ISA世界選手権が開幕。波乗りジャパン好発進! 大村奈央、野中美波が2回戦進出。大会初日現地リポート

野中美波のヒートを見守る波乗りジャパン photo:michiko nagashima

 

写真、リポート:永島未知子  出場参加国数47、昨年の26カ国から比べると参加国数が大幅に増加。参加人数も参加国の増加にともない245名と、昨年の142名から2倍に近い選手が世界中から集まった「ISA World Surfing Games フランス2017」。
  
 1年で大会の規模がこれだけ拡大した事にはわけがあるだろう。それはサーフィンが2020年の東京五輪で正式種目に採用されたと発表されて開催される、初の「ISA World Surfing Games」だからである。国を代表して個人でメダル獲得を目指すのに加え、総合で国にもメダルが与えられる。

 

 

 またホスト国であるフランスは2024年の五輪開催地の候補に名乗りを上げている。会場の設備などからフランスが今大会にかける意気込みが感じられる。例えば普段のイベント、試合では出現しない特設ステージが会場のグランド・プラージュに作られ、そこでは華々しく開会式が行われた。選手には待機用に巨大テントが設営され、そこからは波が一望できる構図となっている。

 

盛大なオープニングセレモニーも開催された。Photo: ISA / Sean Evans
盛大なオープニングセレモニーも開催された。Photo: ISA / Sean Evans

 

会場の一部には展示物販のスペースが設けられ、街から海へと足を運んできたギャラリーが試合以外でも楽しめる工夫がされている。夜になっては花火も打ち上げられた。これはローカルにとってもサプライズのプログラム! 

 

波乗りジャパンとISAフェルナンド会長 PHOTO: ISA / Evans
波乗りジャパンとISAフェルナンド会長 PHOTO: ISA / Evans
大音凜太 PHOTO: ISA / Evans
パレードの大音凜太 PHOTO: ISA / Evans
野中美波が1位通過。
野中美波が1位通過。PHOTO: ISA / Evans

 

 選手、ギャラリーに対する大会側の迎え入れ、盛り上げ体勢が十分という近年では珍しい規模のコンテストであろう今回の「ISA World Surfing Games フランス2017」。

 

 しかしながら初日を迎えた本日は開会式前に始められた女子R1前半において、小雨と冷たく強いオンショアが吹くという厳しい条件の中で朝7時に始まった。

 

 気温が上がるどころか、風がより強くなってきた8時手前。ヒート3に大村奈央が登場。波乗りジャパンチームもスタッフ含め全員が揃っている。
「寒い、寒い」とチーム選手も思わず口に出してしまうほどの状況だったが、それに反してチームの雰囲気は和気あいあい。やはり世界選の経験が豊富であり、最近調子がよいとされる大村奈央が一番手ということにチーム全体にも安心感があるのだろう。

 

ヒート前の大村奈央 photo:michiko nagashima
緊張の中にも、少し笑顔を見せるヒート前の大村奈央 photo:michiko nagashima
コンテスト会場のビアリッツphoto:michiko nagashima
コンテスト会場のビアリッツphoto:michiko nagashima

 

 波のサイズは肩、頭、セットで頭オーバーにオンショア。崩れるのが早く波選びに苦戦を強いられるコンディションだ。それでもヒートが始まると序盤から攻める大村奈央。調子を確かめるような1本を乗ったあと、2本目のライトの波で3.50ポイントを出した。

 

その時点でブラジルのSuelen Naraisa選手に次ぐ2位。他の対戦相手は苦戦中で順当にいけば勝ち上がるだろうと踏んでいても、スコアを伸ばしたい後半戦。するとライトの波で4.43ポイントを出し、続けて波乗りジャパンチームが「きた!」と目にしたセットをもれなくキャッチ。3.73ポイントと合計スコアを伸ばし、2位でラウンド1を通過した。

 大村奈央「1回戦だったので世界戦の雰囲気を掴もうと。波を探すのが難しく、流れもあったけど最後にいい波が来た。他の国の選手は意識しませんでした」。

 

 

ジャクリーン・シルバを抑えて1位で勝ち上がった野中 photo:michiko nagashima
ジャクリーン・シルバを抑えて1位で勝ち上がった野中 photo:michiko nagashima
ヒート前、緊張の面持ちの野中美波。photo:michiko nagashima
ヒート前、緊張の面持ちの野中美波。photo:michiko nagashima

 

 大村奈央のヒートから数えること約10時間後。天候は回復し青空が姿を見せ、太陽の強い陽射しが降り注ぎ、朝とは全く違う様子を見せるグランド・プラージュ。派手な開会式の後ということもあり、ビーチにはたくさんのギャラリーが詰めかけている。風もやんではいないが朝に比べると弱く、波もよくなった。チームの誰かが「到着して以来、一番コンディションがいい」というくらい。

 

 万全にあったまった会場の中、ヒート19に登場したのが野中美波15歳。出身は埼玉でサーフィンを始めたのが「小4のとき」。現在は千葉在住だが、計算するとサーフィンを始めてから5年でフランス・ビアリッツまで辿り着いたことになる。ポテンシャルを感じずにはいられない。

 

 その野中美波に朝、大村奈央のヒートが終わった直後に試合を控える身として気持ちを尋ねてみた。すると開口一番「嫌です」、続けて「波がこわい、チキンなんです」との答えが。とても素直なのだが、アスリートとして珍しいタイプかもしれない。もしくは世代なのだろうか。気になる選手だ。

 

 そんな野中美波のヒートは18時過ぎに始まった。本人も小柄だが、他も小柄な体格の選手が多く、風が弱くなったとはいえ潮の流れの強さ、波のパワフルさに苦戦を強いられているヒートだと見受けられた。

 

開始から数分は静かな様子が続く。見ている方が痺れを切らすような状態に「まず1本!」と波打ち際の近くで見守る波乗りジャパンチームから声が出る。するとそのタイミングでうまく波が入り、野中がしっかり反応。ライトの波で大きなリエントリーを見せ6.50ポイントといきなりの高得点をたたき出した。

 

その後、ブラジルのジャクリーン・シルバ選手が7.50ポイントと野中を上回る得点を出すも、残り5分を切ったところで野中がライトでコンビネーションを決める。5.77という得点が出るとMCから「ニホンイチバン」というアナウンスが会場に響き渡った。そのサービス精神に笑いが漏れる会場。そのままヒートは終了し、野中美波はラウンド1をトップ通過した。

 

 野中美波「自分の得意なレギュラーの波がこないかもと心配していたけど、乗れたのでよかった。朝は波のサイズがあって不安だったけど、試合をしてみて楽しかった」

 

1位で勝ち上がった野中美波。photo:michiko nagashima
1位で勝ち上がった野中美波。photo:michiko nagashima
フランスの空に日本の国旗がはためく。
フランスで日本の国旗を掲げて、パレードを行う波乗りジャパン。
南アフリカ代表 昨年までCT選手だったビアンカ・ブイティンダック photo:michiko nagashima
南アフリカ代表 昨年までCT選手だったビアンカ・ブイティンダックも今回注目 photo:michiko nagashima
円陣を組んでラウンドアップの喜びを分かち合う波乗りジャパン photo:michiko nagashima
円陣を組んでラウンドアップの喜びを分かち合う波乗りジャパン photo:michiko nagashima

 

 大会2日目となる明日は7時30から女子のラウンド2が開始予定。大村奈央が4ヒート目に登場、8時50分頃(日本時間15時50分頃)開始予定。野中美波は12ヒート目となる。順調にいけば11時30分頃(日本時間18時30分頃)の開始。

 

また大会はそのまま女子ラウンド3と続き、クォーターファイナルまで進む予定。明日が2名の頑張りどころとなるだろう。海外の試合経験が豊富で、過去にISAのWSGで2大会連続5位入賞という実績を持つ大村奈央。ラウンド1の勢いのまま進んでいってほしい野中美波。波のサイズは初日より下がるも風がオフショアに変わるので、見応えのある試合になりそうだ。2人の活躍を日本からもお楽しみに! 

 

 

2017 ISA World Surfing Games
開催国 ビアリッツ フランス Biarritz, France
開催日 2017年5月20日~5月28日(現地時間)

 

<派遣選手>

・メンズオープン

大音凜太

小笠原由織

田中大貴

堀越力

 

・ウィメンズオープン

大村奈央

野中美波

 

・スタッフ

酒井 厚志 (選手団長)

吉永 修 (マネージャー)
井本 公文 (マネージャー)

ウェード・シャープ(コーチ)

大石 純也(通訳)

オフィシャルサイト:

http://isaworlds.com/wsg/2017/en/