ディスカバリーインドネシアⅡ〜スンバ、最終回「夢のようなサーフスポットを仲間占め」

ディスカバリーインドネシアⅡ〜スンバ、最終回。「夢のようなサーフスポットを仲間占め。」 


KLAUS

 

 

再開された「ディスカバリーインドネシア」。東西南北、四方を海に囲れ、年間を通じて良質なスウェルが打寄せるインドネシアの知られざる波の魅力 に迫る。 2シーズン目を迎える今年も、世界が認める有数なサ-フィンデェスティネ-ションをクロ-ズアップし、年間で5つのロケーションを紹介していく予定。 未だ見ぬ魅惑のサーフスポットへの旅を楽しんで欲しい。

 

 

 

前回までのおはなし。

スンバ3「とんでもない宝物。これは現実か幻か」

スンバ2「コモドドラゴンと怪我の功名」

スンバ1「トラブルこそが、その旅の思い出」

 

 

ダブルオーバーとも思われるこの旅最大のセットが私の目の前に現れたときにも、このポイントの水深の深さが私をプッシュしてくれた。サーフィンには理想的な海底リーフの形状に加え、十分な水深がリスクの少ないパーフェクトブレイクを生み出していることをこの数日で学んでいた。


 

kei arimoto

 

全力で波を追いかけ沖にめがけてパドルし、波が弾け出す瞬間にボードを岸に向けてタイミングを合わせて波の懐へと入っていった。ギリギリでレイトテイクオフに成功したかに思えたが、想像以上の波のパワーにノーズを水塊に引っ掛けてしまい、あえなく波に飲み込まれてしまった。ダブル近いピークでこっぴどく波に巻かれてしまったが、ボトムに体がヒットするようなことはなかった。

 

shinji

 

しかし、その代償として、とんでもなく長い時間を水中で過ごさなくてはならなかった。もう限界っ!と最後の息を海中に洩らすと必死の思いで海面に向けて泳ぎに力を込めた。光が近づいてくると吸い込まれるように海面へと浮き上がることができた。思い切り酸素を胸に入れる。その酸素をふーっと吐き出すと太陽の光に煌めく海面に包まれて、呼吸とともに徐々に落ち着きを取り戻していった。


 

KUMI

 

 

我々が辿り着いたこのレギュラーのポイントはピークから波を捉えるとゆうに300mを越えるロングウォールとなった。波のサイズがアタマくらいまではスーパーファンフェーブでロングボードでも楽しめるメロウなブレイクだ。逆にアタマ半を越えてくるとスリリングなバレルセクションも姿を現し、エキスパートでも十分に楽しめる一級品のブレイクとなるのだ。

 

 

サマサマ号はこのレギュラーブレイクの近くに数日間停泊することになった。これ以上の波を探し当てるのは容易ではないだろうし、これ以上の波を求めているわけでもなかった。我々は混雑知らずのワールドクラスの波を、つまりは夢のようなサーフスポットを独り占めならぬ仲間占めすることができたのだ。

 

 

MASAMI

 

 

 

トラブル続出で一時はどうなることかと不安に駆られたこの旅は、サーファーにとっては最高に贅沢な旅として締めくくられることになった。

雨のち快晴。

この旅はそんな旅であった。

 

サーファー同士、狭い船上で寝食を共にするといつの間にか家族のような一体感が生まれてくる。その旅で初めて出会った者であってもサーファー同士打ち解けるのにさして時間はかからない。

 

 

旅の仲間とともに未だ見ぬ未開の波を求めて旅をする。素晴らしい波にありつける時も、そうでない時もあるだろう。波はあくまでも自然の生み出す贈り物。いい時もあれば悪いときもある。しかし1歩を踏み出さなければサーファーとして至福の一時を手に入れることは決してできない。

 

せっかくサーファーとして生まれてきたのだ。サーフボードを抱えてボートに乗り込もう。サーファーとして最も贅沢ともいえるボートトリップをしない手はない。どうせボートで旅をするのであれば混雑のない無人のブレイクを仲間同士でシェアできれば最高だ。そういう意味ではスンバ島のボートトリップは完全に『アリ』なディスティネーションといえるだろう。

 

おわり

 

 

ディスカバリーインドネシアⅡ〜スンバ

スンバ3「とんでもない宝物。これは現実か幻か」

スンバ2「コモドドラゴンと怪我の功名」

スンバ1「トラブルこそが、その旅の思い出」

 

有本圭(ありもと・けい)

バリ島在住プロサーファー。2000年〜2007年までJPSA(日本プロサーフィン連盟)ロングボードツアーでシード選手として活躍。その後、雑誌、webなどで執筆活動を行い、サーフィンや旅をテーマに啓蒙活動を行っている。

有本圭のブログ→ http://sw-players.com/

 

 

Nobu Fuku / 福与 乃二彦

サーファー&フォトグラファー。最高の波を求め1994年にインドネシアのバリ島へ移住。バリ島をベースにインドネシア各地で水中撮影をメインに活動、 サーファーの視点から自然の素晴しさを伝える作品創りに努める。

Nobu Fuku Photography  http://www.nobufuku.com/

 

協力:波伝説ガル-ダインドネシア航空BLUEOMtour