「海から考える日本の未来〜福島と千葉に見る新しい海岸利用のあり方」セミナーリポート

「海から考える日本の未来〜福島と千葉に見る新しい海岸利用のあり方」セミナーリポート。 


 

2014年11月13日(木)、東京代官山のシアターサイバードにて、一般社団法人サーフライダーファウンデーションジャパン主催のセミナーが開催された。今回は、【日本の海岸環境のいまと今後のビーチカルチャーの展望】と題し、日本のビーチを活性化させようという主旨のもと、福島と九十九里の事例を紹介。スピーカーは福島大学教授 奥本英樹氏と、株式会社サンコー代表取締役社長の佐藤誠氏。

 

 

 

福島大学教授の奥本英樹氏は、福島でのサーフカレッジ構想、サーフツーリズムの事例を紹介しながら、日本の海岸づくりの根源的な問題を提起。震災での実体験を交えながら、防波堤、防潮堤などのあり方についての解説もした。

 

奥本氏は、南相馬市の海資源を活用し、マリンレジャーを通じた交流人口増加及び、地域経済振興を図るとともに、様々なビーチアクティビィによる市民価値の向上を通じて、 カリフォルニアなどの海外先進地に匹敵する「サーフタウン」としての地域ブランドの確立を目的とした「南相馬市サーフツーリズム」を提案している。

 

 

サーフツーリズムは、日本のコーストラインに存在する豊かな観光資源である海資源を活用し、サーフィンやそれに附随する事業を通した交流人口の増加に伴う地域振興を図り、これによって関連する様々なコミュニティ・ビジネスの創造と雇用回復などを向上させることを目的とするサーファーが、サーファーとしての役割を果たし、地域と街を豊かにして行こうというもの。

 

過去の写真で創業当時の海を説明する佐藤氏

 

 

株式会社サンコー代表取締役の佐藤誠氏は、千葉九十九里、特に太東、一宮周辺のデータをもとに、深刻化する海岸浸食の事例を解説。「良いウエットスーツは都会の人を海へ誘い、地域を活性化させる」という理念のもと、可能な限り自然に負担をかけないものづくり、売り上げの1パーセントを環境保護に寄付するなど、南九十九里の海洋汚染調査にも支援する活動を行っている。

 

 

 

株式会社サンコーのウエットスーツ工場のある千葉県の九十九里は、80年代後半から急激に砂浜が痩せ始め、広大な砂浜が消えて行った。そして砂浜の浸食で海水浴場は36カ所から22カ所に減少。現在も砂浜の減少は続いている。

 

今は姿を変えてしまった千葉県にある太東岬の写真を見ながら佐藤氏が解説。

 

 

屏風ヶ浦と太東岬は、もともと海底に推積した土砂や、地表に隆起したあとの火山灰などから出来ており、大変もろく、銚子市の飯岡町の神社は鎌倉時代からは600メートルも後退したという。70年代に入り、コンクリートを使った土木技術が発展し、断崖や岬の波浪からの浸食をコンクリートブロックで護岸し、海岸線の後退を防いでいた。

 

しかし、一方で、九十九里浜の砂の供給が止まり、九十九里のほぼ中央に位置する片貝漁港に防波堤が出来たことで、海底の砂の南北の移動が制限され、そこに砂が集中。北と南の飯岡、太東周辺が一気に痩せ始めた。

 

 

OWOL南九十九里プロジェクトについて説明する佐藤氏

 

OWOL南九十九里プロジェクト (Our Water Our Life)は、大腸菌、放射性物質の継続的な水質調査。1 %For the Planetを通じ、株式会社サンコー(BeWET)の協力で、昨年5月から北千葉の調査にいたっては月2回のペースで安定調査を継続することが可能となっている。これは千葉でサーフィンをする多くの人々に安心を提供している。※南九十九里の水質調査結果 (10月末採取分)

 

海から日本の未来を考えたときに、問題や課題はまだまだ山積み。そして、あらゆる立場の利益を満たすには、Tバーなどで侵食を遅らせ、海岸線に砂を寄せて砂浜を造成する「養浜」という、新たな砂浜を形成して行く必要があると佐藤氏は言う。

 

現代人は自然から遠く隔離され、生きるためのリアリティに触れる機会が少なくなっている。すっかり痩せてしまった日本の砂浜に目を向け、砂浜と接する機会の多い我々サーファーが問題を自分の事として捉え、どんな社会を子どもたちに残したいのかを考えて行くこと。そして、メッセージを発信して行くことが大切だ。

 

今後もこのような機会が増え、多くの人が問題意識を持って、参加して行くことを願うとともに、情報を発信する立場として、自分たちのフィールドである海と真剣に向き合って行きたいと思う。

 

関連サイト:

http://www.surfrider.jp/