スティーブ・モーガン・インタビュー03

スティーブ・モーガン・インタビュー03
 

サンディエゴで培ったボードをデザインする技術と職人気質、そして常に最先端デザインを生み出し続けるブルーワー・レーベルでの経験。これらのキャリアを経て、スティーブのデザイン・スタイルは確立されていった。それは、南カリフォルニアの70年代レトロ・スタイルと、ハワイの波にアジャストするハイパフォーマンス・スタイルの絶妙なブレンドによる、古くて新しいスタイル。ちょうどフィッシュ・ムーブメント以降に沸き起こったオルタナティブなボードデザインの潮流やニーズとマッチするデザインでもある。いまスティーブは、彼のそのスキルと独自のデザインをHICのレーベルのもと展開している。それはエリック・アラカワやケリー・トコロとはまったく違ったシェイピング・アプローチにより生み出されるスティーブのオリジナルだ。

第一章:サンディエゴのルーツ 第二章:ブルーワーとの出会い 第3章:ハンドシェイプへのこだわり


 


SM: HICでシェイピングを始めたのはいつ頃ですか?

M: たしか2002年。10年前だったと思う。自分のボードのラミネートを頼んでいたファクトリーのオーナーがHICのライセンシーの工場を持っていたことが縁で、シェイパーとして加わることになった。その時点でこれまでの顧客もHICに紹介したので、もう自分のビジネスのマネージメントの心配をしなくて済むようになった。つまりデザインとシェイピングだけにフォーカスできるようになり、私にとっては好都合だった。チームとしてみんなのクリエイティブなエネルギーを集結させて、協力しながらボード作りするのも気に入っているよ。

SM: やはりエリックやケリーとは異なる、ややレトロなテイストが加味されたデザインがあなたの持ち味ですか?

M: そのとおり。でもただ単にレトロなデザインではなく、長年のシェイプ経験で培った知識を組み合わせて、私なりに改良した新しいものを作りだしている。私のデザインの特徴はカリフォルニアとハワイの両方の影響を受けている点にある。エリックとケリーはハイパフォーマンスなサーフィンの世界で今もっとも流行っているものを作っているが、私はカリフォルニア・タイプのテンプレートやアウトライン、ロッカーなどをデザインに意図的に取り入れているんだ。そこがはっきりと彼らとは異なる点。でも他のシェイパーのボードを見るのは好きだから、そういう意味ではHICで仕事するのは魅力的だね。

SM: いわゆるハイパフォーマンス・ショートボードと違うデザインとは例えばどんなボードですか?

M: ショートボードで言えば、私のお気に入りはカリフォルニア・タイプのSuper Vee。5フィンのミニボード系のモデルで、ノーズ幅はあるもののポインティ、さらにワイドなダイヤモンドテールが特徴だ。パドル時の胸のあたりのボトムはフラットで、テールが強めのVee。クアッドとスラスターで乗り味が変わるのが面白い。また新しいモデルとしてはSaucerも気に入っている。これはレトロ・フィッシュのテンプレートを活かし、テールをウィング・ラウンドテールにしたモデル。いわゆるサンディエゴ・フィッシュの特徴をたくさん備えているが、フィッシュよりもターンの性能に優れているんだ。これらはどちらも日本の波に向いていると思うよ。

SM: 日本を意識したあなたのボードには、具体的にどのようなデザイン的特徴がありますか?

M: 日本向けにはセンターにボリュームをつけている。その方がパドリングのスピードが得られ、よりセンシティブなボードになるからね。小さいビーチブレイクを意識した場合、基本的にはすべてのボードを万能にデザインするよう心がけている。例えばハイパフォーマンス・ショートボードもフラットめのロッカーにして、フォワードにボリュームをつけている。スローピーなビーチブレイクならVeeボトムも効果的。そうやって波をイメージして微調整する。そういうシェイピングの微妙なコントロールをするために、私はハンドシェイプにこだわっているんだ。

 

いま世界のサーフボード・インダストリーにおいては、コンピューターを使ったマシーンシェイプでボードを生産するのが主流だ。もちろんHICでも、ごく当たり前に導入されている。そんなHICのシェイパーのなかで、いまもスティーブはハンドシェイプにこだわってボードを削っている。このクラフツマンシップを重んじる姿勢は、いかにもサンディエゴ出身者らしい。シェイパーというよりも職人、なのである。一本ずつ手作りで仕上げるスティーブのシェイピング・アプローチは、HICジャパンが行なっている「カスタム・オーダー・プログラム」にフィットするものだ。このプログラムは、顧客のニーズに細かく対応してオリジナルな一本を提供するというもの。では、熟練のスティーブが見出す究極のカスタム・ハンドシェイプとは、どんなものなのだろうか。


SM: マシーンを使わずハンドシェイプだけで削っているのですか?

M: 以前にマシーンシェイプをしていたことはあるが、いまはハンドシェイプだけ。私は自分のことをブルーカラー(肉体労働)シェイパーと呼んでいるんだ(笑)。35年経ってもまだ粉まみれになってシェイピングをしているからね。でも、私が追い求めているのは、突き詰めるとクラフトなんだ。クラフトに徹している感覚が私にとってのシェイピングの醍醐味。そして自分も作っているものの一部になって、すべてをコントロールできるところがハンドシェイプのいいところ。

SM: マシーンシェイプに比べ、多くの道具を駆使し、時間をかけて削っているのですか?

M: 最近の若いシェイパーと比べても私の道具は必要最低限なものだけ、むしろ少ないほうだよ。プレーナーはスキル100を5台持っているけどね。道具のなかには30年間使い続けているものもある。ハンドシェイプは生産性が低いと思われがちだけど、最初からディテールをコントロールできるから、意外に効率が良いんだよ。そして何よりも100%ハンドシェイプのボードは、仕上がりの満足感が全然違う。

SM: クラフトを追求すると、マシーンシェイプよりもハンドシェイプに行き着くのでしょうか?

M: コンピューター制御のシェイピングマシーンはとても高機能だけど、その仕上がりは人間がデザインし考えたことの正確なレプリカにすぎない。特定デザインのディテールを調整する人間の能力や感性に適うマシーンはないんだよ。情報を処理する人間の頭の中にはオーガニックなプロセスがあり、それを機械が完全に複製することは不可能だ。さらに、シェイピングマシーンは各モデルのマスターバージョン(原盤)の最大公約数を削り出し、シェイパーはそれを要望されたサイズやボリュームに仕上げていくものだけど、ハンドシェイプではすべてのボードが本質的にマスターなんだ。オーダーしてくれたカスタマーのためだけのマスターを作る、それが究極のカスタムシェイプであり、私の目標でもあるんだ。

SM: ハンドシェイプには手仕事の美学と人間の感性が込められているのですね?

M: そうだね、私がハンドシェイプを好むもう一つの理由は、フォイルを楽しむことにある。フォイルは、すなわちボードの美しさだと思う。

SM: あなたにとってシェイピングとは?

M: 私にとってのシェイピングは禅のようなもの。ゾーン(境地)に入っていく感じがする。長年シェイピングルームという青い小さい部屋に居続けているが、それがゾーンであり、私の人生の一部でもあるんだ。私はいまハワイに住んでいるが、ハワイでは古代から手で作られたものすべてに“マナ”が宿っていると考えられてきた。本来、手で作られたものの中には人間の魂の輝きがあるんだ。いま使っているマテリアルはハイテクなものかもしれないけど、すべてを手で作るということに私は喜びを感じ、満足している。できるなら、これを多くのカスタマーとシェアしたいと思っているよ。

 

 

プロフィール)
1959年、サンフランシスコ生まれ。1964年から家族でサンディエゴに引っ越す。軍人だった父の仕事で訪れたハワイでサーフィンを覚える。10代半ばでシェイプにも興味をもち、自分のためにフィッシュを削る。地元サンディエゴのクラフツマン、ビル・キャスターにシェイパーとして多大なる影響を受ける。1979年にはインペリアル・ビーチのビーチフロントに自分のサーフショップ “グリーン・ランタン・サーフボード”をオープン、小規模ながら卸売りも始める。この頃にラスティー・プレゼンドーファーやゲーリー・リンデンらと出会う。その後ディック・ブルーワー・サーフボードでシェイピングの仕事をするようになり、1980年にリンデンとビジネスパートナーとなる。しばらくしてリンデンが独立したのを機に、カウアイ島へ渡り、ブルーワーのファクトリーでシェイプをし続ける。1985年にモロカイに移住し、自分のレーベルでも仕事をする。2002年にHICと契約し、シェイピング・チームの一員となる。ハンドシェイプにこだわり、フィッシュなどの南カリフォルニアのテイストやエレメントをデザインに織り込んだ、レトロだがパフォーマンス性の高いボードをシェイプすることで一目置かれるクラフツマンである。

 

第一章:サンディエゴのルーツ 第二章:ブルーワーとの出会い 第3章:ハンドシェイプへのこだわり

 

スティーブ・モーガンのサーフボード

回紹介したスティーブ・モーガンのサーフボードを取り扱うHICサーフボードでは、下記のサイトからテストライドを常時受け付けています。興味のある方は是非問い合わせて下さい。

http://hicsurf.co.jp/surfboards/testridestation

 

モーガン・デモボード・ラインナップ

Super V
5’8″ x 19″ x 2 3/8″ tail : wide diamond

THE PLUG
5’8     20    2 5/8     Diamond    4+1 FIN     116063
5’10     20 1/2    2 5/8     Round    4+1 FIN     116064
6’0     21    2 5/8     SW    4+1 FIN     116067
7’0     22    3     SQ    4+1 FIN     116027
RIP CHIP
5’8     19 1/2    2 5/16     Wing SQ    96056
5’10    19 3/4     2 3/8    Wing SQ     96052
6’2     20    2 7/16     Wing SQ

 


HIC CHIBA STORE
千葉県長生郡一宮町一宮10055
tel: 0475-42-1522
営業時間:9:00-18:00


HIC TOKYO STORE
〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-1-2
tel: 0422-21-3395
営業時間:12:00-21:00(月曜定休)

 

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