スティーブ・モーガン/カスタム・ハンドシェイプを知り尽くした男

スティーブ・モーガン・インタビュー

最先端のハイパフォーマンス・ボードをクリエイトし続けるエリック・アラカワとケリー・トコロといったハワイ屈指のシェイパー陣を擁するハワイアン・アイランド・クリエーション(HIC)。実はそのHICに第三のシェイパーがいることをご存知だろうか。クラフツマンシップの聖地サンディエゴでシェイピングのキャリアをスタートさせた職人、スティーブ・モーガンである。明らかにハワイ出身のエリックやケリーとは毛色が異なるバックグラウンドを持つスティーブは、カリフォルニアにルーツを持つ数々のボードデザインのエレメントを織り交ぜたボードをシェイプすることで一目置かれている人物だ。そのバックグラウンドとシェイパーとして培ってきたキャリア、そして独自のボード理論からハンドシェイプの哲学まで、玄人好みのスティーブ・モーガンの魅力に迫る。

interview :takashi tomita  photo:gordinho


第一章:サンディエゴのルーツ 第二章:ブルーワーとの出会い 第3章:ハンドシェイプへのこだわり

 

SM: 出身はカリフォルニアなんですか?

M: 生まれはサンフランシスコだけど、父が軍人で赴任先を転々としていたので、子どものころは台湾にも住んでいた。5歳の頃にサンディエゴに引っ越して、その後はそこでずっと育った。

SM: サーフィンを始めたのはいつですか?

M: 1969年、10歳でサーフィンを始めた。ワイキキのフォート・デ・ルシーの前のパラダイスというポイントだった。この頃は年に4、5回ハワイに行っていた。父がサーファーだったので、仕事でフォート・デ・ルシーに行った際に私をサーフィンに連れ出してくれたんだ。

SM: シェイピングはどうやって始めたんですか?

M: 14歳の時にサンディエゴのサーフキャンプに入ったんだが、波のない時はサーフボード・ファクトリーの見学にいったりするんだ。見学に行ったのは、ソレントバレーにあるビル・キャスターのファクトリーだった。もともと私はもの作りが好きだったし、それにレジンの匂いも気に入った(笑)。ファクトリーで行なわれているボード作りの工程をすべて見学し、その後ビル・キャスターと親しく付き合うようになる。シェイピングに興味をもった私は、サーフショップで材料を買ってきてボードの自作を試みた。それが初めてのシェイプ。最初のボードは、テールが大きくスプリットしたスティーブ・リズのスタイルのフィッシュだった。その当時、私も気に入って乗っていたし、フィッシュはサンディエゴを代表するデザインだからね。

 

 

SM: ではシェイピングは独学なんですね? シェイプを始めた当初、影響を受けた人はいますか?

M: 影響を受けた人はたくさんいるよ。初期の段階では間違いなくビル・キャスターだね。彼は、私がシェイパーとしての人生のモデルにした人なんだ。素晴らしいクラフツマンであるばかりか、まじめな勤労者だった。私生活では良き父親で良き夫で、あらゆる面で私にとっては生き方を示してくれる身近な人だった。リーバイスにワーキングブーツといった彼の服装も真似ていたほど、影響を受けた。でも彼からはシェイピングでのテクニックやデザインを教わったわけではない。私が学んだのは、むしろシェイパーとして生きていくための基本的な心構えのようなもの。仕事としてサーフボード作りを選ぶということ、それはシェイピングを愛するがゆえであり、決してお金のためではない、ということをビルは教えてくれたんだ。

SM: ではテクニックの部分で影響を受けたのは?

M: ツールの使い方で影響を受けたのはゲーリー・リンデン。経験では彼の方が私より何年も先輩だったし、ビジネスのコツを教えてくれたのもゲーリーだった。明らかに彼から学んだことは私が自分のシェイピングを確立するのに役立ったと思う。プライベートでも親しい間柄だよ。ボードデザインにおけるスタイルは異なっていたけど、彼とはビジネスパートナーでもあったんだ。

SM: ゲーリー・リンデンとビジネスパートナーだったとは、どういうことですか?

M: 一時期ディック・ブルーワー・サーフボードのビジネスを一緒にやっていたんだ。私が19歳の時に、当時のブルーワー・サーフボードのオーナーに声をかけられ、ブルーワー・レーベルでシェイプすることになった。後にゲーリーがブルーワーのファクトリーを引き継いで、1980年に私とゲーリーはパートナーとなってブルーワー・サーフボードのビジネスを一緒にやるようになったんだ。もちろんブルーワーとも一緒に仕事する機会に恵まれたよ。直接シェイピングを教わったわけではないが、少なからずブルーワーからも影響は受けた。そしてほどなくして私は、ブルーワーのビジネスをきっかけにハワイへと移住したんだ。

 

 

第一章:サンディエゴのルーツ 第二章:ブルーワーとの出会い 第3章:ハンドシェイプへのこだわり