さんが旅のサポート全般を引き受け、サーフボード置き去り事件の対応も迅速に行ってくれた。

 

サーフボードが届かないというサーフトリップにあるまじき事態にも加藤隊長は、あくまでも前向きな姿勢を崩さず、「ま、これがインドネシアだからね」といかにも呑気そうにビンタンビールをグビリと飲む姿を前に、我々もなんとなく「そうか、ここはインドネシアなのだ。いたしかたなし」という具合に心が静まっていくのであった。

 

 

翌早朝に届くであろうサーフボードの到着にやや不安な思いを抱きつつも、フローレンス島の港での時間を楽しんだ。今回の我々の寝床兼レストラン兼移動手段であるサマサマ号に乗り込み、「まあ、とにかく、とりあえず」ということでビンタンビールのプルタブを引き、イヤな流れを一掃するように旅の安全を願いつつ乾杯をした。釣りをする者、SUPでクルーズする者、ビンタンビールを飲み続ける者。それぞれがこの空白の半日を楽しんでいた。

 

 

翌朝、奇跡的に?全てのサーフボードが無事港に届き、サマサマ号は晴れて出港することになった。小さな島を縫うようにスンバ島を目指してずんずんと船は進んでいった。それにしても小さな島が多い。別にインドネシア政府の肩を持つ訳ではないが、そりゃあ政府も自国の島を見落としてしまうのも無理がないとさえ思った。

 

出港して数時間が経つとサマサマ号のエンジン音に変化があった。「お、サーフスポットに着いたか?」そんな期待とともに甲板に出てみるが波はどこにもなかった。眼前にはただ荒涼たる島がそびえているだけであった。

 

 

猛獣の潜む島に完全丸腰状態で近づく。

 

サマサマ号のガイドであるオーストリア人クラウスの説明によるとその島にはコモドドラゴンが生息しているという。名前からしていかにも強そうな印象を受けるのだが、実際もなかなかの凶暴な大トカゲであるらしい。もし間違えて噛まれてしまったら唾液に含まれている猛毒に犯されて死を免れることができないと言われている猛獣だ。

 

怖いもの見たさに駆られて、我々はサマサマ号からディンギー(小舟)に乗り込みその島に近づいてみることにした。当然私もディンギーに乗り込もうとするとフォトグララーのノブさんに「あ、できればSUPで行ってくれる? 光もいいし、いい写真になりそうだから」と。

 

そんな猛獣の潜む島にSUPなどといった完全丸腰状態で近づいていっていいものだろうか。そんな迷いを抱く間もなくノブさんはさっさとサマサマ号スタッフにSUPの準備をさせ、私はSUPとともにやや不気味な濃緑色の海へと放り出されてしまうことになったのだ。

 

SUPでコモドドラゴンに接近

 

 

浜辺に近づくと白い砂浜に、いかにも恐竜然とした大トカゲの姿を確認することができた。重そうな体を引きずりながら私の姿を視界に捉えると「ん? なんだ?」とばかりにまっすぐと私の目を見据えてきた。警戒しているのか、歓迎しているのか、その表情からは読み取ることはできなかった。しかしその風体はなんとも不気味で、間違って襲われてしまったらひとたまりもないであろうことは火を見るより明らかであった。

 

そんな私の内心を知ってか知らぬかノブさんはディンギーから「はい、もうちょっと近づいて! そうそうもっともっと。はいっ、そこで止まって!」などと指示を出してくる。いくら写真のためとはいえ、こちらも命懸けだ。いきなり猛獣が襲ってこないとも限らないのだ。


 


 

サーフボードが届かなかったことで本来夜中に通過するはずだった島々の姿を見ることができたり、美しい小島でシュノーケリングをしたり、天然コモドドラゴンと遭遇したり。半日のロスも意外と悪くなかった。いや、これはむしろ『怪我の功名』といってもいいのかもしれなかった。なんとなく旅の始まりの不穏な空気が徐々に晴れていっているような気がした。

 

つづく

 

前回のおはなし。スンバその1「トラブルこそが、その旅の思い出」

 

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有本圭(ありもと・けい)

バリ島在住プロサーファー。2000年〜2007年までJPSA(日本プロサーフィン連盟)ロングボードツアーでシード選手として活躍。その後、雑誌、webなどで執筆活動を行い、サーフィンや旅をテーマに啓蒙活動を行っている。

有本圭のブログ→ http://sw-players.com/

 

 

Nobu Fuku / 福与 乃二彦

サーファー&フォトグラファー。最高の波を求め1994年にインドネシアのバリ島へ移住。バリ島をベースにインドネシア各地で水中撮影をメインに活動、 サーファーの視点から自然の素晴しさを伝える作品創りに努める。

Nobu Fuku Photography  http://www.nobufuku.com/

 

協力:波伝説ガル-ダインドネシア航空BLUEOMtour