カノア五十嵐が起こした波紋。彼が日本人としてCTを戦うことに対するアメリカ人の予想外の反応とは。

カノア五十嵐

 

写真、文:李リョウ

 

アメリカのサーフラインに掲載されたカノア五十嵐の記事は、彼の決断が大きな波紋をアメリカ人に投げかけたことを示している。もちろん、それはカノアが日本人として今年からCTを戦うと決めたことだ。

 

 

その記事のタイトルが「Kanoa Igarashi to Surf For Japan — And Not Everyone is Stoked.(カノア五十嵐は日本のためにサーフするーー喜んでる奴は誰もいないよ)」というもの。

 

SNSにそのニュースが流れたとき、多くのコメントは彼の決断を支持する好意的なものだったようだが、なかには“Sad day to see an ‘American’ kid defect. Traitor!”「アメリカの若者が去っていく悲しみの日」とか、“Nice American Pride!” 「これこそアメリカの誇り」などと皮肉ったコメントも見受けられたと記事には書いてある。

 

自分のホームであるカリフォルニアのハンティントビーチで行われたUSオープンで悲願の初優勝 WSL / Kenneth Morris
自分のホームであるカリフォルニアのハンティントビーチで行われたUSオープンで悲願の初優勝 WSL / Kenneth Morris

 

 

それは、よく考えてみればカノアがいかにアメリカで期待されていたサーファーだったかという見方もできる。

 

この記事のためにサーフライン編集部は、オーストラリアレッグに向かう準備中のカノアに突撃インタビューを試みた。そこで彼はこう答えた。

 

「ずっと考えてきたことなんだ。僕はアメリカで育ったけど僕の家は家族全員が日本人で、家のなかでは日本語で会話している。日本は僕のルーツだからね。オリンピックもあるからいい時期かなと思ったんだ」

 

さまざまな反響については「まるで戦争みたいにアメリカのために戦うのをやめて、日本のために戦うというわけじゃあないんだよ」と笑った。

 

「アジアのサーフィンには若い世代の目標となるリーダーが必要なんだ。この素晴らしいスポーツのために一般の人々からの注目を浴びるような役割も努めたいんだ」

 

 

 

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カノア五十嵐のサーフィンは進化を続けている CREDIT: © WSL / Cestari

 

 

カノアはアメリカで認められ、愛されていたプロサーファーだった。

 

さて、彼の決断はもちろん2020年のオリンピックを見据えてのことだ。IOCからの最終的な選抜基準などの詳細は発表になってはいないが、カノアが日本を選んだことで彼がオリンピックに出場する可能性は高まったことは確かだ。

 

子供の頃はハンティントンでいじめられないようにサーフィンをがんばったというコメントもしているカノア。以前日本でインタビューしたときは「差別なんてぜんぜん感じたことない」と笑顔で答えていた。いやあそんなことはないでしょうとは僕は思っていましたが、やはり彼も努力して大きな壁を乗り越えてきたんだなあ。

 

日本では彼の決断に好意的な声が多い、でもアメリカでこのような反応が起きると日本で誰が思っただろうか。少なくとも僕は予想さえもしていなかった。もうすでにカノアはアメリカで認められ、かつ愛されていたプロサーファーだったんだなとつくづく思う。

 

これがもし逆のパターンだったら日本はどう反応しただろうなとちょっと考えてしまった。とにかく東京オリンピックのサーフィン種目で日本人が表彰台に立つ確率が高くなったことは確かだろう。カノアのこれからの活躍を期待したい。

 

参照記事:

http://www.surfline.com/surf-news/i-always-wanted-to-be-good-enough-at-surfing-to-have-haters-he-laughs-kanoa-igarashi-to-surf-for-japan—-and-_151877/