田中大貴が1位通過、小笠原由織が2位でラウンドアップ。ISA世界選手権大会4日目現地リポート

ラウンドアップを決めた小笠原由織  Photo: ISA / Ben Reed

 

写真、リポート:永島未知子 ビアリッツ、フランス、2017年5月23日-

 

「ISA World Surfing Games フランス2017」の大会4日目。波乗りジャパンチームから本日最初となるヒートは田中大貴のラウンド1。

 

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フランスのビーチに日の丸の旗が。photo:michiko nagashima

 

 

 これまでの3日間はその日最初の出場ヒートが朝7〜8時台に行われていたので、それに比べると9時台の試合は遅くに感じられる。選手たちも少しゆっくりできたのだろうか、また女子はすべての試合が終了し、男子も4人中2人が昨日のうちに試合を終え勝ち上がっていることから、波乗りジャパンチームはリラックスした雰囲気。

 

気温も適度に暖かく、風はほぼ無風。ゆえに波の面はきれいでサイズは腰腹、セットで胸ぐらいと大きくはないが波がそこそこに入ってくるので、楽しめるヒートになるだろうと予測された。

 

Photo: ISA / Ben Reed
僭越ながら昨年の試合で見たときよりもサーフィンが格段とうまくなったと思いました田中大貴 Photo: ISA / Ben Reed

 

 試合が始まってみると、その予測はいい意味で外れた。ヒート全体で田中大貴が先陣を切って波に乗ると、キレのよいリエントリーを披露。「勝ったな」という一言が波乗りジャパンチーム内から聞こえ、“良かった”と言うように日の丸国旗が縦にブンブン振られた。

 

実際得点も5.50ポイントがついた。安心のスタートを切ると波数に恵まれたヒートということもあり、積極的に波へチャージする田中大貴。力強いファーストターンや、強弱のついたマニューバーから繰り出すリエントリー。きれいな弧を描きながら大量のスプレーが舞う。

 

田中大貴 Photo: ISA / Ben Reed
田中大貴 Photo: ISA / Ben Reed

対戦相手である他国選手と比べると同じ技をかけても違うのは明らかだった。中盤でレギュラーの波に乗ると加速してエアにトライするなど、技のバリエーションもみせた。2位となったセネガルの選手と8ポイント差をつけた圧巻のトップ通過!

 

田中大貴
トップ通過を果たした田中大貴 photo:michiko nagashima

 

田中大貴「いい波だったのでもっといいサーフィンができたけど、とりあえず1ラウンド目が無事に終わってよかった。いい点も修正する点も見えた。ラウンド2からはこうもいかないと思うので、修正するところを直し、気を引き締めていきます」

 

 本人いわく「サーフィンの調子もよい」そうで、次戦も大いに期待がかかります
本人いわく「サーフィンの調子もよい」そうで、次戦も大いに期待がかかります

 

 ここまでで4人中3人の男子ラウンド1が終了し、全員トップ通過を果たしている。ヒート表を見ると対戦相手国はどのヒートもほぼ同じ。聞けばヒートは個人ではなく、昨年の国別ランキングをもとに組まれているそうだ。日本の昨年のランキングは7位。上位につけることができたので、ラウンド1ではそれより下位ランキングの国の選手と当たっていることになる。

 

勝利はもちろん出場選手たちの実力だが、勝ちやすくしてくれたのは去年の波乗りジャパンチームの功績という面もあるだろう。同じように今回の成績は来年につながる。個人競技でありながらチーム戦。そこに五輪スタイルとされる「ISA World Surfing Games」の特徴、面白みがあるのかもしれない。

 

 

ヒート前の小笠原由織
ヒート前の小笠原由織

 

 さて、ここまで順調の男子ラウンド1。残る小笠原由織もトップ通過を果たしたいところ。
 
 その小笠原由織のヒート時刻となった12時過ぎは、満潮に向かい潮が上がってくる時間帯。波は朝と比べてサイズアップ。ビーチでは緊張した様子。それから入水すると、他の選手と離れたピークに向かった。

 

小笠原由織を見守る波乗りジャパン
小笠原由織を見守る波乗りジャパン

 

 ヒートが始まると他の選手のいる場所に波がやってくる。小笠原由織の待つところにもうねりは入るも、あまりいい波に乗れなかったり、波をやり過ごしたりとリズムを掴めない。その間、イスエラエルの選手がレフトの波で6.50の高得点をスコア。後半戦に突入した時点で暫定順位は3位。

 

小笠原由織
小笠原由織

 

ビーチから見守る波乗りジャパンチームとしてはその状況がもどかしく、「(ピークに)戻れ」「(セットの)裏」「右」などという声が次々と出始める。しかし肝心の小笠原には聞こえているのか、いないのか、またはタイミングのズレがあるのか、アドバイスに反応する様子がみえない。その間またしてもイスラエルの選手が7.57ポイントを出しリードを広げる。

 

Photo: ISA / Ben Reed
Photo: ISA / Ben Reed

 

そうなればトップ通過から2位で勝ち抜けることに目標を切り替えなければならない。「彼を信じよう」と波乗りジャパンチーム。残り5分の時点で必要な点数は4.68ポイント。小笠原のところにセットが入り続けざまにチャージするも焦りからか、得点に繋がらない。そうしてヒート終了まで3分を切ったところ、またセットが入ってきた。サイズもある。ここで決めなければ! 

 

 当てにいくセクションを確かめるようにテイクオフすると、そこに向かって大きなファーストターンを決める。まるで別人、というか、ようやく起きてくれたようだ。その1本を見た波乗りジャパンチームには安堵の空気が広がる。アナウンスされた得点は5.83!

 

 

小笠原由織
小笠原由織

 

 今まではヒートが終わったら選手がチームのいる場所に戻ってくるのを待っていたが、今回ばかりは待ってられないとばかりに小笠原由織を波打ちぎわまで迎えにいく面々。

 

「由織のようなタイプの選手が毎年1人は代表チームにいるのです。そうすると応援する側がまとまるんですよ」とスタッフさん。

 

 楽なヒート、日なんて1日もない。しかし一緒に乗り越えていくことでチームの団結力が日々増していくのだろう。

 

「マジ死ぬかと思いました」とヒート終了直後に率直な感想を延べてくれた小笠原由織。奇遇ですね、見ている側も同じ気持ちだったと思います。いや〜、よかった!
「マジ死ぬかと思いました」とヒート終了直後に率直な感想を延べてくれた小笠原由織。奇遇ですね、見ている側も同じ気持ちだったと思います。いや〜、よかった!

 

 大会5日目となる明日は現地時間の夜に堀越力のラウンド2が行われるかもしれない。体調を少し崩してしまっているらしいが、この束の間の休息中に調子を取り戻し、またいいサーフィン、試合をしてくれるよう期待したい。波乗りジャパンの活躍はまだ始まったばかりだ! 

 

2017 ISA World Surfing Games
開催国 ビアリッツ フランス Biarritz, France
開催日 2017年5月20日~5月28日(現地時間)

 

<派遣選手>

・メンズオープン

大音凜太 小笠原由織 田中大貴 堀越力

・ウィメンズオープン
大村奈央 7位
野中美波 17位

・スタッフ

酒井 厚志 (選手団長)
吉永 修 (マネージャー)
井本 公文 (マネージャー)
ウェード・シャープ(コーチ)
大石 純也(通訳)

オフィシャルサイト:

http://isaworlds.com/wsg/2017/en/