波乗りジャパンの個人戦は全て終了、国別順位は暫定6位。チーム戦アロハカップ出場

小笠原由織 Photo: ISA / Ben Reed

 

写真、リポート:永島未知子 ビアリッツ、フランス、

 

「ISA World Surfing Games フランス2017」の大会8日目。朝は前日襲来した夕立の名残を思わせるようなくもり空だったが風はほぼなく、波の面はキレイ。サイズも前日に比べると上がり、引き潮に向かうタイミングではセットでムネ、上げ潮になってからはセットでムネカタほど。陽がのぼるにつれ青空も出始め、ラウンド3から始まった試合はこの日クォーターファイナルまで進行。波、天候、レベルとヒートが進むにつれて盛り上がっていった。

 

 その中で波乗りジャパンの最高成績は小笠原由織と田中大貴のラウンド4進出。2人ともヒート内3番目で終了し、大会個人成績は17位。大音凛太はラウンド3をヒート内3番目となり個人成績を33位とした。

 

 現地レポート最終回となる今回は選手の感想コメント、一問一答からそれぞれの試合を振り返ってみたい。

 

小笠原由織

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 まずは小笠原由織選手。自身と同じラウンド4で3番目となった田中大貴選手のラウンド4が終わった時点で話を聞いた。

 

—大貴くんのヒート、どんな気持ちで見ていましたか?

 

「僕は負けちゃったので、少しでも勝ってほしいと応援していたんですけど」

 

—由織くんの本日の試合は自分でどう思っていますか?

 

「あまりいい波がつかめなくて、つかめていれば…。波のセレクションが難しかったです」

 

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ラウンド3は他の選手同様に乗る波、得点に伸び悩んだが、最後の1本で4.67を出し4位から2位にアップ。逆転でラウンドアップした

小笠原由織 Photo: ISA / Ben Reed
小笠原由織 Photo: ISA / Ben Reed

ラウンド4は積極的に波にチャージ、ターンやカービング以外にもエアにトライするなどバラエティをみせたが、得点に結びつかず。逆転に必要なのは4.85と射程圏内だったが、その1本がこなかった。スタッフさん思わずつぶやいた“ミラクル由織”が降臨ならず、残念。

 

—今回ラウンド4まできましたが、出場前はどこまでだと?

 

「目標はベスト16に残ることでした。その1つ前でしたね」

 

—この大会自体を通して学んだことはありますか?

 

「世界戦は応援が大事なので、次は9月に宮崎であるISA 世界戦ジュニアに出られるとしたら、しっかり応援して自分も頑張りたいです」

 

—日本で応援してくれた人に一言ありますか?

 

「次の世界戦ジュニアに出られたら今回よりもっといい結果を出すので、応援よろしくお願いします」

 

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前日に夕立のせいで本日の朝、持ち越しとなった幻のラウンド3について聞くと「ホームの湘南は風波だから(同じような風波コンディションが)すごい嬉しくて、めっちゃ勝てるー! ってめっちゃ自信あって。でも中止になっちゃってショックだった」。しかし結果、風波でなくても勝ち上がりました! 17歳の由織くん、明るく、そして“持って”ますね

 

田中大貴

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 次は田中大貴選手。フォーストコールがされる前に朝一番のフリーサーフィンで板の感触を確かめていました。それもラウンド3でCT選手のフランス、ジョアン・ドゥル選手と当たるため。しかし終わってみると、本日の田中大貴にとってのハイライトはラウンド4へと移動。CT選手のジェレミー・フローレスとの戦いにあった。

 

—今日の試合ラウンド3、4を振り返ってみてどうですか?
「昨日に比べて身体の動き、サーフィンの調子は悪くなかった。もちろん欠けていた部分はあるけどサーフィンのレベルとして全然かけ離れているのは自分的には(CT選手から)伝わらなかった。でももちろんトップで加重のインパクトをつけたり、ジェレミーのようにスピードをつけてインパクトのあるサーフィンをしたりと学ぶところはもちろんありました。

 

田中大貴  Photo: ISA / Sean Evans
田中大貴  Photo: ISA / Sean Evans

 大貴くんがこの試合に出たかった一番のモチベーションはCT選手が出るということ。組み合わせの妙と勝ち進んだことにより、その2人と戦えた。

 

—ジェレミー・フローレスとの試合では何か発見はありましたか? 
「ジェレミーを見ていたら、今日の同じヒートはずっと動いていた。セットを待って待って乗るよりもきた波に乗っていた。それでやっぱり上手いから5点台の波をよく見せて6点、7点台にする。エクセレントの波ならエクセレントな点数が出やすいと思うけど、うまい選手は良くない波を良く見せる。

 

ジェレミーは決してヒートの中で一番いいグーフィに乗ってはいないけど、ミドルの形のいい波を乗っていたりとかそういう動きが早い。そこは見習いました。スピード、ボトムからのスプレーの量もすごかったし、そういうのはヒートを一緒に戦ったからわかったことでした。

 

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ラウンド3の田中大貴のヒートをビーチから見るフランスチーム。その中にはもちろんジェレミー・フローレスの姿も。この時にジェレミーは大貴くんのサーフィンは見たのだろうか? 次に同じヒートになるとは

 

—ラウンド4をアップできた可能性もあったように思えましたが?

 

「そうですね、最後みんな乗って順位がわからなくなって、ヒートが終わってからちょっと順位発表に待たされましたしね。そういう意味では」

 

—でも悔しそうではないですか?

 

「悔しいよりも、自分がここまでこれた嬉しさ、CT選手と戦えたことの方が嬉しいです。試合する前から興奮して感動もちょっと入っていた。通過点だけど、負けたけど、こうなりたい(CT選手)と強く思えたから。

 

この試合での経験はこれからの選手キャリアの中で絶対に生きてくる。結局この人たちとこれから戦っていかなくてはならない。自分の大会も今で終わるわけじゃない。これからだから、この経験を生かしていく。だからここで負けた、悔しい、というよりとにかくこの経験を次に繋げていく。それがこれから勝てる方法だと思う。

 

ボロボロに負けたって感じもしなかったところが、(負けたけど)自信にもなった。だから次の試合が楽しみです(帰国した足でそのまま南アフリカに飛ぶそうです)」

 

 Photo: ISA / Sean Evans
Photo: ISA / Sean Evans

この春に高校を卒業してから、ハワイの糟谷修自さんのところでお世話になっている。ハワイ生活、国内外での試合と忙しいスケジュールの中、地元・福岡に戻ったとき子供たちと一緒にサーフィンをするのがとても楽しい時間なのだそう。

 

—CT選手と戦うという目的が現実となり、今後の新たな目標はできましたか?

 

「CT選手たちに勝つ、というのが目標。CTに入るのは今の時点では高過ぎる目標なので、まずCT選手に勝つということです」

 

—今回のISA世界戦は国別対抗など“オリンピックスタイル”とされるが、東京五輪は意識していますか?

 

「オリンピックは絶対に出たい。(糟谷)修自さんとも話しているのですが、それまでに計画を立てて、行動する。今までと同じことをしていても次のレベルにいけないと思う。だから環境を変えて、ちょっとずつ世界を意識してやっています」

 

 Photo: ISA / Sean Evans
Photo: ISA / Sean Evans

「バックアップがすごいから、ふだんの試合のような個人で戦っている気がしない。コーチ、スタッフ、ドクターも日本から来てくれた。国を代表して戦っている。自分のモチベーションも上がるし、日本が少しでも上にいけるようにという気持ちが自然と出てくる。バックアップがあったおかげで戦いやすかったです」とISA世界戦全体の感想

 

——最後に日本で応援してくれた人に一言ありますか?

「それが一番難しい(笑)。ここまでくることができたのは自分の実力だけでなく、勝つたびに応援してくれた人たちの力が一番強かった。これを機にまた頑張っていこうと強く思った。感謝の気持ちでいっぱいです。これからも応援よろしくお願いします」

 

 Photo: ISA / Sean Evans
Photo: ISA / Sean Evans

開催国フランスで、フランスのCT選手と戦った大貴くんのヒートは、今回の波乗りジャパンの中でも熱い一戦になったのだろう。この状況を「昔の自分に言ったとしたら超ビックリすると思けど」と大貴くん。

 

原点は小学校6年生のときNSA全国大会で味わった“天と地”の実力差。そこからコツコツと段階を踏みながら上っていった。しかしステージを世界に変えるとまた“天と地”の差を味あうことに。今はのぼっている最中だ。だがその道中が楽しくてたまらない様子も伝わってくる。希望を持っているのだ。

 

 

大音凛太

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 最後は大音凛太選手。ラウンド3で合計ポイントが0.04差での敗退という悔しい結果。本来ならラウンド4に上がっていれたのに、という思いが強く込み上げてきても全く不思議ではない。複雑な心境であっただろう、田中大貴選手のラウンド4が始まる直前にあえて話を聞いてみた。口を開いてくれてありがとう!

 

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Photo: ISA / Sean Evans

残り3分を切りラウンドアップに必要な点数が5.38とアナウンスされても、凛太選手のサーフィンを散々見てきた波乗りジャパンチームは「大丈夫」と動じなかった。実際、それまでに乗った2本で5.33、6.67とキッチリ点数も出している。それゆえに“もう1本”があればと

 

—凹みますよね?

 

「…はい。でも団体戦なので気持ちを切り替えて、日本の応援へと。個人的には今回の反省を生かして、次の試合勝てるように頑張ります」

 

—今回の反省というのは?

 

「波選び。最後1本(落ち着いてのれば)というところで、チームのみんなが“乗れたよ”というのを逃していたりした。それと運かな。0.04差なんて!」

 

—“運”の反省はどうやって生かす?

 

「僅差ではなく余裕で勝てるぐらいのサーフィンをしたいです」

 

—凛太くんは波乗りジャパンチームでの男子最年少。これから試合を行う田中大貴選手とは年が2年離れている。あと2年後は今の大貴選手がいる位置、プラス上のヒートにいけるのではないですか? 

 

「いや、もっともっと上に行きたいですよ」
海に入ると力強い武骨なサーフィンを披露、東京出身らしく(?)陸でのクールな雰囲気とはギャップがある凛太くん。太く、しっかりレールの入ったサーフィンをしていきたいそうで「海外の試合の方が点が出る」とのこと。

 

また「自分は試合運びがうまくない」と冷静な自己分析。今いる場所とこれから向かう場所、補っていくことがわかっている。この年の1年の違いは大きい。今後どう活躍していくかとても楽しみなサーファーだ。

 

 

 大会自体は残すところセミファイナルとファイナルのみ。日本の国別ランキングは6位以内は決定。他国のセミファイナル、ファイナルの結果によっては、3位から5位と日本が表彰台に上がる可能性も有り。

 

 また大会最終日、順位には関係しないが昨年の上位ランキング7位までの国が出場できるAloha Cupに日本がISA-WSGでは初出場。純粋なコンペティションとは少し違う彼らのサーフィンが楽しめるだろう。

 

 

2017 ISA World Surfing Games
開催国 ビアリッツ フランス Biarritz, France
開催日 2017年5月20日~5月28日(現地時間)

 

<派遣選手>

・メンズオープン

大音凜太 33位
小笠原由織 17位
田中大貴 17位。
堀越力 33位

・ウィメンズオープン
大村奈央 7位
野中美波 17位

・スタッフ

酒井 厚志 (選手団長)
吉永 修 (マネージャー)
井本 公文 (マネージャー)
ウェード・シャープ(コーチ)
大石 純也(通訳)

オフィシャルサイト:

http://isaworlds.com/wsg/2017/en/