ディスカバリーインドネシアⅡ第4弾バツカラス後編。記憶に残る素晴らしい波に出会うために

ディスカバリーインドネシアⅡ〜第4弾バツカラス後編。記憶に残る素晴らしい波に出会うために。 


 

再開された「ディスカバリーインドネシア」。東西南北、四方を海に囲れ、年間を通じて良質なスウェルが打寄せるインドネシアの知られざる波の魅力 に迫る。 2シーズン目を迎える今年も、世界が認める有数なサ-フィンデェスティネ-ションをクロ-ズアップし、年間で5つのロケーションを紹介していく。 未だ見ぬ魅惑のサーフスポットへの旅を楽しんで欲しい。シーズン2の第4弾は、インドネシアを代表するロングライトブレイク「バツカラス」。

 

 

 

 

インドネシアにおける希少なメロウ・ライト

 

バツカラス。


この響きにある種のトキメキを感じていた。


ハードな波の多いインドネシアにおいて、バツカラスはロングボーダーを唸らせるメロウなパーフェクトブレイクとして世界にその名を轟かせている希少なスポットなのだ。

 

スタイリッシュにバツカラスを楽しむ筆者の有本圭

 


ディスカバリーインドネシアを通じて、初めてロングボードを抱えて目的地へと入った僕は、胸の高鳴りを感じながら朝の訪れを待っていた。

 

夜が明け切るころには日本からやってくる旅のクルーたちとの出会いと再会が待っている。そしていよいよ憧れ続けてきたバツカラスの波と戯れることができる。興奮して眠ることなどできない、なんてことを思っているうちに、いつの間にか微睡んでしまっていたのだ。


 

フリーサーファーとして新たなステージへと活動の幅を広げているシゲ。

市東重明


目を覚まし、大きなあくびをひとつして外を覗いてみるとホテルの前の砂利道に1台のマイクロバスが停まっていた。もしや、と思いつつバスに近づくと波伝説の代表の加藤さんやOMツアーのノブオくんの姿が視界に入ってきた。

 

 

「お! やっぱりそうだ!」  はやる気持ちを抑えつつ車内を覗くと、懐かしい顔が悪戯そうな笑みを浮かべていた。プロコンペティターとしてのキャリアを終えフリーサーファーとして新たなステージへと活動の幅を広げているシゲこと市東重明の姿がそこにあったのだ。再会を喜び、昔話に花を咲かせながらも足は自然とビーチへ向かっていた。

 

様々なタイプのボードでバツカラスを吟味する

 

 

波のサイズはコシくらいだろうか。海に突き刺さるような岬の先端にウネリがぶつかると白波に崩れ、徐々にショルダーを伸ばしながら浜辺に沿うように横へ横へと長いブレイクを見せていた。


 

市東重明

 

「これ、ロングなら最高だね!」とシゲは目を輝かせた。シゲは世界的なロガーへと成長したロコサーファーのウスニと数年ぶりの再会を果たすと早速彼からロングボードを借りてピークへとパドルアウトしていった。

 

バツカラスではDEUSのゼイン・ノリスとも遭遇

 


シゲはショートボードのトップコンペティターとして日本のサーフシーンを牽引してきたプロサーファーであるが、ロングボードもなんの違和感なくスタイリッシュに乗りこなしていた。

 

 

コンディションに合わせてボードをチョイス。市東重明

 

 

波のコンディションにマッチしたサーフボードをチョイスし、それをなんなく乗りこなす彼の姿は日本を代表するフリーサーファーにふさわしかった。波に乗ることを心から楽しんでいる彼のオーラが周囲に伝播し、彼につられるようにラインナップにいたサーファーたちの間ににも笑顔が広がっていったのだった。


 

女性サーファーにも優しいブレイク。

 

バツカラスの周辺にはいくつかのスポットが点在していた。メインスポットのThe Pointの対岸にはThe reefという高速ショルダーのレギュラーブレイクがあった。ひとたびサイズアップすれば理想的なバレルも現れるという。

 

様々な波でサーフィンすることが出来る場所

 

 

また、車で30分ほど走ったところにはコンスタントにスウェルを拾う「ブラペンダ」というスポットがある。サイズとパワーに飢えたサーファーであれば足を伸ばす価値のあるスポットだ。あらゆるレベルのサーファーが同時に楽しめるバツカラスは、僕が期待していた通りの理想的なサーフディスティネーションであった。


そしてこの地を愛してやまないロコ達のフレンドリーな振る舞いもこの地の魅力の一つだろう。人と人との壁をまったく感じさせない彼らのキャラクターに我々旅のクルーもすっかり虜になってしまっていた。

 

 

ローカルサーファーのウスニ


その中で以前から交流のあったロコサーファーのウスニに一つの疑問を投げかけてみた。それはバツカラスにやってきた初日に目撃したあの不思議な光景、真夜中の謎の群衆についてだ。あれは一体なんだったのだろうか。そのことを聞いてみるとこんな話を聞くことができた。


 



地元の人々の間ではこのバツカラスのビーチには不思議なパワーがあると信じられているというのだ。歩けない人が歩けるようになったり、不治の病が消えてしまったりなどという逸話が数多く存在しているという。

 

いわゆる俗に言うパワースポットというやつだ。週末になると周辺の都市から癒やしを求めて人々が大挙して押し寄せてくるのがバツカラスの持つもう一つの顔だったのだ。

 

今回の旅のクルー

 


そんなふうに言われてみれば一日中波を追って疲れているはずの我々もまるでワカモノのように深酒をし、夜更けまで酔いに身を委ねていた。


なかでも特筆すべきはOMツアーのノブオくん。彼は連日やや自虐的とも思えるような勢いでアルコールを体内に流し込み、まるで職務中とは思えないほどの開き直った乱れ姿を露呈していた。

 

これもバツカラスパワーのおかげなのだろうか。そんな風に関心の目で彼を眺めていると、彼のことを以前からよく知っている波伝説の加藤さんに「いや、ノブオくんの場合、どこでもこんな感じだからね」と鋭い直球を投げ込まれていた。

 

「えっ、そーんなことないっすよー」と口を尖らせながら頭を掻いている彼の赤ら顔を見ているうちに、きっとどこでもこんな感じなんだろうなと容易に想像がついてしまったのであった。


 

インドネシアの波を愛する有本圭

 

 

きっと生涯の記憶に残る素晴らしい波に巡り会えるはず。

 


それにしてもパワースポットでサーフィンを楽しめるとはなんと贅沢な場所だろう。そんな話を聞かされると否が応でもその気になってしまうのが人間のサガというものだ。なんだか一段と元気を取り戻した我々は再び連日のように波に乗り、夜は浴びるようにアルコールに浸っていったのだった。

 

というわけで、こんなふうにして僕にとってのディスカバリーインドネシアはだらしなくアルコールにまみれながら幕を閉じていった。


昨年末のスンバから始まったこのシリーズは、北マルク、アチェ、そして今回のバツカラスと旅が連なっていったわけであるが、やはりインドネシアのポテンシャルは世界屈指といっても過言ではなかった。あらゆるレベルのサーファーを満足させる波が人知れずブレイクしていた。


時間と少々のお金と波を求める情熱のあるサーファーは迷わずインドネシアに足を運んでもらいたい。きっと生涯の記憶に残る素晴らしい波に巡り会えるはずだ。


 

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有本圭(ありもと・けい)

バリ島在住プロサーファー。2000年〜2007年までJPSA(日本プロサーフィン連盟)ロングボードツアーでシード選手として活躍。その後、雑誌、webなどで執筆活動を行い、サーフィンや旅をテーマに啓蒙活動を行っている。

有本圭のブログ→ http://sw-players.com/

 

 

Nobu Fuku / 福与 乃二彦

サーファー&フォトグラファー。最高の波を求め1994年にインドネシアのバリ島へ移住。バリ島をベースにインドネシア各地で水中撮影をメインに活動、 サーファーの視点から自然の素晴しさを伝える作品創りに努める。

Nobu Fuku Photography  http://www.nobufuku.com/

 

協力:波伝説ガル-ダインドネシア航空BLUEOMtour